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リーン君の大冒険?  作者: 白雲
第2章 少年期
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翌朝、リーンはエマ達に料理を教わりながら朝食の用意のお手伝い。ケネスは二日酔いのニコラスのために調薬、セオは外でネイトと手合わせをしている。

イワンは周辺を見回ってくると出ていった。昨夜ニコラスと一緒に呑んでいたはずなのに元気だ。


「ごめんねぇ、出発の前なのに二日酔いの面倒まで」

「ふふ。大丈夫だよ」

エマの言葉に笑って答える。調薬ついでに足も診ておくと言っていた。大丈夫だとは思うけど、リーンが未だに気にしていることに気付いていたのだろう。

ありがたいことだと微笑みながら玉ねぎを刻む。

風魔法で顔の前をガードすれば目も鼻も痛くならない。初戦で敗退して以来玉ねぎ相手に負けたことは無いのだ。



それよりもセオの手合わせだ。首チョンパはさすがに無いだろうがどこか骨でも折ってないかとソワソワする。

そんな様子のリーンを周りの女性陣がクスクス笑って見ていた。

「リーン君リーン君」

「うん?」

「それ、何に使うの?」

エマに肩をつつかれて手元を見ると玉ねぎのみじん切りが山盛り。……やってしまった。

「えっと。ごめんなさい」

「あははは。ここはもうほとんど終わりだから、ネイトとセオ君呼びに行っといで」

何を気にしているのか見透かされているらしい。背中をバンバン叩きながら言われて眉を下げて頷いた。




中庭に近付くと木剣の小気味良い音が聞こえてくる。どっちも無事なようだとホッとしながら歩いていく。

「わ」

手合わせは淡々と行われていた。

手合わせというより稽古なのだろう。一方が攻撃してもう一方が防ぐ、その動作を延々と高速で繰り返していた。

目で追うのがなかなか難しいと思いながら見ていると二人が最後に剣を打ち合わせて距離をとった。

息ピッタリの動きに拍手を贈る。


「飯か」

「あぁ〜くっそ。息も乱さねぇのかよ」

セオは平然としていてネイトは肩で息をしている。リーンからすればあれだけ動いて息を乱す程度というのは充分凄いのだが。セオがおかしいのはいつものことだ。

「二人共お疲れ様。もうすぐご飯だよ」

玉ねぎのみじん切りどうなったかな。




怪我人もなく無事手合わせが終わりニコラスも復活した。

イワンも大きな鹿型の魔物を持って帰り宿代だとボートン家に進呈してとても喜ばれた。

和やかな空気で皆で朝食を食べていよいよ出発。

ちなみに玉ねぎはスープと巨大オムレツに使われていた。


「お世話になりました」

いつかと同じセリフを伝えるとニコラスがまた苦笑する。

「こちらこそ、だな。結局また薬師殿の世話になってしまった」

「またいつでもいらっしゃい」

「次はコテンパンに伸してやる」

ニコラスの娘のアナがセオの脚にぎゅうっと抱きついて涙目になっているのに苦笑する。最終的に大泣きされてしまったがまた来るからと約束してようやく馬に乗れた。


「罪な男だねぇ〜」

失言したどこかの誰かはつむじをぐりぐりされていたが。

それぞれに手を振り馬を進ませる。ボートン家の皆は見えなくなるまで手を振り続けてくれていた。





「旅も終わりかぁ〜」

「うん。また来年」

「帰ったらスキル調べるか」

そうだ。スキル辞典を買ったのにいろいろと忙しくてまだ調べていない。

「秘密基地に木も植えなきゃね〜」

帰っても楽しみがまだたくさん残っている。皆にお土産もあげて、と考えているとイワンがリーンの肩を叩いた。


「皆さん、お迎えです」

笑いを含んだその声に前方に視線を向けると軽装ながらしっかりと武装した集団が見えた。先頭の男がこちらに手を振り笑顔で走ってくる。

「師匠!」

「わ〜皆いるじゃん」

「狩りはいいのかよ」


彼ら自身が迎えに来たかったのもあるが、なによりもドランが迎えに行くと騒いだのを止めた結果だそうだ。

それを聞いて呆れた顔になる面々とクスクス笑うリーン。

早くお家に帰ろう。



迎えに来てくれた中にウォードもいたのだが、親子は拳をゴツンとぶつけただけで特に会話も無かった。

なにあれかっこいい。後で真似しようとウンウン頷いていたら微妙な顔のケネスに首を振られた。





そのまま豪華な護衛を引き連れて残り僅かの道程を進み、適当なところで昼休憩。

狩人達がわっと散開してあっという間にそれぞれ獲物を捕ってきたのには笑った。この感じ、懐かしい。

洒落た料理ではなく豪快に肉を焼いてかぶりつく。スープも野菜と肉がゴロゴロしているごった煮だ。


「Cランク冒険サマ、なぁ」

「んう?」

隣に座ったラウロがしげしげと首のプレートを覗き込んで呟くのに返事をしたら、噛み付いていた肉をセオに離され「喉に詰まらせんぞ」と口元を拭かれた。水も手渡される。

相変わらずお母さんだ。

セオにお礼を言っていると隣からくつくつという笑い声。

「おめぇらは変わんねぇな」

「冒険者なったからって別に何も変わんないでしょ〜」

「だぁよな」

ケネスの言葉に更に笑っている。

三人で顔を見合わせて首を傾げると頭をポンポンされた。

「変わんじゃねぇぞ。そのまんま」

よく分からないが特に変わる予定も無いので頷いた。満足そうに笑って食事を再開するラウロに再度首を傾げる。


「ほれ、たんと食いな」

ジャネットに声をかけられ目の前に視線を戻すと黒くてグロテスクななにか。切り分けてくれてるけど……これ何。

絶望の表情で切り分けられるなにかを見つめるセオ。顔を引き攣らせるケネス。ニコニコ首を傾げるリーン。

「特別にアタシの手料理だ。味わって食えよ!」

ガハハハと笑うジャネット。やっぱりそういうことらしい。


あれ。二年前の旅の時は普通に美味しい料理作って……いや一人で料理しているのは見ていない。

周囲の狩人達が無言で手を合わせて拝んでいる。三人は覚悟を決めた。



Cランク冒険者ならばその稼ぎだけで充分に暮らしていける。三人は子供だが、もういつでも自立できるし実際に村の誰よりも稼ぎという点では多いだろう。だから何かしら変化があるかと思ったのだが。

言うまでもなくこいつらは変わらねぇなとラウロはまたひとりくつくつと笑った。




ようやく村が見えてきた。

昼食でちょっとしたハプニングはあったが問題ない。味はマッタリネットリとしていて甘くて塩辛くて生臭かった。

食べる勇気が無くなりそうで鑑定はしていない。

『出された食事は笑顔で食べる』が信条のリーンでもなかなかに厳しい戦いだったが乗り切った。ジャネットがいなくなった後即座にラウロに回復魔法をかけられたが。



村の入口にたくさんの人がいるのが見える。一際小さな人影が飛び出して走ってきた。

「にぃぃちゃぁぁぁ!!」

空気の足場を蹴り上げて風を纏い滑るように飛ぶ。小さな人影が転ぶ直前にキャッチしてぎゅうぎゅう抱きしめた。

「オズ、ただいま」

「にいちゃ、あぁ〜〜〜!」

大泣きし始めてしまったオズの頭をヨシヨシと撫でているとドランがやってきてオズごとリーンを抱き上げた。


「おかえり。リーン」

「おかえりなさい。元気そうね」

ミリアも来て皆まとめてハグしてくれた。リーンも満面の笑みで答える。

「うん。ただいま!」



辺りではセオやケネスも家族に囲まれている。皆笑顔だ。

「よし。今日は広場で酒と料理を振舞うぞ!」

ドランの言葉にわっと歓声が上がった。お祭りでもないのにいいんだろうかとミリアを見ると苦笑して頷いている。




この日広場でのどんちゃん騒ぎは夜遅くまで続き、翌朝ケネスとオババの息子が二日酔いの薬を配って歩いた。



お客様に猫が障子にポスっと頭突きして穴を開けた話を聞き、なにそれ可愛い!と思って犬の話を書き始めました。猫じゃねぇのかよ。


こちらよりもハードモードですが、お好みに合いましたらそちらもよろしくお願いします。

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