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僕を拾った八人の使者  作者: 夕暮 瑞樹
僕の居場所
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第十話 僕の居場所

 カンさんの家を逃げ出して約数日。コンさんやカンさんとは一向に連絡がつかない。ゴンさんはたまに外に出ては食料を持ってきてくれて、僕も手伝うと言ったが決して外へ出してはくれなかった。いくらゴンさんの付き添いでも、守りきれる保証がないのだという。守ってくれるのはありがたいんだけど、これじゃあまるで監禁だ。適当に木登りでもしてみようかと思い、一番近くにあった木を登ってみれば、周りの景色が良く見えた。カンさんの家の方角を見ると、まだ黒煙が上がっている。そして反対側を見ると、

「わぁっ!?」

目の前にはなんとイヌイさんがいた。

「お久しぶり、元気?」

「元気ですけど。」

「あれ、カンの家だよね。何かあったの?」

イヌイさんはきっと黒煙のことを言っているのだろう。僕はありのままを話した。僕の所為でカンさんがリーさんから狙われていることや、ゴンさんと一緒にいること、コンさんはカンさんと一緒にいること。

「そうか。君はどうしたいんだい。」

「助けに行きたいです。」

「何もできないのに?」

「そ、それは…。」

確かにそうだ。何もできない僕が行っても、唯足手まといになるだけだ。

「イヌイさんなら、どうするんですか。」

「俺?俺なら…唯見てる。」

「え?」

「…。」

その時、下からゴンさんの呼ぶ声が聞こえた。急いで下に降りないと。イヌイさんに別れを告げようと一度下を見た顔を上に向けると、またもやそこには誰もいなかった。

「…?」

「おい、照葉?」

「あ!僕は此処です、今行きます!」

「あぁ、上にいたのか。」

イヌイさんには、イヌイさんに関しては誰にも言うなと言われたけど、今回もそうなのかな。兎に角、今はそっとしておこうと思った。

「コンさん達、無事ですか?」

「それがな…。」

「え?」

まさか、と思った瞬間、後ろから誰かに抱きつかれた。

「やぁ!元気にしてたかイ?」

「コンさん!?」

「僕達は無事ですよ。」

「良かった…でも何で、」

「何か急に雨が降ってきてサ。リーは雨に弱いからネェ。」

「リーさんが弱っている時にコン君が土埃を上げてくれたおかげで逃げられたんです。」

久しぶりの賑やかさに、涙が出てきそうになる。

「どしたノ?ゴンに何かされた?」

「いえ、」

「馬鹿!俺は何もしてないぞ。」

その言葉の通り何もしさせてくれなかったけどね。凄く暇だっだけどね。でもまたこの空間に帰ってこられるなら、あんな苦労やこんな苦労も容易いことだ。

「そういえば、カンさんの家は大丈夫何ですか?」

「それがですね。全く大丈夫じゃないんです。」

「全焼だヨ、全焼。アハハハハ。」

「本当に、よくやってくれましたよ。」

「すいません!僕の所為で、」

「いやぁ気にしなくて良いヨ、僕の家が空いてるんだかラ。」

「…まさか一緒に住もうなんて考えていませんよね?」

「じゃあ君何処に住むの?」

「…。」

発狂しそうなカンさんを他所に、コンさんは疲れた身体を癒そうと寝転がる。ゴンさんもそれに続き寝転がり、カンさん以外の一同は穏やかな休息をとった。

 なんやかんやでその日一日は秘密基地に泊まり、朝を待ってからコンさんらの家に行くことにした。またリーさんが来る可能性があるんじゃないかと思ったが、彼女はコンさんらの家を知らないらしい。唯、油断はできないそうで、聞くところによるとリーさんは僕を探し、殺そうとしている。理由は分からないがあれは本気だそうだ。

「本当に、この世界に人間はいちゃ駄目なんですね。」

「…そうなんだろうネ。何でかは知らないケド。」

「知らないんですか?」

「知らないヨ。ゴンは知ってる?」

「知らないな。」

「僕も…知りません。」

じゃあイヌイさんなら知っているのかな。またあったら聞いてみよう。というかイヌイさんは人間なのに一人でいて大丈夫なのかな。まぁ大丈夫か、空飛べるもんね。…ん?何で空飛べるの?人間なのに?何かいけないことに気付いてしまった気がする。僕は迷いに迷った末、恐る恐る口にすることに決めた。

「あの、イヌイさんって知ってますか。」

「誰、ソレ。」

「聞いたことねぇな。」

知らないのか。じゃあやっぱり八卦ではないんだな。

「その人がどうかしたんですか?」

「いえ、この前偶然会ったんです。実は僕、あの時リーさんに見つかってしまって追いかけられていたんです。その流れで崖から落ちてしまって、気が付くと知らない場所で。そしたらイヌイさんという方が現れて、助けてくれたんです。」

「ヘェ…。」

「でも、ちょっと気になることがあって。その人、人間だって言ってはいたんですけど、空飛べるんです。」

「え、人間って空飛べんのか?」

「飛べるわけないですよ!だからおかしいんですって。」

「本当にその人に助けてくれたんですか。」

「本当ですよ。」

まさか僕の勝手な幻覚だと思われているのかな。確かにそう思われるのは無理もないけど。

「まぁ、また今度紹介してヨ。」

「そうだな、また今度な。とりあえず一旦家に帰ろうぜ。ずっと此処にいて疲れただろ?」

「そうですね。もう朝ですし行くとしましょう。」

確かに、外へ出てみると日が昇っている最中で、空のグラデーションが綺麗だった。久しぶりに森を抜け出し、四人で帰路を散歩する。コンさんらは、僕とは共有できないこの場所の懐かしさについての話をずっと続けていた。神の使いと言えど、元は人間というイヌイさんの教えは、決して間違いではなかった。

 しばらくあるくと、あの懐かしの小さな小屋が見えてきた。短い間だったけれど、此方の世界に初めて来た時の思い出が甦る。また此処でお世話になるとは。勿論向こうの世界に帰りたいという希望は持っているも、もう此処で過ごしたいという願望もある。家にたった一人のお兄ちゃんには申し訳ないけれど、此方の世界は中々飽きないものである。命の危険は付き物だけどね。

「久々だな。」

「僕はもっと久々ですよ。もう何年前の事だか。」

「変わんないデショ?」

「いや、何か小さくなってません?」

「そんなことないヨ。きっと身体が大きくなったからってそうでもないカ。」

「何か言いましたか。」

「いえ、言ってませン。」

僕が早速家に入ろうとするとゴンさんに止められた。振り返ってみると、何故か皆家から遠ざかっている。

「此処じゃないんですか?」

「まぁ見てろって。」

そういうとゴンさんは一気に家を壊した。元は木でできた小屋に過ぎない為地盤を動かせば壊れるのは一瞬だ。ぼろぼろになった木材はカンさんが水で流してしまう。すると今度はコンさんが何時用意したのか、新しい木の板と土を混合させ、あっという間に大きな家を造る。カンさんの家と同じくらい大きな家がこんなに簡単に出来てしまうなんて。その力を人間に分けて上げてほしい。人間なんて一件家を建てるのに何日かかることか。もし建設関係の人がこれを見たらきっと大騒動になるだろう。

「今日から僕らの家はこれダ!」

「四人で住むんだからこうじゃないとな。」

ぶっ飛んだ彼らのサプライズは、またもや僕をこの世界に漬け込んでいった。

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