第2話 栄光の調査隊
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真紅の絨毯の敷かれた先の玉座に、一人の老爺が佇む。
その老爺の元へ蒼の海の荒々しさを、偉大なりし母なる海を模した詰襟を身に纏う、アーモンド型の瞳の青年が向かっていった。
彼が一歩踏み締める度、灰色の髪は白波のように揺れる。
「お初にお目にかかります、陛下」
深々と頭を垂れた青年は皇帝に頭を上げよと云われ、指示に従う。
「そう畏まらないでくれたまえ、ライリー・グレイ大尉。儂はあくまで人。人を支配し奴隷とするは、宇宙の法則そのものであり、唯一絶対たるヴォートゥミラ三神の特権。皇帝として為政に携わる儂も、ただの神の代理に過ぎぬのだから」
小麦色の髪に白髪の混じり始めた老爺が微笑み、ライリーもぎこちなく笑った。
緊張を解こうとする優しさはありがたいが、一国の主を前にして、固くなるなという方が無理だ。
青年は静かに次の言葉を待った。
「時に謎の船の件については耳にしたかね、ライリー大尉。なんでも船から巨大な魔物が現れ、数年もの間、軍に貢献した冒険者イアン殿が犠牲者になったとのことだ。この件についての調査を君に頼みたい」
謎の船の存在を危惧する皇帝の不安が伝染したのか、帝城も何やら慌ただしい。
部下からの報告を耳にしていたライリーは自らの考えを整理し、丁寧に言葉を紡ぐ。
「船は魔物の積載、運搬ができるほどの大きさではなく、眼の前の光景は夢か幻のようであった、と。確証はありませんが、あの船舶は異界に繋がる可能性が予想されます。だとすれば調査には、相応の人手が必要やもしれません。ですが領土防衛にも人員を配置せねばならぬ以上、軍の積極的介入は得策ではないかと」
残念がり、眉を八の字にした皇帝を見かねた青年は深呼吸をし、一旦区切ると
「我々軍人はあくまで治安、秩序維持の為の組織の歯車。決して探索のプロフェッショナルではありません。なれば未開の地へと足を踏み入れ、怪物との交戦をも恐れぬ、勇猛果敢な冒険者との協力は不可欠といえるでしょう―――陛下直々の任務、必ずや成功に導いてみせましょう」
条件を提示しつつも了承し、敬礼した。
ライリーが皇帝から最大級の賛辞を受け取ると、数週間の時を経て、謎の船の調査隊が編制。
突如現れた船の調査に冒険者募集の噂が立つと数多の冒険者が夢を、野望を胸に秘め、サピル・シヌス帝国に集った。
調査隊の長 ライリー・グレイ大尉
職業·魔法戦士
種族·人間
MBTI:ENTJ
アライメント 秩序·悪
灰色がかった髪の本作の主人公。
若くして皇帝から直接、放逐の箱舟の調査隊≪グロリア≫の指導者に抜擢された、サピル・シヌス帝国軍のエリート。
傲慢かつ高慢な性格で、目的の為なら手段を選ばない。
毛嫌いする冒険者へも、《正規軍に戦闘面でも知能面でも劣る有象無象》と直裁的な物言いをし、彼らから反感を買う。
だが知性や戦闘力、冒険者との利害関係を築く手腕は確かで、嫌々ながらも冒険者たちを軍に従わざるを得ない状況に追い込んだ。
冒険者の活動に邁進する、吟遊詩人の双子の弟トマスを軽蔑しており、兄弟仲は険悪。