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僕を拾った八人の使者  作者: 夕暮 瑞樹
僕の居場所
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第七話 危うい会話

 会議が始まった。僕は会議には参加出来ない為、盗聴機越しで会議の様子を知ることになる。本当は事後報告でもよかったんだけど、少しでも皆の事は知っておいた方がいいとのことだ。そして、何かあった時様に僕からも連絡を送れるようにもなっている。僕は用意されていたイヤホンを装着した。


《?》んで、またケンは来ーへんねや?

《?》何時もの事でしょう?気にしなさんなや

《?》ケンはうちらの長なんやで?気にせんなんて無理やろ

《?》せやけど…

《?》彼なら今相続問題がどうとかで欠席だ。兎に角会議を始めよう。まず、"ダ"からだ

《ダ》私は言うことはありません

《?》分かった、じゃあ次

《ゴン》俺もありません

《?》はい次

《?》うちも特に無いわ。次いって

《カン》僕ですね、言うことは特にありませんが、少し水の循環をよくした方がいいかと思います。最近気温が上がるにつれ水の蒸発が早く、中々勢いがでないんです。

《?》成る程、少し検討してみるよ。次

《?》私は…そうだねぇ…無いことはないねぇ

《?》というと?

《?》カンや、あんた近頃暴れやしなかったかい?風の噂で、なんて言うけど…最近川が荒れているそうじゃないか

《カン》きっ気のせいですよ。最近釣りの調子が悪くてうまく操れていないだけです

《?》ふん、そうかい。なら良いんやけど?

《?》また何かあったら教えてくれ。じゃあコン、宜しく

《コン》なぁんにも無いネ。つまんないヨ

《?》そう?そういえばうちもちょっと聞きたいことがあるんやけど、あんた山の木何本か倒したやろ

《コン》それはゴンデス。僕に言わないでヨ

《ゴン》いや、俺じゃねぇよ兄貴だろ?

《コン》いーやあれは君の所為だネ。

《?》まぁ木が数本倒れた位は大丈夫だ、だがだからといって羽目を外しすぎるなよ?分かったな

《コン》はーイ。

《ゴン》分かりました

《?》じゃあ最後は俺だな。といっても特に話は何も無い。何か他に言いたいことがあるやつはいるか?

《?》まだ話は終わってへんで?勝手にまとめられても困るわ。あんたらやろ、あのバス

《ゴン》…

《コン》…

《?》ほら、こいつらやりよったで。"シン"、あんたは知らんかもやけど、向こうの川近くでバスの事故があってな、どうやらコンらの仕業らしいねん。上の方の木があんなとこにあるわけ無い。どうせあんたらやろ

《?》どうなんだ?

《コン》…間違いは無いデス

《?》…!!

《?》あれ、あんたが?珍しいなぁ

《カン》でも、すぐに対処はしたんですよね?きっと大丈夫ですよ

《?》コン、忘れてへんやろな?今からでも戦争、始めてもええんやで?

《コン》そう血走らないでヨ。君は何かと僕を落とそうとしてくるケド、僕何かしたカナ?

《?》うるせぇ。お前の存在が気に入らないんだよ!何でお前なんかがトップ2なんだ?こんなクソ野郎が!!

《?》お前らに何があったかは知らないが今は黙れ。"リ"、君がコンに対して当たりがきついのは確かだ。改めるように。兎に角、皆で現場に行ってみようじゃないか。何か他に分かるかも知れない。ついでに川も見てみよう

《カン》いや、それは…

《?》なんだい?何かやましいことでもあるのかい?

《カン》いいえ…ですが今部屋が散らかっていて…

《?》いや、カン君の家には行かない、川を見るだけだ

《?》何?怪しいねぇ、何を隠してんの?うちが行ってあげるよ

《カン》…!!何が怪しいんでしょうか!?

《?》そういうとこやで。何かおもろそーやからうちはカンの家行ってくるわ。皆はバスの方見てき

《カン》…(まずい、家には照葉君がいる)


まずい、カンさんの家には僕がいる。誰だか知らないけど、誰かが来ようとしている。逃げれば良いのかな。でも何処に?

「コンさん、僕どうすれば…。」

『兎に角逃げテ。でも僕らの家に来ちゃ行けないヨ。反対方向に逃げるんダ。遠くまで行かなくても、やり過ごせたらそれで良イ。』

「分かりました。」

『安心しテ、必ず迎えに行くかラ。』

「ありがとうございます。」

コンさんの声が少し震えていて、動揺しているのが分かる。

「本当にすいません、気を付けてください。後、どうしようもなくなったらまた言ってください。無線は通じているので。」

「ありがとうございます。」

カンさんも、緊張した声で無線に応じてくれた。


《?》誰と話しているんだい?さっさと行くよ、カン

《カン》分かりました!


僕はイヤホンを着けた状態で服などの僕がいた証拠となるものを全て集め、鞄に詰める。焦って何かを置き忘れるなんて事はあってはならない。できるだけ冷静でいようとするも、不安と緊張に足を引っ張られる。

 やっとカンさんの家を出ると、言われた通りコンさんらの家とは反対方向に足を進める。イヤホンからは、誰かを除く八卦さん達の楽しげな声が聞こえてき、あまりの楽しげさにこっちまで心を持っていかれそうになったが、今はそれどころではない。実はさっき玄関を出るとき、奥の方で人影が見えた気がする。更に今、カンさんの家を誰かが歩いているのが窓から見えた。背は僕と同じくらいの赤髪の女性である。その女性が、ふと此方を見た気がした。

「…(まずい!!)」

とっさに隠れたもののばれていない保証はない。もしここでばれると僕の命が危ういだけでなくコンさんらにも迷惑がかかってしまう。それだけは避けたい。窓が開く音がした瞬間、焦りと緊張で可笑しくなった僕の足が勝手に走り出した。これまで生きてきた中でこんなにも興奮した事があっただろうか。壊れているとしか思えない胸の高鳴りに従う足は止まらなかった。

 そしてその高鳴りは遂に、目の前に立ち塞がった赤毛がよく光るシルエットのおかげで最大値へと達したのであった。

「そう逃げんなや。おい、お前…誰や?」

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