第13話 兄弟の確執
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当初の目標は話数=総合評価(10話=総合評価10pt)でしたので、なるべくそれに近づけるよう、支持していただければ作者冥利に尽きます。
作中に某世界樹の職業に似た単語がでますが、設定はまったく違うので、パクリ認定はご遠慮ください。
「大尉の弟さんか、似てると思った。そこの君、怪我人がでたから担架を頼むよ〜」
近くにいた部下にジェレミーが指示する。
彼は迅速な処置を施すべく、ライリーの弟トマスにどのような魔物に襲われたのかを質問した。
普段の人を食ったような減らず口もなく、淡々と職務に徹する姿は、とても同一人物とは考えられない。
「魔物じゃない、呪刻人だ。冒険者していたら、あいつらと遭遇してセスが……」
「そうなのか、薬草師としてやれるだけやるよ」
呪刻人。
呪術師から呪刻、呪痣と呼ばれる刻印を刻まれた、不運な人間の総称だ。
彼らの呪いは強力無比であり、現在の医療、魔法治癒では対処療法が限界である。
セスという名の冒険者を担架に乗せ
「俺はこの冒険者の面倒を見るから、じゃあね〜」
と云うと、彼は医務室へと向かった。
「久しぶり、元気で何よりだよ。いい天気だよね」
話題が見つからないのだろうか。
初対面の相手の逆鱗を刺激しないよう、当たり障りのない言葉ばかり並べるように、トマスは喋り始めた。
そんな弟の肩で息を吐く仕草を見逃さず
「冒険者となったらしいが、鍛錬不足なのか、体力がないようだな。帝国に身を捧げた俺と、呑気にお歌で日銭を稼ぐろくでなし。とても血が繋がっているとは到底思えん。はっきりいうがトマス、お前は一族の恥だ」
冷淡に吐き捨てた青年は、言葉を失う弟へさらに追い打ちをかける。
「冒険者というのは、先ほどの男のような無能ばかりだな。力自慢のゴロツキ、戦場の高揚に酔う者、異世界の来訪者を名乗る連中。揃いも揃って他の職業では何者にもなれぬ、愚図の掃き溜め」
「俺が何をしようが勝手だろ。それに冒険者を貶めて、軍人の自分が偉いと誇示するなんて。幼稚なんだよ、言ってることが」
暫しの時間を要し、暴言で罵られたのを理解したトマスは風を切って歩み寄り、真っ向から立ち向かう。
だがしかしライリーも、頑として自らの主張を譲らない。
会話と呼ぶには不相応で、互いが互いへの怒りで、心が塗り潰されている。
「俺の言葉に腹が立つか? 能無しのクズほど、言い訳が達者になる。ある意味お前にとって、吟遊詩人は天職だな。生き恥の上塗りをしている暇があれば、冒険者なぞ辞めて真っ当に生きろ」
背を向けて立ち去ろうとしたライリーに
「好き放題馬鹿にしやがって。だったら言わせてもらうけどな。兄貴はそうやって人を見下して、自分の弱さを誤魔化してるだけだろ! いつまであの時のこと、引きずってんだよ! 強がってないで、いい加減過去に向き合えよ。バカ兄貴!」
「……フン、下らないな」
トマスの叫びに青年は立ち止まった。
弟の呼び掛けに、思い当たる節があったのだろう。
だが決して彼は後ろを振り返ることはなく。




