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妖狐になっちゃいました

僕、妖狐になっちゃいました ~ハロハロハロウィン大騒動~

作者: yukke

 暑い夏も終わって、月日は10月になりました。あれ? 9月何処にいきました? 最近ちょっと気温がおかしいです。


 皆さんこんにちは。僕は妖狐の椿。

 ある2体の妖狐と結婚して、とても幸せな日々を送っています。


 あれから僕達は、伏見稲荷に別の家を建てていて、そこで僕の旦那さんになった白狐さんと黒狐さん、そしてもう1人のお嫁さんとして、妲己さんの4人で住んでいます。

 そんな僕達の家にはつい最近、伏見稲荷の見習い妖狐、ヤコちゃんとコンちゃんが住むようになって、僕達の生活の補助をしてくれています。というのもーー


「ふやぁ! ふぎゃぁ!!」


「あわわ!! 香奈恵ちゃん、いったいどうして!?」


「椿、あんたオムツは?!」


「やったやった! あ、アレかな? えっと、除菌した瓶、瓶!」


 数週間前、僕に待望の第一子が産まれたのです。もちろん僕そっくりの、女の子の妖狐です。この子、僕の親友だった香苗ちゃんが生まれ変わった姿かも知れないのです。亡くなった後に、僕の娘として生まれ変わるんだって、幽霊になってでも伝えてくる程でしたから。

 ただそれでも、初めての子育て。もう右往左往しまくりです。妲己さんだって何故か大慌てです。


 とにかく台所に飛んでいって、僕の母乳を与える準備をします。だけど。


「キャッキャッ♪」


「あ、あら? ちょっと、笑ってるわよ」


「……」


 カナちゃ~ん? やっぱり君なの? まだ言葉喋れないし、ハッキリと「私だよ」って言ってくれてない。だから、違うかも知れないんだけれど……何だか今の反応を見るとね。


「この子、楽しんでない?」


「あの性格の子なら、あり得るわね~」


 しかも、僕が今丁度一肌にした哺乳瓶を、早く頂戴と言わんばかりに手を伸ばしてる。


 普段は金髪のツインテールでいる妲己さんも、この時ばかりはポニーテールにしている。

 ヤコちゃんとコンちゃんもやって来て、香奈恵ちゃんの様子を見てくれている。


「う~ん。ご飯であってると思います。だけど」


「反応が普通の赤ちゃんじゃないですね」


 満足そうに僕の母乳を飲む香奈恵ちゃん。もういっそのこと、何かの妖術で成長させちゃおうかな。


 とりあえずジト目で見ておきます。うん、今何だか視線反らしたね、香奈恵ちゃん?


 ーー ーー ーー


 仕事を終えて戻ってきた白狐さん黒狐さんと一緒に、今日も夕方から鞍馬天狗のおじいちゃんの家にやって来ました。


 香奈恵ちゃんを抱っこして、毎日のようにここに来ている。理由は簡単ですよ。


「香奈恵ちゃ~ん」


「きゃぁ~! 可愛い~!」


「香奈恵、最高。上手く妖狐に生まれ変わって。全く」


 女性妖怪と雪女の半妖雪ちゃんが、赤ちゃんの香奈恵ちゃんに会いたがるのです。毎日見ているのに、毎日こんな反応をするのです。まぁ、分かりますけどね。可愛いのは可愛いし。


「香奈恵ちゃ~ん、おじいちゃんですよ~ベロベロ~」


「おじいちゃん!?」


 鞍馬天狗の翁ともあろうおじいちゃんまでこれですよ。爺バカ炸裂です。しかも毎日。


 いや、妖怪の皆は赤ちゃんとか見慣れてないのかな? 長生きしているから、見慣れていたりするようなものなのだと思ったのに。


「あのさ、不思議に思ってたけれど、皆赤ちゃんとかって見たことないの? 長生きしていたら、人間の赤ちゃんは良く見ると思うけど」


「「「「「身内のだから」」」」」


 あ、はい。納得しました。


 ただ、その後に雪女の氷雨さんと、ろくろ首の首苗(くびな)さんがポツポツ言ったのが。


「ただ、赤ん坊の泣き声なら嫌というほどねぇ」


「あぁ、聞いてはいるけれど……子泣き爺のをね」


 なるほど、居ましたね。赤ちゃんみたいな妖怪も。ただ、香奈恵ちゃんみたいな可愛いさの赤ちゃんはそう見ないし、何なら身内も滅多にないから珍しいって事なんだね。


 そんな訳で、香奈恵ちゃん大人気です。ただ、赤ちゃんは赤ちゃんだからね。今は寝ているから寝かしておいてほしいな。


 そして僕は、そっとベビーベッドに香奈恵ちゃんを寝かして、皆はそれを囲むようにして覗き込んでいる。皆、飽きないね。ちゃんと静かだし。


 さてと。


「おじいちゃん。何か、この家に変な妖気が」


「うん? 何と。そこは衰えておらんか」


「舐めないで下さい。神妖の妖気を失っても、金狐のお母さんと銀狐のお父さんの娘ですよ。男の子になっていた時は封じられていたけれど、感知能力は歴とした僕の力です」


 おじいちゃんの家に到着してから、少しおかしな妖気を感知していたので、おじいちゃんに確認をしてみたけれど、この反応からして、おじいちゃん達は気付いていない。


 僕のお父さんとお母さんも感知能力は高いのに。ってーー


「おぉ~香奈恵~ベロベロ~おじいちゃんだよ~って、おじいちゃんか、俺!?」


「私おばあちゃん? いやぁ~歳は取りたくないわ~でも、こんな可愛い孫が見られるなら、それも悪くないわ~香奈恵ちゃ~ん。ちゃんとママの言うこと聞いて、立派な妖狐になるのよ~」


「お父さんとお母さん?!」


 2人とも皆の輪の中にいた! いや、混じって分からなかった!! こっちもこっちで爺バカと婆バカを炸裂させていました。


「2人とも、朝にも僕の家で見てるじゃん!」


 何ならそれも毎日ね。それなのに、何で毎回この反応するんだろう? 不思議だなぁ。赤ちゃんの持つ力なのかな?


「んっん! 悪い悪い。どうしても赤ん坊がいるとなると、こう、何て言うか……和むなぁ」


「そうねぇ~って、それどころじゃなかったわね。椿の感じている妖気なら、私達も感じているわ。ただ、これはちょっと厄介なのよね。害はないんだけれど……」


 いつもヤンチャ風の髪型のお父さんも、今は短髪ストレートにして、お母さんもちょっと髪の毛を切って、背中辺りまでにしています。何というか、2人とも香奈恵ちゃんに良いイメージを与えたい様です。

 それと、この何かフワフワした妖気は2人も感じていたのですね。しかも、心辺りがあるみたいです。


 それなら、そんなに心配することもないのかな? お父さんとお母さんがそう言ってるし、今急いで対策する必要はないのかも。


 その後に、また寝ている香奈恵ちゃんの様子を見ようとしたけれど、その前にいつもと違う格好をした、黒い癖毛のないストレートの髪を靡かせた美亜ちゃんがやって来ました。


「あら、椿。今日も来たのね。そんなに毎日来なくても良いのに」


 相変わらずのツンデレっぷりだけれど、手に持っているガラガラ鳴るおもちゃは、まだ香奈恵ちゃんには早いです。


 それと、服装がいつもと違うのだけれど、いつもはちょっとゴスロリっぽい感じの服だけれど、今日は所々肌が露出していて、王族っぽい感じの格好です。何処かで見たことあるような……って、そう言えばもうそんな時期でしたっけ。


「美亜ちゃん。今年は吸血鬼ですか?」


「姫って書いて吸血『姫』よ。あんたは子育てで忙しかったからね。そう、今年のハロウィンも盛り上げるわよ~!」


 ハロウィンだけは、美亜ちゃんスッゴい張り切るだもん。ただ、去年やらかしてくれたアレはもう、禁止ですよ。見た目的にもダメです。


「美亜ちゃん。分かっていると思うけれど、猫南瓜は禁止ですよ」


「へぇ?! な、何の事かしら~」


「あ、またやってるね! ちょっと、おじいちゃん! 近くの畑をチェックして!」


「うむ」


「あ、待って! やってない、やってないから!!」


 そう言っていた美亜ちゃんだけれど、畑を見に行ったおじいちゃんが戻ってきた時、手にソレを持っていたのでアウトです。因みに、もう片方の手には化け狸の楓ちゃんが抱えられていました。畑に恐怖の顔で倒れていたそうです。


 猫南瓜。猫の死体の頭から生えてきて実るという、強い怨念を宿したカボチャです。ただしこのカボチャ、強力な毒なのです。見た目的にも、腐った猫の死体の頭から伸びているから、色々と視覚的にもアウトですし、そのカボチャ自体も猫の頭の形をしているんですよね。


 それを、何で見に行ったのかな? 楓ちゃんは。

 彼女もハロウィンだからか、いつものくノ一の格好ではなく、包帯を乱雑に巻き付けている、ミイラ男の仮装をしていました。もちろん、下に何も着けず。楓ちゃんってば、もう。また誰か変な事を言ったね。


「おじいちゃん。楓ちゃんに、ちゃんとしたハロウィンの仮装を。あと、美亜ちゃんは……妖異顕現『影の操』逃がさないよ!」


「ふにゃぅ!? だ、だから、ごめんってば~!!」


 逃げようとする美亜ちゃんを、黒狐さんの能力と間借りしている妖気を使って、影の妖術を発動し、美亜ちゃんの影を腕の様に変化させて、尻尾を思い切り引っ掴みました。


「この猫南瓜、この時期にしか作れないし。呪術道具としては最高なんだもん~!」


「それは分かるけれど、去年のハロウィンはそれでおじいちゃんの家の妖怪さんの殆どが倒れたんだからね」


「流石の私もやり過ぎたってば……だから、今年のは弱めだから」


「強い弱いの問題じゃないです」


 何よりも妖怪っぽい行動だけどね。

 何ならその猫南瓜に、金華猫である美亜ちゃんの能力まで付与するもんだから、呪術による毒素がおじいちゃんの家に充満してしまって、飛んでもないことになったんです。だから、去年のハロウィンは中止になっています。


「いや~流石です。流石です! 猫南瓜、これを作成出来るものがいるとは! しかも、同じ猫。いやぁ、ドン引きですよ!」


「そうですよね~」


 僕の後ろから、僕も思っていた様な事を言ってきたから、思わず同意しちゃったけれど、聞き慣れない声なんですよ。誰だろう、と思って振り返ると。


「…………カボチャ、のお化け?」


 そこには、三角でくり貫いた目と口をしたカボチャの頭と、紫のマントだけで身体にしている、ハロウィンにはピッタリの存在が浮いていました。

 だけどこれ、ある妖怪さんが去年にやった仮装と一緒です。と言うことは、ドローンの様な姿をした変態妖怪、浮遊丸さんですね。


「はぁ、また浮遊丸さんは同じ格好を。口調まで変えてもね~」


「何や? 呼んだか? おおぅ、去年の自分と同じ仮装を?! そうかそうか、誰か気に入っとったんやな~!」


「って、浮遊丸さん?!」


 僕が浮遊丸さんの事を言ったら、横の廊下からフヨフヨと飛んできました。え、それじゃあこの目の前の妖怪さんは誰?!


 あ、待って。このフワフワした妖気って、僕がおじいちゃんの家に時に感じていた妖気だ!


「き、君は?!」


「あ、申し遅れました。私は、ハロウィンの妖精。パンプキーナです!」


 なるほど。妖精さんでしたか。

 妖精って言うと、虫の羽の生えたのをイメージするだろうけれど、それ以外も妖精と言うのです。


 そう、妖精とは日本で言う所の妖怪の事なのです。人や神とは違った存在として、海外ではこの言葉が使われています。


 というか、そんな海外のカボチャの妖怪さんが何でこんなところに?


「あ、重ね重ね申し訳ないですが、ここが日本の妖怪センターがお勧めする、妖怪問題を解決するグループでしょうか?」


「えっと、そうです。でも、海外の妖怪さんの依頼は来ていないような……あの、申請しました?」


「それなら今やっていますが、事態が事態なので、いち早く私が飛んできました。私達の王、ハロウィンキングである『パンプキング』様をお助け下さい!」


「えぇ?!」


 ーー ーー ーー


 突然やって来たハロウィンの妖精、カボチャ頭のパンプキーナさんから、その王様を助けて欲しいと言われた僕は、急いで鞍馬天狗のおじいちゃんの所に連れていきます。


 それとは別で、僕は香奈恵ちゃんのオムツ交換です! 


 この子、オムツに出しても泣かないんだもん。そこは恥ずかしいのか何なのか、僕が交換する時だって、ちょっと頬を赤らめて明らかに恥ずかしそうにしてるんだもん。それなのに、白狐さん黒狐さんが替えようとしたら大泣きします。


「うぅ~」


「ちょっと、香奈恵ちゃん! ウンウン出てるんだから、替えないとお尻かぶれちゃうってば」


「ううぅぅ~」


「だ~から~恥ずかしがらないで! やっぱりカナちゃんでしょ! ねぇ!」


 いつもそうなんだけれど、こう言ったら普通の赤ちゃんみたいにすんなりと言うことを聞く、とてもいい子になっちゃうんですよね。


「というわけで、我々の王、パンプキング様のーー」


「あ、ちょっと! 今度はおしっこ!? 替えてる最中だってば! ダメ、待って……あらららら!」


「え~お顔のーー」


「あれ?! 香奈恵ちゃん、それいつ持ったの? 僕の隠し撮りの……雪ちゃん!! 何持たしてるの!!」


「いや、だって香奈恵が欲しそうに……」


「上げちゃダメ!」


「あ、あの。ちょっと……」


「ごめんなさい。おじいちゃん、ちょっと聞いて上げて!!」


「儂を顎で?! いや、仕方ないが。それなら椿の旦那である、白狐と黒狐お主等……が……」


「す、すまん翁、手が離せん!」


「椿よ、これで良いのか?!」


「はい! それと、綺麗なタオルも!」


「「分かった!」」


「う、うぬぅ。いや、他の者の方がーー」


「楓、大丈夫?!」


「美亜ちゃん、楓ちゃん起きないの!?」


「そうなのよね。里子、ちょっと私の呪術道具とか持って来て。嫌な予感する」


「分かった~!」


 あ、なんかそっちはそっちで忙しそう。というか、楓ちゃん起きないの?! それはそれで気になるけれど、香奈恵ちゃんもやって上げないと。

 とりあえず、栗色の癖毛をした狛犬の里子ちゃんが走って行きました。


「ん? あ、その子!」


 そんな時、パンプキーナさんが大声を上げました。その横で浮いているのがパンプキングさんでしょうけれど、ちょっと今そっち確認出来ないや。


「私の王と同じ様な、怨念を纏った妖気が! その子も、私達の王と同じ呪いを?!」


「何ですって!?」


「今、何て言いました?!」


 飛んでもないこと言わなかった!? 嘘でしょう? 楓ちゃんが?! それはそれで心配なんだけれど、その王様ってどういう状況?


 何とか香奈恵ちゃんのオムツ交換を終わらせた僕は、次に楓ちゃんの方を確認します。スヤスヤと気持ち良さそうに寝ている。そう見えるけれど、確かに何か黒いものが纏わりついている。

 これって、この前の温泉旅行に行った時に見た、黒い妖気……とはちょっと違う? 何か混じってるような……。


 それから、例のハロウィンの王様と言われる妖怪さんの方も、どういう状況か確認しようとすると……。


「あ、王はこちらに居ます」


「え? こっちに来てるの?」


 てっきり別の所かと思ったけれど、居るのなら丁度良いや。って、何処にいるの? キョロキョロと辺りを見渡すけれど、何処にも居ませんよ。


「あ、ここです。ここに……」


 そう言うけれど、パンプキーナさんの横には、変な棒がフワフワと浮いているだけで……って、まさか!!


「何か小さな妖気を感じる! まさか、その棒と言うか、良く見たらそれ何かの野菜のへただ!」


「何だと! 椿よ、真か?!」


「と言うことは、その棒きれのような物が……」


「あぁ、何という姿に……そうです。この、へただけになってしまった方が、我等の王パンプキング様です!」


「「「カボチャの頭どこ行った!?」」」


 皆一斉にそう言っちゃいました。


 いや、だって。今はカボチャのそのへただけになっていて、他が何もなくなっているのですから。


「ーーーー」


 あ、顔が無いから口もない。だから喋れない。喋ろうとしているみたいだけれど、そりゃ喋れないよね。


「大丈夫です、大丈夫です王。私達が代わりに説明します」


 確かにこれは緊急事態ですね。


「う~む。しかしそれなら尚更、向こうの妖精センターには行かなかったのか? こっちでと言われてもじゃのぉ」


「それもそうですね、おじいちゃん。向こうにも確か、妖怪センターと同じものがあったはず」


 すると、パンプキーナさんがその辺りの事情を説明してきました。


「それは確かにその通りです。ただ、向こうは依頼料が高くてですね……向こうはこちらの10倍程高くて、私達の様な季節限定妖精では払えないのです」


 人間達の物価高の波がこんな所まで……嘘でしょう。


「それに、我が王がこの様な姿になってしまったのは、今ハロウィンが盛んに行われているアジア圏、この日本に着いてからなのです」


「そんな……日本で?!」


 フヨフヨとパンプキーナさんが浮きながら近付き、悩ましげな感じで話してくるけれど、ハロウィンなら海外も負けじと盛んじゃないかな? 最近は劣化した某仮装大賞みたいになってるけどね。


 本来はキリスト教の祭事で、万聖節の前夜祭がハロウィンの語源だったかな? それも、キリスト教の宗派によっては認めてない所もあるので、確認が必要でしょうね。あんまり調子にのっていると、向こうでは危ない事もあるのです。

 そこから、僕が興味を持って調べていたら、もっと古いのだと、古代ケルト人にまでなってしまって、魔女や悪霊にバレないようにと凄くややこしかったよ……。


そうなると、そういうのは関係なくハロウィンを楽しむアジアの方が、この妖精さん達も根付きやすかったのかもしれないね。


 そんな中で、いったい何があったのでしょう。


「日本の畑に、とても出来の良いカボチャがありまして。王が気に入ったので、それを持ち帰ろうと畑に入った瞬間、黒いモヤがパンプキング様に纏わり付き、次の瞬間にはその顔が無くなっていたのです。おぉ、何という事!!」


 凄く単純でした。いや、単純過ぎて逆に原因を絞れない。


「そうですか。そうなると、これは美亜ちゃんの分類になるよね? 分かる? 美亜ちゃん」


「そんな事言われても……あぁ、もう。あんなの作った罰なのかしら」


 そう思って貰っても良いけれど、あんまり思い詰めないでほしいんです。

 美亜ちゃんは金華猫の中でも特殊で、何と植物に呪いをかけ、あっという間に負の樹海を生み出してしまう程なのです。ただ、負の感情にまみれてしまう時もあるし、こういう落ち込んでいる時等は強化されるか、勝手に呪術が暴発しちゃうのです。


「とりあえず、その畑見に行こうよ」


 そう言いながら僕はおんぶ紐を用意し、香奈恵ちゃんをおんぶして、そこに向かう準備をします。香奈恵ちゃんは寝ますけどね。


「ま、待て椿よ。香奈恵も連れていくのか?」


「危なくないか?」


「そうは言っても、妲己さんだと変な顔を向けた後に大泣きするし、おじいちゃんの妖怪さん達にそこまで押し付ける訳にも……」


 だけど、おじいちゃんの妖怪さん達が近付いてきて、その内の1人が香奈恵ちゃんを抱っこしてきました。


「大丈夫よ~椿ちゃん。私、雪の子育てしてたのよ。懐かしいというか、つい最近って感じだからね。ふふ、ほ~ら」


「あっ! ダメ氷雨さん!! 香奈恵ちゃん、寒さで震えてる! 雪ちゃんは雪女さんの半妖だったから大丈夫だったけれど、香奈恵ちゃんは違うよ!」


「あらあらあら~?」


 氷雨さんが抱っこした瞬間、香奈恵ちゃんガタガタ震えてるから! だから、ちょっとあの不安というか……。


「もう、母さんったら。大丈夫、椿。香奈恵なら私が見てる」


 急いで雪ちゃんが氷雨さんから香奈恵ちゃんを引き剥がし、ポンポンと背中を優しく擦りながら抱っこしてくれました。


「それもそれで不安なんですよ」


 さっき香奈恵ちゃんに渡していた写真と言い、何か怪しいんですよね。


「大丈夫だって。ねぇ、香奈恵」


 そう雪ちゃんが言った瞬間、香奈恵ちゃんの額からダラダラと汗が。


「ちょっと大丈夫?! 香奈恵ちゃん。風邪引いたの?!」


「…………!!」


「いや、何で横に顔をブンブン振るの? 首の座らない赤ちゃんじゃ出来ないでしょう? カナちゃ~ん?」


「あ、大丈夫大丈夫。母さんが冷やしちゃったから。寒かったね~暖めて上げるね」


「ん、汗が酷かったら着替えさせてくれたらいいよ。着替え、僕の荷物にあるし。しょうがないなぁ。何か、僕の妖術とかも必要そうだし、直ぐに見て戻ってきますね」


 思った以上に、雪ちゃんがしっかりとしているんです。それなら大丈夫かな……と思ったけれど。


「かき氷、いる?」


「その真っ赤なかき氷はダメです!」


 何で激辛かき氷をすすめているんですか!? 雪ちゃんは、雪女の半妖なのに辛いもの好きなのです。そして、彼女が開発した激辛かき氷は、何故か歴代のかき氷ヒット商品に並ぶ程になっていました。


「あ、寝てる。このまま暖かくして寝かしておくから、早く行ってきて」


「う~分かりました」


 やっぱり不安です。だけど、香奈恵ちゃんも今のところ泣いていないし、体調も大丈夫そうですね。気持ちよさそうに寝ています。それじゃあ、その間に行ってきますね。


 ーー ーー ーー


 何だか時間がかかりましたけど、ようやくパンプキングさんが被害を受けたと言う畑にやって来ました。

 ここも京北地区にある畑でした。といっても、この辺りは個人個人でやっている畑なので、色んな物が植えられていて栽培されています。遠くにビニールハウスも見えるし、個人でやってるにしては本格的ですね。


 その内の1つですね。と言っても。


「カボチャなんて無いですよ?」


「何ですって?! いや、しかし確かに……」


 驚いているパンプキーナさんを他所に、美亜ちゃんと白狐さん黒狐さん、そして妲己さんが辺りの畑を探り、そして険しい顔つきをしていきます。


「まっずいわね、これ。美亜、あんたのも混じってるわよ」


「嘘でしょう。何でこんなぐちゃぐちゃに?」


「むぅ。これは最早呪術の粋を超えておるな」


「上賀茂神社の賀茂様を呼ぶか?」


「しかないかも、じゃな」


 うん。その前に1つ良いかな。


「美亜ちゃん、前に」


「あ、はい。あの……覚悟はしています。その、私の猫南瓜も使われてる」


「猫南瓜まで?!」


「それと、私の呪術。金華猫としての能力、病を与えるという呪いまで……」


「えぇ?!」


「何でこんな事になっているのか、一切分からないわ。そこは、そっちの3人が詳しいのでしょう?」


 何とか自分だけのせいではないと言いたげだけれど、色々と主原因になっていそうなんだよ、美亜ちゃん。


「うむ。この辺りの畑いったいが汚されとる」


「ここまで強力且つ広範囲となると、俺達でも対処が難しい。本物の神様を呼んで、土地の浄化をしていただかないといかん。ただその前にだ……」


「汚している張本人を探さないとね。そいつがきっと、ハロウィンの王にちょっかい出したのでしょうね」


 そういうのを利用しない所を見ると、妲己さんも大昔に比べたらちょっとは丸くなっているみたいだけれど、やっぱり希代の悪女の名目通りーー


「全く。これだけ汚すなら、先に言ってよね。私も混ぜーーって何でもないわ椿。その妖具引っ込めてくれる? けん玉の妖具、はい……悪かったわよ」


 たまにこういう事を言うもんだから、僕が止めています。とりあえず僕自身の妖術と妖気は使えます。だから、この「妖具生成」は使えます。後は、借りている白狐さん黒狐さんの妖気も使わせて貰っています。

 借りているだけなので、補充しないといけないけれど、まぁその補充の仕方が、その……完全に未成年には見せられない、18禁の世界なので、説明は控えます。だけど、2人は毎晩のようにそういう言い分でもって僕を求めてくるんだもん。


「そりゃ別に嫌とかそんなのじゃなくて、僕の気持ちも……いや、まぁ聞いたところで僕の返事も一緒だし、何なら他の人に見せつけてでも、2人は僕のものだってーー」


「ちょっと、あの子最近酷くなってない? 2人ともあの子ばっかり……」


「「いやいやいやいやいや」」


 それでも毎回の様に妲己さんは割り込んでくるからなぁ。だけどーー


「意外と可愛いんですよね~夜の妲己さんのーー」


「それ以上は言うな~!! 妖異権限『金爆風華(きんばくふうか)』!!」


「うやぁ~!! あ、あれ?!」


 何故か妲己さんが怒って妖術を発動して、僕を思い切り吹き飛ばしてきました。これくらいなら大丈夫だけどね。


「椿よ、その……また声に出ていたぞ」


「物足りないのなら仕方ないが、せめて夜まで待て」


「え? あえ? あ、また……ぁぁああ!!」


 爆風でひっくり返った僕に向かって、白狐さんと黒狐さんがそう言ってきました。また僕暴走していましたよ! 直らないですよ、この癖!


 足をバタバタさせながら何とか起き上がって、そのまま一目散にその場から立ち去って、近くの小高い山の方に向かいます。

 もう、良いです。とりあえずこの辺りを汚している奴の場所は、僕の妖気感知で捉えています。この小高い山のてっぺんです。


「はぁはぁ、もう~あっという間に倒してやる!!」


 恥ずかしさとか色々と混じっちゃったから、勢いがついちゃっているのです。もうそれを使って思い切り倒してやる。っと思ったけれど……。


「うや? え? なにこれ……かかし?」


 その僕の後ろを皆着いてきていました。


「ちょっと椿! 恥ずかしかったからって、その勢いのままでとか、無茶だし危険よ! 相手は呪術よ、私がいない……と」


「もう~私まで無駄に恥ずかしい思いを……って、なによこれ?」


「椿よ、そこは直らんな。って、なんじゃこりゃ!!」


「うぉぉ?! これまた、で、でかい案山子だな」


「うわぁ!? な、何ですか、これ?! ジャパニーズ呪いの人形?!」


「ーー!! ーーーー!?!?」


「あぁ、パンプキング様が荒ぶって、え? なんでしょう? こいつだ! って、こいつですか?! パンプキング様の顔を取ったのは!?」


 皆見上げて驚いちゃっています。それもそうですよね、目の前にある巨大な案山子は、回りにある高い木に負けず劣らずの高さがあったのです。


 そしてその顔には……。


「あれ、美亜ちゃんの猫南瓜」


「うぅ……」


「パ、パンプキング様の顔が、猫南瓜に?!」


 最悪な状態じゃないですか。というか、この案山子から神妖の妖気まで感じるし、神力も感じます。


 これは、マズイですね。


 どうしようか考えながら見上げていたら、相手のカボチャの口が光だしています。あ、嫌な予感。


「とりあえず、皆回避して下さい! 妖気と神力が同時に高まってる!」


「なんじゃと?!」


「神力と言うことは、やはり神関連か!?」


 白狐さんと黒狐さんがそう言った瞬間、カボチャの口から熱線が放たれ、僕達のいた場所にポッカリと大きな穴を開けてきました。

 皆一斉に飛び退いたけれど、直径からして数メートル程の穴が出来ちゃったよ。スゴい力……。


「あっぶないわねぇ。というか何あいつ、普通に光線砲みたいなの出さないでくれるかしら?」


「う~ん。流石に私の神妖の妖気で分散は、難しいわね……元が分からないと分解出来ないし」


「2人とも、木にぶら下がったまま言われても……」


 その中でも、何故か美亜ちゃんと妲己さんは木の枝に引っ掛かって、宙ぶらりんになっています。何でそうなったの?


「おぉぅ! ジャパニーズロボットマンガ! あれぞ正しくガーー」


「それは言わせないよ!!」


 ロボットでも何でもないから! というか、今度は目が光ったよ。何をする気?!

 だけど、光った瞬間は何も起こらず、その後に僕達の後ろから誰かがやって来ました。


「姉さん……」


「え? 楓ちゃん? 大丈夫なの?!」


 やって来たのは、変わらず包帯を身体中に巻き付けた楓ちゃんでした。


「楓あんた、寝ときなさいよ! 元を何とかしないと、あんたのは治らないんだし」


「大丈夫っす。治ったっすから」


「そんな訳ないでしょ。あんたから、呪術による邪気が……って、しまった!! 避けなさい! 椿!」


「はい? うわっ!? え? 楓ちゃん?!」


 怪しく目が光ったなって思ったら、クナイを取り出して僕に斬りかかってきました。


 楓ちゃんがご乱心?!


「ちっ、外したっすか」


「か、楓ちゃん? 何で? いや、まさか……操られてるの?」


「その通りよ。だって、私の金華猫としての能力まで使われているのよ。分かっているでしょ、相手を魅了する能力よ! 当然ぐちゃ混ぜになって強化されているわ」


 厄介な事にしてくれましたね、楓ちゃん。それはそれで何とかして助けないとだけれど、後ろのカボチャの案山子がそうさせないでしょうね。う~ん。


久延毘古(くえびこ)様の邪魔は、させないっすよ」


「え? 久延毘古? それが、その案山子の姿をした神様の名前?」


 楓ちゃんが、その案山子の前に立ちふさがりそう言ってきました。


 とりあえず神様関連なので、白狐さんと黒狐さんの方をチラッと見ると、白狐さんの肩に、上賀茂神社の神様賀茂別雷大神かもわけいかづちのおおかみで、通称賀茂様と呼ばれている神様の、式神がちょこんと座っていました。

 烏帽子と神職の服を着ていて、見た目も子供みたいだけれど、雷から人々を守る立派な神様です。


「むむ。2人から書簡を貰い、急いで式神を飛ばしてみたら、えらい事になっておるの」


「えぇ、これは流石にと思いました」


「賀茂様、これを浄化出来そうなのは……」


「そらお主等しかおらんだろう。何せ久延毘古は畑の神、大地を司るお主等の主宰神と相性が良い。その守り神であるならば、お主等で何とか出来よう。とは言え、厄介な奴が憑いとる。先ずはそいつじゃが、ごちゃ混ぜになっとるからよく分からん」


 どうやら、久延毘古様に何か憑いているみたいです。そうですね、何か色んなものが重なっている気がする。


「その為にも椿よ、あの狸の娘を何とか抑えてくれんか?」


「そうですよね。でも、今の僕には浄化の力は無いです」


 僕にあった神妖の妖気は天照大神様のものだったから、もう返却しちゃっています。僕本来の妖気は神妖の妖気ではないはずだし、浄化の能力もない。だから、こういう存在を何とかする事が出来なくなっているんです。


 何も出来ないなんて歯がゆいです。


「なに、あの小娘は魅了されとるのだろう? 椿よ、お主にも無かったか?」


「え? あ、そっか」


 ただ魅了されているだけなら、それを上回る力で魅了すればいいんだ。それに気付いた僕は、一歩前に出て楓ちゃんに向き合います。


「何をする気っすか? 残念っすけど、自分はもう久延毘古様の使い。それに喜びを感じているっす。姉さんの魅了ごときでは、この思いは消せないっすよ!」


「どうかな~? ほ~ら、楓ちゃん。僕の尻尾だよ~モフって良いよ~ほらほら……っん」


 そう、僕の尻尾には魅了効果がある。例え神様レベルの魅了だろうと、僕のコレには抗えないレベルです。だって、神様だろうと魅了しちゃうので。


「だから、姉さんのこのモフモフで、とてつもない神レベルの肌触りの尻尾だろうと、これくらいの魅了で上書きなんてーー」


「いや、殺気満々の顔だけど、身体は思い切り僕の尻尾に抱きついてますけど」


 何のギャグ漫画の1コマでしょう。楓ちゃんはシリアスな顔のままで、一瞬で僕の尻尾に抱きついてきました。


「いや……違うっす。これは、違うっす。魅了はされてないっす。身体は魅了されているけれど、心までは魅了されーー」


「そう。楓ちゃんの僕への愛なんて、その程度だったんですね」


「はぅあ!? いや、それも違うっす! その、あの、自分は……あぁぁぁ!!!!」


「はい、楓ちゃんダウン。チビ賀茂様、この子の呪術解除お願いします」


「つ、椿よ。その……あざとさにまで磨きがかかってないか?」


「わ、わざとらしく涙まで……キランって効果音まであったような」


 そりゃ、妖狐ですから。確かに人間の男だった時もあるけれど、最近はもう殆どそれが薄らいでいます。とは言え、これは恥ずかしいです。楓ちゃんが精神的ショックで崩れ落ちなければ、もっと恥ずかしい事をしないといけなかったです。


 そもそも、僕から楓ちゃんを取ろうだなんて、おこがましい事をしますね。この子の僕への忠誠心や友愛は、あなたなんかに奪えるものではないですよ。


「ちょっ~とだけムカついてきたな~あなたに憑いているやつは、徹底的に浄化してあげないとね」


 すると、久延毘古様がまた口を光らせ、熱を溜めていきます。今度はさっきよりも強力にしていますね。


 ただ、こっちも何も準備をしていないわけではないですよ。


「白狐!」


「分かっているわ黒狐よ」


 そ言うと、2人は僕の前に出て、久延毘古様に向かって走り出します。


「白銀大剣『白彲(しろみずち)』!」


「黒金大剣『黒彲(くろみずち)』!」


 大きな石の刀剣を肩に乗せ、2人は身を低くして、案山子の姿をした久延毘古様の脚を斬りつけました。

 2人は完全に自分達の力を取り戻して、今では以前の僕以上になっています。ちなみにあの剣は、斬りつけた後に特殊な毒が滲み出て、例え浅かったとしても、その毒で溶かしてしまうのです。かなり強力な武器ですね。


「……ふむ。硬い上に溶かせんか。おっと!」


「白狐、少し妖気を出し渋ったのではないのか? うぉ!」


 だけど、2人のそんな攻撃でも相手はびくともしなかった。マズイですね。久延毘古様がグルグル回転して、2人を遠ざけています。

 そして、僕達を正面に据えてピタッと回転を止めて、また口から熱線を放つ準備をし始めた。


「くっ、跳ね返すにしても、楓ちゃんでも無理だろうし、というか気絶してるし、魅了も解除されているのか分からないし……あ~もう! 一か八かしかないですね!」


 このままだと、皆仲良く熱線の餌食です。だから、僕も妖術を発動して、妖具を生成します。

 それは、万華鏡の様な筒だけど、中は万華鏡ではないです。くるくると回せるのは回せるので、それを利用します。


「……かぁ!!!!」


 と、思っていたら、久延毘古様が何か叫んでいるような。


「何故、食べ物を粗末にするのかぁ!!!!」


「はい?! あ、畑の神様だから?」


「ち、違うぞ椿! この発言は!」


「あぁ、取り憑いている方も絞れそうじゃ! こりゃ似たような奴が取り憑いとるな!」


「あぁ、ひもじぃぃぃぃ!!!!」


 スッゴい恨みの念がこもった叫び声。取り憑いている方は、食べ物に対して相当な恨みがあるの?


「こやつに取り憑いているのは、畑怨霊(はたおんりょう)じゃな! 黒狐よ!」


「今それで絞って妖気を取り込み、アプリで検索した。バッチリ出てきたぞ! 畑怨霊で間違いない! ちなみにAランクだ!」


「は、畑怨霊って?」


 すると、僕の後ろから美亜ちゃんが説明をしてきます。


「畑怨霊は、凶作等で餓死した人が遺体を放置され、供養もされずにいると怨霊になるの。しかも、人間達に害をなす存在よ。私達金華猫の中では、一人前になるための試練として、この畑怨霊を使役するってのがあるの。あぁ、だから私達の魅了術も使えたのね。見たことあるんだし。だけど、これだけの怨念の濃さは見たことないわね」


 そんな奴が、久延毘古様に取り憑いているの? だけど、久延毘古様も神様だから、そんな怨霊くらい弾けなかったのかな?


「よっぽどその怨念が強かったから、久延毘古様でも対抗出来なかったっていうの?」


「いんや、椿よ。先程の台詞にそのヒントがありそうじゃ」


 さっきの台詞……あぁ、食べ物を粗末にって言葉。まさか、最近の人達の食べ物への扱いで、何か不満があるっていうの?


「もし、久延毘古様がそれに同調してしまっていたら、我等でも引き剥がせん」


「ふ~む。これはマズイ。本体の方も、急いで他の神々に掛け合って、何とか出来ないか模索しとる。それまで、ちょっと抑えといてくれ」


 それまでと言われましても……。


「あぁぁぁ!!」


 さっきの熱線が更に巨大化していき、僕でも返せるか分からない程になってしまっています。


「……これじゃ無理かな?」


「椿よ。その万華鏡で何をしようと?」


 上手くいけば、行動不能には出来るのですが……。


「かぁ!!!!」


「あ~もう、やるしかない!」


 次の瞬間、巨大な熱線が放たれ、この小高い山も含めて、熱線の先にある山も穿つ程の威力が、僕達に向かって襲いかかってきます。


「妖術回転、反転万華鏡!!」


 それを、僕がさっき生成した万華鏡で受け止め、その中に吸い込んで回転させていきます。その時に、相手の妖気と僕の妖気のぶつかり合いで、万華鏡の様に様々な模様を描き始めます。


「おぉ」


「美しいのぉ……が、椿よ。大丈夫か!?」


「う、ぐぐぐぐ。さっきのより大きいから、ちょっとキツいかも」


「あら、その言葉ちょっと卑猥」


「こんな時に変な事言わないで下さい妲己さん!」


 何が卑猥なんですか、何が!?


「まぁまぁ、あんたのやろうとしている事は分かったから、私も手伝うわよ」


 そう言って、妲己さんが僕の肩に手を置いてきました。すると、妲己さんの妖気が僕に流れ込んでくる。そんな事、出来ましたっけ?


「妲己さん……」


「ふん。あんたの妖具に、あんたを介して流してるの」


 あ、はい。そんな感じですね。なるほど、これなら相手の妖術が強力だろうと、グルグルと回転させて、自分の妖気と妲己さんの妖気を混ぜ、そのまま相手にお返しです。


「てぇい!!」


「って、ちょっと椿、これ強力過ぎるわよ! あんたまさか、黒狐の妖気を利用した、術式吸収まで使ってるでしょ!!」


 あ、バレた。2人から譲り受けた能力の方も、まだ僕の中に残っているんだもん。ただ、前より威力は落ちているから、こんな風に返せません。今回は、妲己さんの助けがあったから何とかなったんです。


「もう、前ほどの威力はないです……だけど」


「ぁ……? ぁあああ!!!!」


「相手の身体を焼き尽くす事くらいは出来ます。妲己さんの妖気が無かったら無理だったけどね」


「あんたねぇ……いたた」


 ごめんなさい妲己さん。踏ん張れませんでした。思い切り後ろに吹き飛ばされてしまって、妲己さんと一緒になって転んでいます。


 ただ、相手の久延毘古様の身体も燃えてしまい、猫南瓜の頭だけがドスンと地面に落ちました。


「ぁ、ぁぁああ。おのれ……我々の苦しみ……我々の怒り……我々のぉぉ!!」


 それでも、下から人の髪の毛とか植物の蔓とかが伸びてきて、そのカボチャの頭を支えています。まさか、そのまま戦闘継続出来るの?


「うむ。しかし、機動力は落ちておる! 白狐! 黒狐!」


「致し方ないですね」


「配置につく。お願いします、賀茂様!」


 すると、頭だけになった久延毘古様の横を、白狐さん黒狐さんが駆け抜け、地面に大剣を突き刺して札を取り出し、紋様を狐火で地面に刻んでいきます。


 チビ賀茂様は久延毘古様の真正面。何をする気?


「久延毘古よ。お主の怒りももっともじゃ。特にこの日本は、食べ物の賞味期限とやらにかなり敏感じゃ。特に料亭や施設等に多く見られる。まだ食えるのに、ドサドサと捨てていく。そんなものを見れば、お主等も怒り心頭じゃろう。それに同調してしまうのも致し方ないが……相手は怨霊ぞ。神がそれに同調してどうするか!」


 まるで怒るようにしながら、チビ賀茂様はそう言う。そして、その手には賀茂さまから転送されたのか、木の札が握られていた。


「答えは最早、これしかない。説教じゃ」


「しかしそれが出来るのは、その上の存在。久延毘古様と関係があるのはーー」


「そう、イザナギノミコトじゃ! というか、久延毘古は杖彦からきたと言われている。イザナギが黄泉から帰った時、禊として投げ捨てた杖、それが元になっていると言われているのじゃ。それならば、神々が数人集まれば可能な、この木札による降臨術で、久延毘古の方は抑えられる。残る畑怨霊は頼むぞ!」


 そして、チビ賀茂様は両手で印を結び、呪文を唱えていく。


「かしこみかしこみ、イザナギノミコトにおきましてはーー」


 始まった瞬間、白狐さんと黒狐さんが刻んだ紋様も光り始めて、辺りの地面を浄化していきます。このままいけば、久延毘古様は何とかなるかもしれない。


「ーーというかお主が昔にした事じゃから、何とかせんか~!!」


「めっちゃアバウト!! 良いんですか?! それで!?」


 何だかやけくそな感じもしますよ。


「いいんじゃい! ほれ、見るのじゃ」


「あっ」


 確かに、久延毘古様の頭の上に何か光の塊が発生して、それが人の形を取っていきます。同時に、カボチャ頭だけになった久延毘古様の身体もやんわりと光り始め、その光がカボチャ頭から離れていく……と思ったら、その光が案山子の形になりました。ボロボロの布切れを纏った案山子に。


「まさか……」


「うむ。成功じゃな。何とか畑怨霊と久延毘古を引き離せた。さて、あとは……」


「ああぁぁ!! おのれ!! こうなれば、残った力で辺りの妖怪達を魅了して、この怨みを思い知らせてやる~!!」


 物騒な事を言い出した畑怨霊だけですね。だけど、まだ神妖の妖気を感じます。何でですか!?


「ふっふっ、久延毘古様を引き剥がしたくらいで、畑怨霊はどうにもならないっすよ。あと、これ以上はやらせないっす。自分はまだまだやれるっすよ、姉さん」


「え? ちょっ、楓ちゃん。君まだ魅了されてるの?!」


 しまった。楓ちゃんは久延毘古様じゃなくて、畑怨霊に操られているのか。というか、楓ちゃんの実力なら何とかなりそうなものだけれど、またドジな事をしたのかな?


「ふふ。わざと魅了されて、姉さんを心配させて、なんなら尻尾も堪能。我ながらナイスアイデアっす。まぁ、ハロウィンなんで、お菓子をくれない姉さんなんか、いたずらしまくって……」


 そう言えば、最近楓ちゃんを構ってあげられていなかった。彼女の成長もあって、立派に化け狸として頑張ってるな~と思っていたけれど、まだまだ甘えたいざかりでしたか。とは言え……。


「全部声に出てるし、流石にやりすぎです。妖異顕現『影の操』」


「ふぇあ?! あぁ!! し、しまったっす~!!」


 イタズラし過ぎはお仕置きです。それも何だか嬉しそうなので、そのまま木に吊り下げておいて上げましょう。


「あぁ、姉さん。ごめんなさいっす~で、でも、最近姉さん自分と遊んでくれないっすから~ちょっとイタズラしたくもなるっすよ~!」


「うん。そうだね、それはごめんなさい。ただ、イタズラをするにしても、もう~少しタイミングを考えて欲しいな~か・え・で・ちゃん」


「ひぅっ、はっ……ね、姉さんのガチギレの微笑み……す、すいませんでしたっす」


「いい子だね、楓ちゃん。そのまま罰を受けといてね」


「はいっす」


 そう言った後から、楓ちゃんは静かになりました。何より、とっくに魅了の方は解除されているのに、まだそんなふりをするなんてね。


「くそっ、くそっ! 何故魅了されない!!」


「あぁ、まだやってたんだ。だけど無駄ですよ。この辺りの妖怪さん達は全員、既に僕の魅力でメロメロになっていて、他の魅了なんて効きませんから」


「なっ?! それならば、お前を消すまでだぁ!!」


 そう叫ぶと、畑怨霊のカボチャの頭から、人の髪の毛の様なものが伸びてきて、僕に向かって襲いかかってきました。あぁ、だけどそれは判断ミスですね。久延毘古様を剥がされた時点で、僕達から逃げないといけなかったのです。


「む~だ~よ~ふふふふ、よ~くも私の猫南瓜と、私の魅了術を悪用してくれたわね~や~っと隙アリよ~」


「はがっ?!」


 準備が終わった美亜ちゃんが、畑怨霊の背後に回っていて、ガシッとその頭を引っ付かんで持ち上げました。そして、手に持っている小さなカップをゆっくりと畑怨霊に近付けていく。


「ま、待て! な、なんだそれは?!」


「この臭いで分からない? 私の、お・し・っ・こ」


「は?! あ、まて……止め。ゲボボボボ!!」


「ほ~ら、沢山飲みなさい~」


 金華猫は、飲み物に尿を混ぜることで、病を与える妖怪です。

 はい、もうこれは仕方ないです。畑怨霊さんの妖気を上回る呪術を与えれば、完全に倒すことが出来る。とは言えですよ、美亜ちゃん。もう少しその、方法はなかったのでしょうか? 旗から見たら、猫の頭をした南瓜に、タップリと尿を染み込ませている映像になってます。


「ほ~らほらほら~」


「ガボゲボガボガボ!!」


「もう、何これ……」


 神妖気の方も気になっていたけれど、どうも本人は扱えていない、というか気が付いてもいない? ただ、その妖気のお陰で久延毘古様を乗っ取れたみたいだけれど、畑怨霊の器程度じゃ扱いきれなかったようです。


「美亜よ、その……それを斬れというのも……」


「俺達の神剣が……」


「何よ、完全にダウンしているんだから今のうちに浄化しなさいよ」


 美亜ちゃんの呪術で、相手は病同然の呪いを受け、ピクピクしながら泡吹いちゃってます。猫の頭をした南瓜が泡吹いてるって、もう絵的にもマズイってば。


「仕方ないのぉ、私の力で何とかするか」


 そんな風に白狐さんと黒狐さんが戸惑っていると、チビ賀茂様がやれやれといった感じで、お札を畑怨霊に貼り付けました。


「ぁ……ぁあ……ひもじい……何故、食べ物がならない……何故、今こんなにも食べ物があるのに……捨て、て……いるのだ……」


「ん~まぁ、時代が変わったとしか言えんのぉ。ただそれでも、もったいない事をする人間はおるし、食べ物で遊ぶは、食べ物を写真とやらで撮っては、それをどこかに出して自己評価されようとするは、ろくな事をせん奴はおる。そういう奴には祟っても良いだろうが、別に全員ではない。そう剥きに怒りを振りかざすより、選べばよいではないか?」


「あぁ……あぁぁ……あ、ありがとう、ございます」


 チビ賀茂様が、浄化されて消えようとする畑怨霊に対して、そう答えました。だけど、そんな簡単にそれを許して良いのかな?


「チビ賀茂様、そんな事を簡単にーー」


「良いんじゃ。他の神々からも許可は得ている。ここ最近の人間どもは、食べ物に対して感謝をしとらん。食う事もせずに捨てる。傷んでおったらまだしも、食えるのにじゃ! しかもなんじゃ、良く分からん板みたいなもので写真を撮って、たったそれだけでお残しして捨ておる! 甚だ遺憾じゃ。よって、あやつの怨念の標的くらいにはなっても良かろう、と話し合いで決まったようじゃ」


 言い分は良く分かります。それも全ては、衛生法で定められているもので、やっぱり少しでも痛んでいるものを食べてしまうと、健康を害してしまいます。だから、なんですよ。ただ、そのせいで大量の食材が廃棄されているのも事実です。


「チビ賀茂様。人間は、そんなに強くないです。ちょっとした事で、直ぐに病気になりますから。衛生的にも……ね」


「む、少し言いすぎたか。しかしまぁ、言ったように極端にもったいない事をする奴だけじゃ。あぁ、それと美亜よ。お主も、椿達から罰せられておけ」


「んにゃ?! な、何でよ……って、いやその……あれは、でも……」


 猫南瓜の件ですね。はい、それはもうタップリとね。


「ご、ごめんなさい……」


 ずいぶんと反省はしているみたいなので、軽めで許して上げましょう。


 そんな事をしている間に、白狐さんと黒狐さんが辺りの土地の浄化を終え、すっかりと元に戻った久延毘古様が僕達に一礼し、もう一つの光の塊と一緒に何処かに行ってしまいました。

 畑怨念の方も、綺麗に浄化したので、しばらくは出てこないと思います。ただ、食べ物を粗末にしていたら、きっとまた直ぐに現れるでしょう。


「あ、いっけない! そろそろ香奈恵ちゃんが起きる時間だ!」


「うむ、いかんな。急いで帰るぞ!」


「椿よ。暇があればまた上賀茂神社に来るのじゃぞ~」


「は~い!」


 そうして僕達は、急いで帰路につきました。


 ーー ーー ーー


「いや~今回は助かりました! パンプキング様の頭も戻り、ご満悦です!」


「うむうむ。流石の私も漁ってたよ。しかし、この頭は気に入った」


「パンプキング様?!」


 事件が解決して、へただけだったパンプキング様の顔も元に戻り、身体も大きなマントを翻して格好つけています。その頭なんですけど、帰りの道中で元に戻っていたパンプキング様を見ていたら、あり得ない頭の形になっていました。


 そう、猫南瓜の頭です。


 何でか気に入っちゃったようです。お陰で、今年のハロウィンはカボチャの形が猫の頭になってしまいました。皆、ごめんなさい!!


「キャッキャッキャッキャ♪」


「で、な~んで皆ダウンしているんですか? あ、香奈恵ちゃん。首苗さんの首持ってグルグル回さないで上げて、顔が真っ青で窒息しそうですから!」


 帰ってきたら、皆さんグロッキーになってダウンしていました。正確には、香奈恵ちゃんのイタズラでノックダウンさせられたというか……。


「ほっほっ、その調子じゃ。良いか? とっ~ても無邪気な妖狐になるんじゃぞ? よいな?」


「キャッキャッ♪」


 そして、それを焚き付けていたのは十二単を着ている玉藻前さんでした。香奈恵ちゃんを抱っこしてあやしているのはいいけれど、何をしてくれているんですか、何を!


「玉藻前さん!!」


「おぉっと、もう帰ってきたのか。早いの~まぁ、よい。ほれ、香奈恵。だ~い好きなお母さんのお帰りじゃ」


 そう言って、微笑ましい様子で僕に香奈恵ちゃんを渡してきました。とりあえず、それ以上の変なことはされていないですね。


「おぉ、そうじゃ美亜よ。あの猫南瓜とやら、なかなか出来が良かったからの、私も少し手を加えてやったぞ」


「え?」


「な、にゃ……あ、あんたまさか、神妖の妖気を?」


「おぉ、そうじゃ。どうなるか楽しみじゃの~」


 あの神妖の妖気は、玉藻前さんのでしたか。どうりで、久延毘古様を乗っ取れるはずですよ。あはは。


「うん? どうしたのじゃ、椿」


「玉藻前。あんた今、墓穴掘ったわよ」


「は?」


「天誅~!!」


「うやぁ~~ん!!!!」


 とりあえず尻尾をハンマーした黒槌土塊でお仕置きです。あんまり効いてないだろうから、その辺で太ってゴロゴロしている一反木綿さんを使って縛り上げておきます。


「おぉう。一反木綿に罪は無かろう。というか、悪かったわい。何か、えらいことになっておったようじゃの」


「そのまま反省しておいて下さい。あ、一反木綿さんは運動しなかった罰です」


「はいは~いじゃ」


「う、うっす!」


 玉藻前さんの返事。全く悪びれる様子がない。本当に、この人もやっぱり、希代の悪女と言われた九尾の妖狐ですね。油断出来ません。


「お帰り~! 椿ちゃん~! 皆もお腹空いてるようだし、今日はハロウィンだから、いっぱいカボチャ料理作ったよ~!」


「「「「おぉ~! ようやくだ~!!」」」」


 狛犬の里子ちゃんが、給仕服でやって来て、沢山の料理を手にしていました。また宴会だね。今日は仕方ないけど。


 仮装とかして、お菓子などを貰う行事は僕達はやっていません。仮装する必要も無ければ、驚かすのもちょっと本気過ぎるので、色んな意味で危険なのです。

 だから、せめて気分だけでもと飾り付けはして、パーティーをしているのです。それで美亜ちゃんは、猫南瓜なるものを作って飾り付けしたのです。去年は悲惨でした。


「よし、皆の者。今日はこちらの家にお邪魔することにしよう~なにやら楽しそうだ!」


「「「は~い、パンプキン様!」」」


「って、パンプキーナさんがいっぱいいる! っていうか、皆頭が猫南瓜!!」


 猫南瓜の頭をしたハロウィンの妖精って……後で向こうの協会から文句を言われたらどうしよう。


「あぁぁ! わ、わたしのカボチャ料理が~!!」


「へっ? わぁ!! 踊り飛んでいる~!! どうやって食べるの、これ!!」


 どうやら今回は里子ちゃんの仕業じゃないようだけれど、どうやって食べたらーー


「今回は鷲を助けてくれた礼じゃ! タップリと楽しんで、タップリと食べて頂きたい。ほれ、そうしないとまた出るんじゃろ? というわけで、一番の功労賞の狐の嬢ちゃんから、カボチャパイにカボチャシチュー、カボチャバーガープレゼントじゃ~!!」


「がぼぉぉ!!」


「「「椿ちゃ~ん!!」」」


 そんなに僕のお口には入りません!! フヨフヨ浮いて踊る里子ちゃんのカボチャ料理が、僕の口に飛び込んで来ましたよ! 普通に食べさせてよ、普通に!!


 毎年毎年、ハロウィンだけじゃなくて、何かしらの行事があるとこの有り様です。お陰で、僕はもう寂しい思いなんかしていないし、している暇もありません。


 ところで、寂しいで思い出したけれど、お騒がせの楓ちゃんがいません。って、あ……。


 ーー ーー ーー


「寒空の下、姉さん達に忘れられ。いや、いいんっす。自分やりすぎましたから。反省です。だけど、だけど……流石にそろそろ降ろして下さいっす~! ごめんなさいっす~!! あ、へくちっ!」


 イタズラはほどほどに。

            ~HAPPY HALLOWEEN!!~

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