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1話 脱森

どれほど進んだだろうか、陽光が照りつけ、額からは汗が滴り落ちている。

整備されていない下りの森林を枝草を掻き分けて進んでいる。

足の動きも鈍くなり、息も荒くなっている。


ふと後ろを見ると、

さっきまでいた場所がまだ見えた。


クソが、麓につかねぇ!!!!!

一日の行動距離が自室とトイレ間の5mしかない俺には遠すぎる距離だッ!!!!!


山の麓に見えた集落は、だいたい3キロくらいの距離だった...と思う。

正直一人で山の中に居るなんて事が人生初でビビリまくっているし、時々耳元をかすめる虫に、泣きそうになりながらも必死に歩を進める。


この世界が異世界だということは魔物的な生き物も居るのだろうか....

もしかしてこの森にも......


マズい、良からぬ事を考えてしまった―――

風が木の枝葉を揺らし、マラカスの様な音色を奏でる――

都心の公園などで聞いたら、この音は心地良く、穏やかな気持ちになるのだろう___


しかし!!!!

今自分にとってこの音は森に俺一人しかいないという現実を際立たせてくる!!!

耳に指を突っ込んで、「あーあー」と叫びながらさっきよりも速足で森を駆け下りる。


そのときだった。

ふと、鼻にツンと来る、どこか、動物園のような匂いがした。

気付いた時にはもう遅し。

枝葉を掻き分けると、眼の前にソレが居た____




──イノシシだ。



思わず、情けない悲鳴を上げ、反射的に身体が跳ねる。

それはまるでアン◯ールズの田中の様なリアクションであった、

リアクション芸人の適正は申し分無いだろう。


地味に傾斜のある坂であった為、足を捻ってバランスを崩す。


「あっ」


まるで、イングランドのチーズ転がし祭りに参加するガチ勢プレイヤーかのように、俺は全身を回転させながら、見事な勢いで転がり落ちていった。____









____目が回る....気持ち悪い....全身が痛いやう。


くそー、異世界召喚から一時間も経たずに満身創痍だ.....

ふと辺りを見渡すと、木々の切れ間の向こうに開けた土地が見えている。


どうやら──麓まで、辿り着けたらしい。


起き上がり、痛む体を引きずりながら、森の出口へと足を運ぶ。

目の前に広がるのは、緩やかな傾斜の草地と、小さな道。

森の中とは打って変わって、日差しが降り注ぎ、空がなんとまぁ広く見える。



土が踏み固められた、幅二メートルにも満たない細い道。

でも、これまでの獣道に比べたら、整備されたハイウェイに思えてくる。


道は、さっき見た村の方角へと向かっている。

きっとあの村に繋がっているのだろう。



起伏のあるその道を進んでいくと、周囲の木々が少しずつまばらになっていった。

さっきまで木々の圧迫間が薄くなっていく。


そして──


「おぉ……!」


目の前には、どこまでも広がる青々とした丘陵。

風が草を揺らし、太陽の光が丘の上をなめるように照らしている。

まるで、世界が急に広くなったような開放感に、声が漏れた。


その草原の奥──

丘の下に、煙が立ち上り、いくつかの家が集まっており、その周りには牧草地が広がっている。




森から抜けた安堵と、異世界の人々と会うと言う期待から、気がつけば俺は丘を駆け降りていた。

満身創痍で、足も痛いはずなのに、ウキウキな気持ちが勝っていた。


痛みも疲労も、その瞬間だけはどうでもよくなった。

ようやく自分の、新たな物語、新たな人生が始まる気がして、胸が高鳴っていた____。













更新は2〜3日に1話のペースで予定していきます


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