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僕を拾った八人の使者  作者: 夕暮 瑞樹
小鳥の居場所
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第十四話 人影を追って

 翌朝目を覚ますと、僕以外誰も寝床にいない。驚いてベットから跳ね起き階段を駆け降りると、コンさんとゴンさんが何時ものように喧嘩しているのが見えて安心した。カンさんはイヌイさんに会いに行っているらしく、僕は昨日の疲れにより何時もより深く眠りについていたらしい。

「で、今日は何で喧嘩してるんですか?」

「今食べたいのは米か魚か問題。」

なんだ、そんなことか。ご飯とパンではなくご飯と魚が争うことがあるんだ。日本では両方という選択肢があるんだけどなぁ。

 そう思ってふと窓の外を見ると、木々の中に人影が見える。それは僕と服を着た、僕と同じ顔をした、僕が知らない人物。ぼやけていて、表情が見えなかった。

「……?」

「どうしたんだイ?」

「今、外に僕が…。」

「「?」」

「やっぱりなんでも無いです。」

気のせいだったかもしれない。窓に映った自分が外にいる様に思えただけかもしれない。そう思いまた窓を見つめ返すも、さっきの人影はいない。よく都市伝説なんかでドッペルゲンガー何て聞くけど、それなのかな。背筋がゾクッとする。とりあえず今は考えないようにしよう。

「大丈夫か?」

「大丈夫です。あ、二人ともじゃんけんしてください。」

「じゃんけん?何でだ?」

と言いながらもやってくれるコンさん達。結果はコンさんがチョキ、ゴンさんがグーでゴンさんの勝ちだ。

「じゃあ朝はゴンさんがご飯か魚かを選んで、昼はコンさんが選ぶので良いでしょう?」

「あぁ!確かに。」

「確か二。」

「じゃあ今は米ー。」

どうしよう、考えてしまう。何でもない会話で頭からあの人影を消そうとしているのに、全然言うことを聞かない。

「ちょっと出掛けてきます。」

朝食を済ませると、返事も聞かず直ぐ様外へ出た。


 確か此処にいた筈なんだけど。

 記憶がまだ鮮明なうちにさっきの人影がいたであろう場所を詮索する。すると、さっきのあの位置からさほど離れていない位置にまたあの人影が。それは僕が数歩歩くと砂のように消え去り、その場所へ行くとまたさほど離れていない位置に現れる。そうして僕はある場所へ導かれていった。

 人影が最後に居た場所。その人影が指を指していた場所を見ると、なんとそこには誰かが家を流し倒れていた。その人は小柄な少女で、帽子を深く被っている為顔が見えない。

「大丈夫ですか!?誰にやられたんです?」

さっきから風が強いせいで、近くに寄らなければ相手の声が聞こえない。

「ーー。」

「すいません、一旦移動しましょう!」

聞こえないならどうにも出来ない。とりあえず近くの風避けになりそうな大きな木を探し、近くに寄る。

「それで、何があったんですか。」

「おや、誰かいるのかい?」

「…?」

急に風が止み、目の前の子とはまた違う、中高音位の女の人の声が響いた。声の方を見ると、僕らで言う舞妓さんの様な女性が立っている。

「あらま。その子、僕がやったのかい?やだねぇ八卦を殺すなんて。何処のの子だい。」

何でそうなるの、今はこの人が危ないっていう時に。

「やったのは僕ではありません、助けてください。血が出ているんです。」

「言い訳はよしなされ、貴方の仕業だろう?こんなことをして、唯で済むとは思うまいねぇ!」

「違いまっ、、!?」

説得しようと近づくも、一度止んだ筈の風が僕とその人を遮るように強く吹きつけた。

「この事はしっかり報告させてもらうさかい、よろしゅうございまし。」

あまりの風の強さで目を開けられず、次に開けたときにはもうその人はいなかった。まずいまずいまずい、かなりまずい。僕は誤解されたままだしこの人は今にも死にそうだ。さっきから手首を押さえて脈は確認しているが、少しずつ遅くなっていっている。

「誰か!助けてください!!誰か!!!」


「あれ、何か聞こえません?」

「今聞こえた、少年の声だな。」

「行ってみましょう。」

「行ってみよう。」


「誰か、気付いて下さいよ…、」

喉がもう限界が近いのか、熱を帯びピリピリする。コンさんの家からかなり離れてしまっていたんだろう。中々助けは来なかった。とその時。

「少年!大丈夫か?」

「どうしたんですか、って…"兌"さん、?ダーさん!!」

「おい、しっかりしろ。少年、何があったんだ。」

駆け寄ってきてくれたのはカンさんとイヌイさんだった。かなり怒っている。唯でさえ有り得ない力を持っている人が、殺気を纏っている。その恐怖心と、さっき叫びすぎた影響で、口は動くも声が出ない。

「照葉君、何があったんですか!!」

「早く説明しろ。お前がやったのか?」

「違いますっ違うんです。」

何か言いたいのに言えない、身体が思うように動かず、終いには涙が出てきた。

「とりあえず俺はこいつを運ぶぞ。」

「お願いします。」

イヌイさんが"兌"と呼ばれたその人を抱えて飛んでいく。どうか助かって欲しい。彼女が一体どんな人かは知らないけど、本当に助かって欲しい。それは命の大切さを思ってなのか、僕自身の保身的な意味で生きていて欲しいのかは、自分でもよく分からなかった。

「…落ち着きましたか?一体何があったんです、どうして貴方は此処にいるのです?」

そうだ。自分はどうして此処に来たんだろう。思い返せば、自分とそっくりな人影を追って此処に来た。ってことは彼女を殺そうとしたのはあの僕に似た人影なのか?でもそんな筈はない。だって人影は彼女の方を指差していた。本当に彼が犯人なら、死にそうな彼女を隠す筈だ。でも、もし本当に彼が犯人なら?僕とそっくりなことを利用して僕に罪を擦り付けようとしたのかもしれない。

 何もかも分からなくなってきた為、正直に全てを話た方が早いと思った。

「…人影を追って来たんです。」

「人影?その人影をおった先で、ダーさんが倒れていたんですね?」

「はい…信じてくれないかもしれませんが、その人影が僕に凄く似ていたんです。だから、それでかもしれないですけど、着物を着た女の人が僕の直ぐ後に此処に来て、僕がやったと勘違いされたんです。」

「…それって単に照葉君とダーさんを見ての判断でってことですよね?その人はどんな容姿でしたか。」

「舞妓さんみたいな人です。」

「舞妓、?」

「かんざしをしていて、着物で、紅が濃い…」

「あぁ、"巽"さんですね。」

「え?」

「その人はソンさんと言い、風を操る八卦の一人です。」

確かにやたらと風が吹いていたような。でも、そんなことが分かっても現状は一向に良くならない。彼女が八卦というなら、彼女の言っていた報告というのは何度か盗聴したことがある八卦の会議での事だろう。そんなことをされては、人間の存在もばれるし、八卦を殺したというレッテルにより今度こそ生きてはいけないかも知れない。唯でさえ自分を本気で殺そうとしている人だっているのに。

「大丈夫です。僕は貴方が犯人だとは思ってはいません。」

 僕は唯、唯唯平和に事が終わることを願っていた。

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