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14.夫の変化

「え?帰って来た?」


「はい」


「旦那様が?」


「はい」


「え?……本当に?夕食前でしょう?」


「はい……」


 結婚後、というよりも旦那様は基本帰ってくる時間はまばらです。私も旦那様の帰りを待つ事もなく、出迎える事もなく過ごしていました。だから夕食の時間まで帰って来ないことが普通なのです。なのに……何故……?


 私は一応、彼の妻。伯爵夫人。夫が帰ってきたとあっては出迎えない訳にはいきません。慌ててエントランスまで行くと旦那様はちょうど入ってきたところでした。


「おかえりなさいませ……旦那様」


「ああ」


「今日はお早いお戻りですが……何かあったのでしょうか?」


「いや、別に」


 え?なら何故早く戻ったのでしょう?謎です。


「疲れた」


 旦那様は一言だけそう言うと、自室のある二階へと階段を上がります。私は後について……行くわけありません。使用人たちの注目を浴びてますが、そういう契約を交わしている以上は必要以上の接触はしない方が円満なのです。


 今日の夕食は夫婦で摂りました。

 結婚して初めての事ではないかしら?

 まぁ、私達の間に共通の話題など全くないので終始無言ですが。私は気にしません。旦那様もあまり気にしてなさそうです。夫婦が気にしなくとも使用人たちは気になるのでしょう。チラチラと私達の様子を気にする視線を多数感じましたが……気にしませんわ。


 こうして旦那様の気まぐれな行動は何故か次の日も続きました。

 そうして屋敷にいる時間が増えて、何故か私は旦那様と過ごす時間が増えたのでした。






「……旦那様、コレは何でしょう?」


「勿論、君へのプレゼントだよ」


 そう言われて手渡された赤い薔薇。

 旦那様の奇行は留まるところを知らない。


 ある日は「君に似合うと思って」と言い、それは見事な首飾りを。

 またある日は「君のために作らせたんだよ」と言い、素晴らしいドレスを。

 またまたある日は「最近、人気のスイーツだと聞いてね」と評判のお店のスイーツを。


 最初は、私も使用人達も驚きました。

 私は旦那様に恋をしてはいましたが現実というものを知っていましたから、まず疑ったのが「病気」です。性病を移されて脳に何かしら異変を来したのだと判断したのです。というよりも、そうとしか考えられない行動の数々。

 性病に犯されていると使用人に知られるなど恥以外のなんでもありませんから、旦那様がいない時間に私は使用人達にそれとなく指示を出して屋敷内で蔓延するのだけは避けなければなりませんでした。執事長とメイド長の二人には訳を話しましたけどね。



『奥様、旦那様は病気ではありません』


 執事長は呆れた様子で言ってきますし、メイド長も頷いてきましたから病気ではないようです。

 でも本当に病気ではないのかしら?

 あまりに私が疑うので二人は旦那様を病院に連れて行き、全身チェックしてもらったそうです。結果、旦那様は健康体でした。


 え?本当に?

 病気でないとすると旦那様は頭がおかしくな……いえ失礼しました(笑)

 まぁ、とにかく、性病の心配はなさそうでした。


 なら何故、何時までも屋敷にいるのかしら?謎だわ。

 旦那様に訊いても「もっと家に滞在する時間を増やすべきだと思ったんだ」と意味不明の事を言うだけ……。

 謎ですね、旦那様。





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