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俺が光源氏に……?  作者: 入江 涼子
光源氏四歳編
9/15

九話

久しぶりの投稿です。

お待たせしました(_ _)

 俺は父帝に抱っこされながらも弘徽殿にたどり着いた。


 女房が驚きながらも出迎えてくれる。以前にも応対してくれた人だ。


「……まあまあ。光の君。主上(うえ)とご一緒だったんですね」


「うん。父上も女御様とお話がしたいんだって」


「わかりました。女御様にお伝えしてきますね」


 女房が奥に入ると俺は父帝に小声で言った。


「……父上。先帝の四の姫宮の事はご存知でしょうか?」


「……噂には聞いたが。それがどうかしたのか?」


「実は。俺は女御様と昨日にその事で話し合っていました」


「そうだったのか。して。女御は何と?」


「姫宮には兄上――東宮様に入内していただくのが良いのではとおっしゃっていました」


 父帝は俺がそう言うと難しい顔をした。考え込んでいるらしい。


「……東宮にか。まあ、その方がいいだろうな」


「……父上?」


「いや。ちょっとな。光。東宮はお前より三つ程上だが。姫宮はもっと上だぞ」


 父帝は渋い顔で言う。年齢の事をいいたいらしい。


「確かに。姫宮様は俺より五つ上でいらっしゃいましたね」


「まあ、そうだな」


「なら。兄上にはもってこいのお相手じゃないですか」


 にっこり笑って言ったが。父帝は余計に渋い顔になる。どうしたのか。


「……いや。姫宮に不満はないんだが。ただ、噂を聞いてな」


「噂ですか?」


「ああ。どうやら。姫宮には不思議な力があるらしくてな。確か予知ができるとか言っていたぞ」


 ……予知だって?どういう事だ。

 俺はあまりの事に目を見開いた。予想だにしていなかったのもある。父帝は「言わんこっちゃない」という表情だ。苦笑いしながら俺を降ろした。


「……そうなんですね。なら。兄上の妃になられるよりは。斎王にでもなられた方がいいでしょう」


「まあ。その方がいいだろうな」


「けど。ご母后がお元気なら入内や斎王の件は立消えになるでしょうか」


「……そうなるだろう。が。ご母后は去年から体調がどうやら優れぬと聞いたが」


「はあ。なら。今後はどうなるかわかりませんね」


 確かにと父帝は頷いた。俺はため息をつく。藤壺についてとりあえずは麗子さん――弘徽殿女御と話し合う必要がある。先日もしたが。もっと詰めていったほうが良さそうだ。そう思いながらも女房が戻るのを待った。


 しばらくして女房がやってきた。返事は「良い」との事だ。俺を抱っこしたまま、父帝は弘徽殿の中に入る。奥に行くとやっと降ろしてもらえた。御簾の向こうから人の気配とお香の薫りがする。


「……あら。主上(うえ)に光の君。お二方揃っていらっしゃるとは。珍しいですね」


「……ああ。女御。久しぶりだな」


「ええ。今日はいかがなさいましたか?」


 麗子さんが言うので父帝は居住まいを正した。


「うむ。ちょっと人払いを頼みたいんだが」


「わかりました。皆、主上と光の君、わたくし以外は退がりなさい」


 麗子さんが言うと女房達は静かに退出していく。人の気配が無くなるとおもむろに父帝は口火を切った。


「……女御。今ならいいだろう。先帝の四の姫宮についてなんだが」


「ああ。昨日辺りに光の君が話していましたね」


「それは光からも聞いた。女御は姫宮のご母后が体調を悪くしておられるのは知っているだろう。となるとだ。姫宮の後見を考えれば、後宮に入内も視野に入れた方がいいだろうと思うのだが」


「そうですね。わたくしもそれは賛成です。ただ、姫宮様はまだ十歳にもなっておられないでしょう。主上の妃になって頂こうにもお年が離れ過ぎているきらいがあります」


「だろうな。となると。やはり東宮の妃が一番良いか」


 父帝はそう言うとため息をつく。俺はやはり兄の妃が一番妥当かと思う。だってそうしないと俺や麗子さん――弘徽殿女御が困るし。姫宮の今後は父帝の判断に委ねられているといっても過言ではない。


「……そうですね。わたくしも東宮のお妃になって頂けたら。色々と手助けもさせていただきやすいですから」


「わかった。東宮の妃になってもらえないかをご母后に打診してみる」


「まあ、良いお返事は頂けないでしょうけど」


「それでもやってみる価値はあると思うぞ」


「ええ。姫宮様も東宮のお遊び相手にと申し上げれば。是とおっしゃるやもしれませんね」


 麗子さんが言うと父帝は苦笑いした。俺はやっと一段落したかと思った。


「……光の君。難しい話をしたから疲れたでしょう。今からわたくしや主上と梨壺へ行きませんか?」


「いいんですか?」


「ええ。光の君は東宮と絵の講義をなさったらいいわ。わたくしは主上ともう少しお話を詰めたいですし」


「わかった。なら。行こう」


「ふふ。主上も乗り気でいらっしゃるし。わたくしは光の君と一緒に行きますから」


「ああ。私は先に行くとするか。ではな。光、女御」


 父帝はそう言うと弘徽殿を後にした。俺は御簾の中から出てきた麗子さんと二人で梨壺に向かった。


 その後、梨壺に着くと父帝は兄と何やら楽しげに話していた。麗子さんと顔を見合わせる。


「……あ。母上に光。来てくれたんですね」


「……ええ。宮。今日はお加減がよろしいようですね」


「はい。今日は父上が久しぶりにいらしたので。ちょっとだけお話をしていました」


「そう。ようございました。わたくしはこれから主上とお話があります。光の君とお留守番をお願いできますか?」


「わかりました。しばらく光とお絵描きをしていますね」


 麗子さんが言うと兄は頷いた。俺は一礼する。父帝と麗子さんは二人で別室に行く。兄にまた絵についてレクチャーをしてもらうのだった。


 

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