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第19話 呪いの特効薬

作品に目を通していただき、ありがとうございます。

作者のモチベーションと、作品を継続するか否かに関わるため、よろしければ評価、ブックマーク登録、お気に入り等お願いします。

当初の目標は話数=総合評価(10話=総合評価10pt)でしたので、なるべくそれに近づけるよう、支持していただければ作者冥利に尽きます。


気力が完全に失せたので、20話以降の投稿は不定期更新です。

「う、ぐぅ……」


担架から寝台に移されたセスは相も変わらず、唸るばかり。

皮膚を食い破るかのように呪痣の黒蛇は頻りに口を開き、その度に彼は陸に上がった魚のように震える。

一向に快復しない容態にトマスとジェレミーの両名は、静かに彼を見守った。


「呪刻人に弓を向けた、と。軽率だったね。彼らの感情を逆撫でしてしまうと、呪われるの当たり前だよ〜」

「でも呪刻人が害意を持っていたのは、事実なわけで……」


現場にいない彼は、第三者として何とでも言えるだろう。

あくまで威嚇目的で行ったセスも。

度重なる不幸と排除に人間を毛嫌いし、侵入者に対処した呪刻人も。

どちらが悪だと決めつけるのも傲慢だと、トマスは喉まで出かけた言葉を呑む。


「ああだこうだ言っても仕方ないね。治療に入るよ。といっても患者の負担にならない、対処療法しか方法がないわけだけど」

「はい、お願いします。ジェレミー衛生隊長」


頭を下げたトマスを見るや否や、ジェレミーは彼をまじまじと眺め


「大尉と同じ顔で礼儀正しくお願いされると、違和感があるね〜」


と、笑ってみせた。

呪いという非科学的な現象に対しても、人間は多くを語り継いできた。

呪いには大別して2種ある。

人形を使って間接的に身体の一部を負傷させる呪い、そして被害者の体毛や体の一部を用いた呪いだ。

しかし呪文によって刻まれたこの痣は、どちらにも当てはまらない。

呪文を唱えてもたらされたこの痣は、邪悪なる神や霊の類の力が原因ではないかと、一説には囁かれている。


「貴重なマンドラゴラだ。今はこれが最も呪いに有効とされている。少なめの用量でしばらく経過を観察するね」


ジェレミーは鞄から瓶を取り出すと、二股に伸びた根がまるで人の形のような奇妙な植物が、水に浸されていた。

絞首刑に処され、無念に逝った者の念が、呪いをも跳ね除けるのだろうか。

薬草師は指先に水をつけると、呪痣をなぞっていく。


「大丈夫、痛みはないかい? こういうこと可愛い子にやってもらいたいと思うけど、我慢してね〜」

「……確かに。今際の際だし、美女に介抱してもらいたいな」

「うわ〜、せっかく治療してるのに酷いな〜。元気になったらぶん殴ってやろうかな、君のこと。にゃはは」


ジェレミーが飄々とした態度を崩さずに云うと、セスも和やかに微笑んだ。


「エンバーも気掛かりだな。呪刻人にやられていなければいいけど。でもセスをこのまま置いていくのも……」

「ライリー大尉の弟さん、だったっけ? 君は君の為すべきことをするだけさ。ここは俺に任せてよ〜」

「……ここにいても、俺にできることはない。大切な仲間で友達なんです。少しでも楽にさせてあげてください」


ジェレミーはトマスの言葉に、力瘤を作る仕草で答えた。

軽薄でいまいち信用ならないが、常に余裕綽々とした振る舞いが、今だけは頼もしく思えた。

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