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そのヒロインが選んだのはモブでした。

プラム先生著 【恋は罪】

作者: ぷり

※※※プラムSIDE※※※


 ブラウニーは寝た。ちゃんと確認した。

 OK。今日も秘密の任務に取り掛かる。


 子供もすでに何人か生まれたし、私は今大変幸せだ。

 ヒース領にひきこもり、ひと目にさらされることもなく、ブラウニーとラッブラブな日々!

 残念! 実は今の生活は嘘でしたー! とかってある日世界が反転したらどうしようって、たまに不安に思うくらい幸せだよ!!


 そして……今一番したのブラッドも自分で自分の事ができるようになってきて、私の手もすいてきた。

 まだ産める気がするから、ひょっとしたらまた子供産むかもしれないけれど、そうするとまた忙しくなるから。

 まだ産むの!? と驚愕している眼裏にうかぶアドルフさんを放置し、なにかしようと思って考えたところ。


 すっかり忘れていた、やりたかった事を思い出した。

 小説を書きたかったんだ!


 今ここだ! このタイミングだ! ここで私がずっと抱えていた思いを書き綴ることにする!!


 学生時代の心残り!!


 かつての同級生、チェスとオリビアと私(男)のストーリーを書きたい!!

 小説とか書いたことないけど!


 本当は誰かが書いてくれたのを読みたい。

 でもだってそんなの誰も書いてくれないし! 売ってないし!


 こんな事ブラウニーにだって話せないよ……。

 よってこれは私だけの秘密だ!


 どうしよう、夫に秘密だなんて、なんて悪い妻なの。


 ブラウニーには隠せない、隠し事はできない……今まで私はそう思ってきた。

 だが、ブラウニーは昼間会社で家に帰ってきてからは家族団らんと明日の支度とで忙しい。

 部屋の探索など行う暇などないはずなのである。

 だから私が小説を書いて隠していようと気づくはずもない!



 だから私はここで私に挑戦する。私はそろそろ一皮剥けるべきなのである。

 ブラウニーにこの小説を隠し通すことにより、私はブラウニーの『隠せない』に反逆する!!



 それにアルメリアとブラウニーが相談して図書館とか作ってたけど、そこには私の思ったような物語はなかった。

 ならばやはり自給自足するしかあるまい!

 私は二人の公式となる……!


 まずは設定だ。

 私は素人だから簡単設定ではじめるといいだろう!


 チェス → 学生時代のあのまんま→かっこいい

 オリビア → 学生時代のあのまんま→ 可愛い

 私(男、当て馬)→→ ノアみたいな見た目→ かっこいい


 よしできた!! これでええやろ!!



 ……えーっと、どうしよう。

 当時、学院時代、二人共途中から婚約してたよね。

 婚約する前あたりに一波乱いっとく?

 そういう話にする?


※※※ ブラウニーSIDE ※※※



 ここ数日、プラムの様子がおかしい。

 何かを隠している


 しばらくしたら、自分からその隠し事を伝えてくるかと待っていたが、そのようなそぶりはない。

 何を隠している。

 未だにオレに隠し事をできると思っているのか?

 オレが会社で昼間いないからと、オレに隠し事ができると踏んで、オレに挑戦しようとしているのか?


 いいだろう。

 だが、お前の秘密はあっさり見つかったぞプラム。

 なんだこれは。

 ――そしてオレは、その夜、混沌に巻き込まれるのである。



※※※ 以下、■が入ってる場所がプラムの小説部分です。


 ~~~~~


 ■プラオは、ある日海外から転校してきた

 実は王子なのだが身分を隠して学院に通っている。

 モテる。


~~~~~~~~




「ブッ……」

 オレは口元を抑えた。だめだ、3行読んだだけで腹筋がヤバい。

 プラオってどういう名前だ……。プラムのムがオに変わっただけじゃねえか。

 別にプラムの名前を変更するだけじゃなくてもっとカッコいい名前あったんじゃないのか?


 そうか、モテるのか、プラオ。よかったな。

 ところで海外ってどこだ。おまえはどこの王子なんだ、教えてくれプラム……じゃなかったプラオ。


~~~~~~~~



 ■その二人は、図書館で運命的な出会いを果たす。

 オリビアが手の届かない書籍に手を伸ばそうとぴょんぴょんしているところへ、背の高いわた……じゃなかったオレがスッと取って渡す。


「これが、欲しかったんだろ?」

 優しく微笑むプラオ。


「ああ~。ありがとうございます~。」


「なあ、恋って罪だと、そう思わないか。オリビア」


「え、えっと~~そうですね、素敵なお話だと思います~」


~~~~~~~~~~~~~~~~


 「ブハッ……」

 オレは腹を抑えた。


 何故本を取ってやっただけでいきなり、恋は罪なのかと問いかけることができるんだ、プラオは!

 唐突すぎる!!

 オレなら絶対できない……!

 

 そうか、一目惚れか? そうなんだな? プラム……じゃなかったプラオ。


 そしてオリビア、一文だけで何故素敵な話になるんだ?

 どう考えても、変なやつに絡まれただけだぞ……!

 本物のオリビアにこれをオレは見せたい。

 見せるために休暇をとりたいくらい見せたい。


~~~~~~~~~~~~~~


 ■「オリビはオレがもらう。血糖しよう。どちらがオリビアに相応しいのかお」


~~~~~~~~~~~~~~~

 誤字脱字!!

 直していいのか! これはこっそり直してもいいのか?

 もうオレは涙目だ。

 アドルフさん助けてくれ。オレはもうだめかもしれない。

~~~~~~~~~~~~~~~~ 



 ■決闘はじまった。

 可愛いオリビアをめぐったうつくしい男の美麗なたたかいがはじまる。


 「どりゃー」

 すごい勢いでレイピアをくりだすプラオ。

 これはいっし相伝のわざだ。

 チェスは苦戦をしいられ



~~~~~~~~~~~~~~~~


 レイピア剣の決闘で、どりゃー!?

 いや、ありえなくはない。あえりえなくは。だが!

 プラオ! お前は美形の王子ではなかったのか!? その叫び声のチョイスはなんだ!?

 

 そして可愛いオリビアってお前、作者の心の声がはいってるぞ?

 いっし相伝のわざ?……一子相伝のことか?

 プラオの国ではレイピアの技で一子相伝があるのだな。

 苦戦するチェスがんばれ


~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 ■……るかとおもったが、5枚くらい上手だった。

 「フッ。あまいな。オリビアは渡さない」

 かるいフットワークでプラオのレイピアを交わすチェス。

 


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 5枚上手!? 勝負にならないだろう……!! チェスに力与え過ぎだ!!

 パワーバランスが悪い!!!

 それともチート主人公なのか? 無双なのか?


 そして一子相伝の技の内容がない!

 オレ、そこが知りたかったのに。教えてプラム先生。


 そしてチェスが、"フッ"て言っている……! 

 チェスはこんな喋り方するやつじゃなかったと思うが!? プラオ!?

 設定がブレてきてはいないか?


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 ■「チェスさん~~……がんばってください~~」

 「オリビア、どうして……。僕との日々は幻だったのかい」

 「あなたのことは好きでしたが~~、あなたはなんか悪い人なので~」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



 そしてオリビアー……!

 なんか悪い人ってなんだ、そしてプラオのこと好きだったのか!?

 そんな話はここまでなかったぞ!? 

 心変わりしている! ああ、そうか揺れる乙女心を表現してるのだな! プラム先生!!

 こっちも設定がブレブレだ!


 プラオ、お前は一体どんな悪人になったんだ!? 書いてない。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 ■ざしゅ。

 プラオの首が斬られた。

 あかいえきたいが吹き出す。

 荒野にプラオの満足そうな笑顔がころがる

 からだとははなれているが__幸せなのである。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 いきなり残酷な描写がはいった!? ぐろい!?

 美麗な決闘の予定ではなかったのか!?

 そしてまたいきなりの荒野!

 学院内の決闘じゃなかったのか!?

 だいたいレイピアで首は飛ぶのか!?

 そうか、チートだからつついてぶっ飛ぶのだな! プラム先生!!

 もう『絶対圏』使ってるだろう! このチェス!!

 あと、――と__を間違えそうなくらい、書きズレているぞ! 先生!


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 「ぷ、ぷらおー!」

 そこへ国の婚約者のブララが駆け寄る!


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 ブ、ブララ……? ここに来て新キャラ?


 ………。



 オレだ……!!


 ……オレ来たぁーーーーーーーーーーー!!!


 オレはプラムのノートを持ったままその場に突っ伏した。



「とうさん……だいじょうぶ?」

 いつのまにか傍にブラッドが起きて来ていた。


「ハハ……大丈夫だ。ひょっとして起こしたか?」

 ベッドのプラムを見る。スヤスヤ幸せそうに寝ているのを確認した。


「……それなあに?」

「起こしてしまったお詫びにお前にだけ教えてやろう。かあさんが、こっそり書いてる物語だ。他のやつらには言うなよ?」

 オレは自分の涙をぬぐったあと、座り直しブラッドを膝にのせて頭を撫でた。


「それは……おもしろそうだね」

「悪い顔すんな、こら」

「とうさんも、これどうしてやろう、みたいな笑顔だよ」

「なるほど、お互い様か」

「うん。ふふ」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 ■ブララはぷらおの頭をだきしめる。

 「絶対許さない……!! 私が絶対治してやる! プラオ!!」


 ブララはまほうをつかった。

 ぷらおはよみがえった。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 ブララ!! 言葉が私以外そのまんまオレだ!! やめてくれ!!

 これはオレが恥ずかしい!

 せめてブララに女言葉使ってやってくれ……!

 それとも男勝りキャラなのか!?


 そしてとんだ首治して生き返らせられるのか? すごいなブララ!


 ブラッドがいつのまにか膝の上で寝ている。

 オレも寝たい。

 寝たいのにとんでもないものを手にしてしまった。

 明日の会社は寝不足だ。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 ■「ブララ、ありがとう。 ぼくは真実の愛にきがついてしまった結婚しよう」

 「プラオ……! ああ、結婚しよう」


 「オリビア、オレたちも結婚しよう」

 「はい~~幸せです~~」


                 【FIN】

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 いきなり全員結婚して終わった!!

 決闘の余韻とかそういうのないのか!?

 結婚式とかの描写はないのか!?



 オレはページをめくった。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



 この作品は、愛する夫ブラウニーに捧ぐ



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 オレに捧げられてるーーーーー!!!


 ありがとう、プラム。こんな心がこもったプレゼントははじめ……だめだ、腹筋が。

 だいだいこれはオリビアとチェスに捧げるべき作品ではないのか?


 「はあ……」

 オレはプラム先生の作品を読み切って、脱力した。

 いや、作品の内容はともかく、この作品の存在は非常に面白かった。うん。


 オレは隠してあった所にノートを片付けた。

 勝手に読んでちょっと悪かったな……だが。これは……いじりたいな……。


 だいたい、オレに隠そうとしてる辺りがまだ、オレをわかってないな。

 ブラッドを連れてベッドにはいる。

 オレはブラッドをプラムとオレの間に寝かせた。

 

 スヤスヤと寝ているプラムの額にキスを落として目を閉じた。

 眠るのに苦労するのは久しぶりだった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

――それからしばらくして。



「ブラウニーおかえり!」

「ただいまプラム」


 会社から帰って、プラムの顔を一番に見る。

 今日もちゃんと無事に笑顔で迎えてくれた。

 そのまま二人で部屋にあがる。


「そうだ、これ」

 オレは紙袋をプラムに渡す。


「なにこれ? 本かな? めずらしいおみやげだね、ありが……」


 プラムは取り出したそのハードカバーの表紙を見て固まった。



  【恋は罪】 著:プラム=ヒース


「ぶ、ぶぶぶらうにー……さん……?」

「いや、面白かったのでつい本にしてしまった。世界に一冊の本だぞ」

「ふぁーーーーーーーーー!?」

 またたくまに顔が真っ赤になった。


「い、いつから気がついて」

「恐らく書きはじめて三日目くらいか? 毎日続き楽しみでしたよ、プラム先生」

「ふぁああああ!!!」

「ほんともう、眠れないくらい。だから本にした」


 プラムは顔を真っ赤にしたまま、オレの胸をパシパシと叩いた。

「いや、おまえオレに隠せると思ってやってたとこあるだろ? だからオレもちょっと意趣返ししたんだ」

「意趣返しが本気すぎる!!」


 その後、ばかばかーとか言ってまたポカポカやられた。

 ちょっとやりすぎたかな、と反省したが、そんなプラムが可愛くて、こういう事はまたやってしまいそうだ。


 しかし、落ち着いてきたプラムはこう言った。

「……あー。もう。でも、ブラウニー。ありがとう。立派な本になったんだね」

 そういって頬にキスされた。


「あー、おまえは。怒っていいんだぞ。実はちょっと悪ノリしすぎたとは思ってる」

「もう怒ったよ。でも、こんなスカスカの文章、よく本にしてくれたなって。ちょっと恥ずかしいって最初おもったけど、でも、本当にありがとう」

 プラムは本を抱きしめるようにして微笑んだ。

 お前は本当にオレに甘いな。


 プラムは自分の原本の横にそれを並べた。


「さてと、ご飯の支度するから行くね」

「オレも手伝おう」

「会社で疲れてるでしょ、休んでなよ」

「やりたいんだよ。だいたいお前が毎日回復するからそんなに疲れない」

「ほんとにー?」


 オレとプラムは手をつないで厨房へ向かう。

 こうやって他愛のない日々をオレたちは繰り返し重ねていくのだ。


                            『FIN』



 


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