14話 友達とお出かけ
金曜日は何事もなく過ぎ、高校入学後2回目の土曜日。
昨日の夜は『遊び惚けよう!』だのなんだの思っていたはずなのだけれど、どうも身体が動かない。
筋肉痛とかではない。寝返りはできる。
というか、痛みや病気の類ではない。
ただ単純に、疲れているだけ。
この怒涛の一週間の疲れが、昨日の夜から今日にかけて、ガッツリ来てしまった。
それだけ。
「……ま、いっか」
お母さんには昨日『疲れたから明日は起こさないで』と伝えてある。
だからゆっくり寝るつもりだったのだけれど、昨日早く寝た分、早く起きてしまった。
スマホを付けて時間を確認。まだ6時半。
え、6時半?
学校がある日と同じ時間に起きてしまった。
数分ゴロゴロしていたから、むしろいつもより早いくらい。
「ま、いっか」
1分ほど前と同じ言葉をため息と一緒にはき出し、腕をぐーっと伸ばしてベッド横の窓についている黄緑色のカーテンの裾を掴む。
少しだけ日の光が入ってきていたので、しっかり閉めて瞼を閉じる。
「……おやすみなさい」
朝に言うことじゃないけれど。
呟いて、二度寝と洒落込むことにした。
◆◆◆
がばっ、と起き上がる。
用事を思い出したとか、そういうわけではない。
「誰から……?」
スマホがブルブル震えていた。
マナーモードにしていたから、着信音が鳴っていないスマホを手に取り、寝ぼけ眼をこすりながら画面をじっと見る。
「……道原さん?」
知り合い。いや知り合いじゃなかったら怖いけど。
とにかく出なくては。ロックを解除し、「もしもし?」と寝起きっぽくない声を頑張って出す。
「あ、安喰君? 道原ですー。……もしかして寝てた?」
バレバレだった。
仕方ない、と咳を一つして、口を開く。
「二度寝しちゃってて」
「え、起こしちゃった!? ごめんね、この時間なら大丈夫かと思ってかけちゃった……」
「時間?」
そこで初めて、今は何時だ、と気になり枕もとの時計を見る。
9時2分。よくこんなに寝れたな、と自分で自分に感心する。
「全然大丈夫だよ。何か用だった?」
「ああ、そうだった。一昨日から高崎さん、キーボードの練習始めたでしょ?」
「うん、だね」
一昨日に引き続き、昨日も部長からキーボードの弾き方を教わっていた。
「それで、高崎さんが使うキーボードを探しに行こう、って話になって」
「探しに……、駅前の楽器屋?」
「そう! で、安喰君も誘おう、って話になったんだ」
なるほど。
「でも、邪魔になっちゃわない? ほら、高崎さんの性格的に……あ、変な意味じゃなくてね?」
言ってて思う。どう考えても変な意味に捉えられる言葉だよなぁ、と。
──そう思ったのだけれど、杞憂だったようで。
「高崎さんが言い出したんだ。安喰君も誘わない? って」
「ああ、そうなんだ、よかった。……ちなみに、新庄は誘わないの?」
「そこも高崎さんからの提案で、誘わないことになったんだ」
「え、ケンカしてたりしたっけ?」
なんとなく、不穏。
だけどまたまた、杞憂だったらしく。
「うっかり私たちの──私と安喰君の内面を話しちゃわないように誘わない、って言ってた。ケンカとかじゃないよ」
「よかった……。じゃあ、うん、行くよ。時間は?」
「楽器屋が開くのが10時だから、そのくらいの時間に楽器屋に集合で」
「わかった。それじゃ」
「うん、また」
電話を切り、座っていたベッドから降りて、部屋のドアを開ける。
朝ごはんのいい匂いが漂っていた。
──友達とお出かけ、楽しみだ。




