第9話 食うか食われるか
作品に目を通していただき、ありがとうございます。
作者のモチベーションと、作品を継続するか否かに関わるため、よろしければ評価、ブックマーク登録、お気に入り等お願いします。
丁寧に前書きで伝えても誰も評価しないのを、愚痴っても仕方がないので、率直に今の感情を吐露します。
評価されなくとも作者に時間とモチベーションさえあれば、作品は完結するので、つまるところ作者の意思が創作において、最も重要な要素なのでしょう。
けれど時間は有限で一切の評価もされず、世間から冷笑されても挫けない、無限のモチベーションの持ち主の作家など存在しません。
だからこそ作者自ら努力の一助となりうる評価、ブックマーク登録、お気に入り等をしてほしいと再三主張しても、読者がそれをしないのだから、もう続けないでいいのだと判断しました。
キリのいい10話まで続けて反応がなければ辞めるので、作者の決断への、ご理解のほどよろしくお願いいたします。
悠遠なる刻を過ごした苔むす木々の中、息を吸い込むと、穏やかな気持ちになるものだ。
しかしライリー一行は、虎柄の毛皮の男を見失い、焦燥に駆られていた。
「……チッ、逃がしたか。逃げ足の素早い男だ」
舌打ちする青年の横で、きょろきょろと辺りを見渡す少尉。
だがそんな2人へ間延びした、気の抜ける話し方で真っ白の茸を指差した。
「いろいろな植物が自生してるね〜。おお、〝愚か者の茸〟。いわゆるバカキノコと近縁の一種に似てるね〜。毒があるかもだから、食べたら駄目だよ〜。2人共」
「……バカキノコ? それは自虐かね、ジェレミー衛生隊長」
ライリーが彼に小言をいうと
「よっ、嫌味の天才にして悪態の王子。ライリー大尉。そんなんだから人から嫌われるんだぞ〜」
口を緩めてジェレミーは言い返す。
「……あまり私を愚弄するようなら、上官命令で君を最前線に送るぞ」
ジェレミーの軽口に、眉一つ変えずライリーは呟くと、青年は再び歩み出した。
冗談ならばおどけるか、陽気に笑って云うものだ。
それに青年はつまらないジョークを飛ばすタイプではない。
一蹴されたジェレミーはうなだれ、その場に立ち止まる。
早くあの男を探さねばならぬというのに。
苦虫を噛み潰したように、ライリーは顔を歪めた。
「何をグズグズしている、さっさと来い!」
「いや、もう無理だって〜。それより足跡があれば辿れると思うし、地面を調べてるんだけどね〜」
そういうと彼は四つん這いになり、見落とすまいと双眸を見開く。
ジェレミーの発言にも一理ある。
人や魔物の痕跡があれば、いずれあの男の元へと着くやもしれない。
「それよりさ〜、可哀想な俺に何か一言ないの? 『さっきは悪かったな、ジェレミー衛生隊長』とかさ〜」
ジェレミーは首を傾げ、瞳を潤ませ、ライリーへ訊ねた。
異性がやれば普段は冷徹な彼も、少しは考えを改めただろう。
だが大の男がぶりっ子をしたところで、余計に腹が立つだけである。
「……まずは軽薄な態度と馬鹿を治せ。それから口を利いてやる。阿保と話すと、私の知能まで落ちるからな」
眠たげに半分開いた瞳で一瞥すると、冷淡に吐き捨て、青年は目を背ける。
「いや〜ん、辛辣っ! この上官、怖いんだけど! 慰めてよ〜、ローレン少尉〜!」
唐突に名を呼ばれた彼女は困惑し、青年に助け船を求めるように
「ええと、どうすればいいんでしょう。大尉。ああいう人は初めてで対処がわかりません」
と、聞いた。
「少尉、あの馬鹿男と絡んでも何も得られまい。薬草師であるから、樹海探索に多少の役には立つかと考えていたが……見込み違いだったらしい」
溜め息をついて暫く付近を探すと、大木の根元には生物の出入りできる穴を見つけた。
おそらくは魔物の巣だろう。
「ここにいる魔物が、襲ってきたとは限りませんが……」
「拠点の近くに棲み着く魔物は、殲滅せねばなるまい。我らの安全の為にもな」
青年が腰のサーベルに手を掛けるや否や、四方八方から唸り声がした。
彼らの敵意を察知した獣が、徒党をなしてきたのだ!
「おいおい、やばいんじゃないの。俺、あんまり強くないのに〜! ここで死にたくねぇよ〜!」
「大尉、これは……」
「……魔物に敵と認識されたのだろうな。よかろう。貴様らの骸は、我々が有効に利用してやる」
不敵に微笑み、青年は群れの狼と対峙した。
自然の中では人も、弱肉強食の一部に組み込まれる。
―――食うか食われるか。
どちらかの死でしか争いの終わらぬ世界に、彼らは自らを捧げたのだ。




