第23話 生死分かつコイントス
作品に目を通していただき、ありがとうございます。
作者のモチベーションと、作品を継続するか否かに関わるため、よろしければ評価、ブックマーク登録、お気に入り等お願いします。
当初の目標は話数=総合評価(10話=総合評価10pt)でしたので、なるべくそれに近づけるよう、支持していただければ作者冥利に尽きます。
気力が完全に失せたので、20話以降の投稿は不定期更新です。
執筆活動を続けていると好調と不調の波があり、今は結果の伴わない無駄な行為に腹が立つ上になけなしの気力も失せてきたので、更新停止します。
誰にも読まれていない以上、誰も困らないので、暫く休みます。
「エンバーとセス君が見当たりませんが……トマス君、君という人は三人組で行動するように、何度も口を酸っぱくして伝えたというのに。後できっちり教育的指導をしなければなりませんね」
眼鏡をかけた尖り耳が特徴のエルフは、神経質そうに眉を顰めた。
射抜くような吊り目で眼前の敵を睨む、彼の名はセリウス。
《コッチネラ・ディアボルス》に1500年以上在籍する、最古参メンバーであり、副隊長の座につく男性。
個人の価値観に生きる混沌の冒険者が多く集うギルドの中では浮く、法と秩序を重んじる堅物として、日々尽力する。
「隊員に手出しをし、挙げ句殺害しようとするとは―――消えなさい、俗物」
冷徹に言い放つと、セリウスは足を踏み込む。
そしてテントウムシが翅を広げた飾りが目を惹く錫杖を突き刺すと、怪物は粉々に砕け散り、跡形もなく霧散した。
まるで始めから何もなかったかのように。
人形がいた事実を物語るのは、傷ついたトマスだけだ。
……あれほど手を焼いた魔物をたった一撃で。
見せつけられたセリウスとの実力の差に、トマスは己の不甲斐なさを恥じた。
「説教は後です。まずはトマス君の傷を……」
「貴方の命運、このコインに託しましょうか。表裏を当てれば生き延び、外せばそのまま息絶え、魂はメタモルフォシス神の管理化に……退屈しのぎ程度にはなる余興ですわ。さ、どちらにしますの?」
「そんなことをしている場合ですか。ベルさん、貴方の行動は目に余る」
内巻きの茶髪をかきあげ、黒と赤が基調のコートを羽織る彼女は下卑た笑みで、トマスに問う。
人の生死すらも賭け事の対象にするベル・ベルは、生粋のギャンブル狂い。
元はとある国の貴族だというが、多くの仲間は軽薄で嘘吐きな彼女を信用しない。
だが口調と洗練された所作からは常々口にする高貴な生まれという発言を、あながち嘘ではないと感じさせるに充分な説得力があった。
「……表」
「本当にそれで宜しくて?」
呼吸をする度に全身に痺れが走り、話すのすら息苦しい。
トマスの無言の返事を理解したベルは、親指で弾き空高く飛ばした。
落ちていく硬貨を手の甲で受け止め、右手を重ねると一瞬沈黙が流れた。
「……運命はまだ貴方を生かすと決めたようね。治してあげますわ、感謝なさいな―――クラティオ」
トランプを吟遊詩人の首筋にかざし詠唱すると、金色の発光する魔法陣が現出し、徐々に傷が癒えていく。
賭け事の勝ち負けはどんなものであろうが甘んじて受け入れ、口約束であっても守る。
狂ってはいるが、人の情が欠けた人間とは言い難い。
痛みが引いていき楽になった彼は、独りになった経緯を伝えると
「仕方ありません。規則通りトマス君には、我々と同行してもらいます。単独行動がどれほど危険か、身に沁みたでしょう」
「せいぜい足を引っ張らぬよう、励みなさい。トマス」
ベルは小馬鹿にするが、恩を売られたばかり。
口を尖らせて言いたいことを押し殺し、一行はエンバーの元へと急ぐのであった。
《コッチネラ・ディアボルス》の精密機械 セリウス
職業·大魔道
種族·精霊
MBTI:ESTJ
アライメント 秩序·中立
大陸の古参冒険者ギルド《コッチネラ・ディアボルス》に最も古くから在籍する、眼鏡をかけたエルフの副隊長。
自由奔放な者が集うギルドに似つかわしくない、法を遵守させる生真面目な堅物。
だが彼なくして冒険者の活動が回らないのは事実で
「無法では駄目です。何もかもが許されたならば、馬鹿を見る人々で溢れ返るではありませんか。個人の自由と能力は秩序の中でこそ培われる」
と、彼はよく口にする。
魔術を極めた大魔道でありながら、エルフ特有の驚異的な身体能力にも恵まれ、文武両道を地でいく人物。
自由できまぐれな隊長には辛辣な物言いをするが、大っぴらにはしないものの、互いにギルドに欠かせない存在だと尊敬しあう間柄。
堅物の彼が自由を尊ぶ冒険者になったのには、何か理由がありそうだが……
天運の勝負師 ベル・ベル
職業·勝負師
種族·人間
MBTI:ENTP
アライメント 混沌·中立
内巻きの艷やかなブラウンヘアが特徴の、見た目は美しい女性。
所作や振る舞い、佇まいは優雅で、高貴な生まれという言葉にも、見る者に一定の説得力は感じさせる。
だが内面は傲慢で事あるごとに人を見下す、品性下劣としか形容できない性格の毒婦。
元貴族にも関わらず、とある切っ掛けで賭け事を覚えてから遊び呆け、両親の手に負えなくなり勘当された経歴を持つ。
ギャンブルに使う道具のトランプやサイコロ、コイン等は片時も忘れずに持ち歩き、人の生き死にすらもコイントスや賽の目で決める軽薄で冷酷な態度で、仲間からも煙たがられた。
彼女にとって賭け事になる全てが、退屈を紛らわせる余興。
今やまともに接してくれるのは同じ冒険者ギルド《コッチネラ・ディアボルス》の副隊長セリウスと、吟遊詩人トマスだけである。




