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18.広い世界へ

 空は雲一つない青空。

 私の目の前に広がっているのは大海原。どこまでも、地平線の彼方まで続く海が見える。


「お嬢様、そろそろ中にお戻りにならないと風邪を引いてしまわれます……って、またこんな所におられるのですか……」


 私を見つけた侍女が困った様な表情になる。侍女兼秘書に彼女を選び、もう長い。今回の旅行にも一緒についてきてくれた。


「ごめんなさい。船に乗るのは初めてだから……海ってこんなに広いのね」


 私は素直に謝る。

 ちなみに船に乗るのは初めてだけれども、国の外に出るのも初めてだったりする。


「初めてって仰るから心配していましたけれど、これなら大丈夫ですわね」


「……何が?」


「お嬢様は船酔いもありませんし、この程度の船揺れなんて気にもならないでしょう? だから安心しました」


 ああ……そういう意味……ね。

 確かに彼女が言う通りだった。全く酔いも感じないので、本当に私は船の旅を満喫していた。


「ですが驚きました。まさかお嬢様が国を出る事を承諾なされるとは思いもしませんでしたから」


「あら?王妃様からの提案よ?」


「だからと仰いましても……。普通は国を出てみたいという気にはならないと思いますけれども」


「……そうかしら?」


「はい。国の外に出たいと考える貴族女性はまずいませんし……」


「……まぁ、今はね」


 私達は現在、王妃様の所有する船で世界各国を回る船の旅を満喫中だったりする。


『これからは女性も社会進出をしていく時代だわ。アリックス、私はこの数年で貴族女性達の意識を変える必要があると思っているの。この国の女性、いいえ、男達に意識を変えれば貴女が女流作家だと堂々と名乗れるわ。あの伯爵と別居するのでしょう?なら一度国の外に出て見ない?折角の機会だもの。世界を見て見るのも悪くないわよ』


 そんな王妃様の言葉に甘えて今に至る訳だったりする。


『ふふっ、アリックスが戻って来た時にはこの国はガラリと変わっているかも知れないわよ? 楽しみにしていて頂戴。それにね、私、貴女の本には随分とお世話になっているしね』


 あの言葉にはかなり驚いたけれども、今は王妃様への感謝の念しかなない。

 それにこう言ってはアレだけれど私の小説は上流階級を舞台にしている以上、何処かで正体がバレる可能性は高い。既にバレている可能性も高いとは思うけれど、念には念という奴だ。

 その小説。

 一応、シリーズ物は十年分は書き終えている。

 それを出版社に渡して順に本を出版していく予定だったりする。

 この旅行で、王妃様は私の本を書く作業と旅費を全て負担してくれたのだ。そして今現在書いている分に関しては全て終わっている。出版社に渡してある原稿が最新号という事になる。

 後はこの船に乗って各地を巡る事さえ出来れば、出版されるのを待つだけになっている状態だ。


 私はこの旅行を機会に、旅行記を書くのも良いのかもしれないと思っている。

 王妃様に相談した時に「是非、書くべきだわ」と背中を押されているしね。まぁ、王妃様の場合は『自分の経験を活かしなさい』という意味合いが強いと思うけれどね? とまあそれは置いといて。私は小説を書いていく傍らこの船旅でも本を書き溜めていくつもりでいる訳だったり。そうする事で私がこの船での旅を楽しんでいる事が、少しでも本に反映されるのであれば私としても有難い事だから。

 それに国外に出るのは正直嬉しいしね?

 この機会、利用しない手はない訳だし。


『いいこと、アリックス。世界は広いわ。貴女はそれをその目で見てくるの』


 王妃様の言葉が蘇ってきた。

 この海を見ているだけで世界は広いと感じてしまう。

 

 やだ、何だかワクワクしてきた。

 





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