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13.初恋

 実は、結婚してから伯爵夫人として最低限の事しかしていない。

 もっともそれ込みの結婚条件だった。なので、私が王宮に行ったきりであっても旦那様は何も言えない。


 まぁ、ブリトニー伯爵家は古参の使用人が多かった事を考えると仕方がない。

 恐らく、旦那様の婚姻が中々決まらなかった背景には彼の浮気癖だけが原因ではないと思う。伯爵家の使用人は代々に渡って仕えている家が多く、余所者を簡単には受け入れないと言うのもあるかもしれない。それは彼らの雰囲気から感じ取れた。それと同時に主人であるオエル・ブリトニー伯爵に対する高い忠誠心が見て取れた。


 使用人達の質の高さは目を見張るものがあり、その事もあって伯爵家は守られてきたと言っても過言ではないだろう。あの家の「お坊ちゃま大事」は相当のものだろう。もしかするとそのせいで花嫁が来なかったのではないかと思う程だった。特に古参の使用人達の「自分達のお坊ちゃまは国一番」の態度は凄い。


 先の伯爵夫妻が早くに亡くなったせいかもしれない。

 兎に角、「坊ちゃま愛」に溢れていた。

 あれだけの家で、如何に嫡男だからといえ、すんなりと伯爵家を継げたのは使用人達の活躍があったのではないかと密かに思っている。


 なにしろ、大なり小なりの揉め事は定番だから。


 私達の結婚に伯爵家の親族の横やりが全く無かった事もそれらが関係しているのではないかと考えてしまう。一度、彼らのそこのところを詳しく聞きたい。今はまだ無理だけど……。


 ま、なにが言いたいのかというと現実は物語のように上手くはいかないと言う事だ。当たり前だけど……。

 

 王妃様は私の結婚事情をよく知っている。

 心配してくださっているのだろう。王妃様の優しい心遣いを無下にはできない。


『仮面夫婦のままでいるのなら貴女も彼のように恋人を持てばいいわ』


 王妃様はそう助言をくれる。

 先の事は分からないけれど今の現状、私が仮面夫婦をしているのは、ある意味仕方がない事だとも思う。

 しかし王妃様が言うように、恋人がいれば何か変わってくるのではないかと思うのも確かだった。

 それでも、もう少しだけ新婚の気分を味わっていたい、新婚というにはあまりにもドライな関係だった。でも、私にとっては初恋の相手との婚姻。喜ばないわけがなかった。旦那様は私に興味がないとしても、私にとっては夢のような事なのだから。例えそれが偽りの関係で、愛されていなくても、彼のそばにいられるだけで幸せだった。



 初めて旦那様と会ったのは社交界デビューの夜だった。その時の事を私は鮮明に思い出すと幸せな気分になれる。

 彼とのワルツは夢のような時間だったし、彼は本当に優しくて甘い微笑みを向けてくれた。

 そして何よりダンスがすごく上手い!!


 彼にとっては大勢いる女性達の中の一人。

 あの夜も彼は沢山の女性達と踊っていた。

 友人の妹だから気を使ってくれたのか、それとも彼が元々女性には優しいのかは分からなかったが。私はあの夜が忘れられないくらい衝撃的な出来事で、あの日を一生忘れることはできないだろうと思う。

 そしてこの初恋の思い出があれば生きていける、そう思えるほどの出会いだったのだから。



 どんな理由であっても愛する人と結婚できた私は間違いなく『幸運な女』だろう。




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