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リーン君の大冒険?  作者: 白雲
第2章 少年期
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「とりあえずお前ら三人ギルドに登録しろ」

ギルド長は三人がわちゃわちゃしてる間に立派な机に移動して何か書類を書いていたらしい。呆れたような視線と共に声をかけられた。ため息付き。

だが登録しろと言われても冒険者登録ができるのは十歳からの筈だ。さっき年齢を答えたのにと首を傾げる。


「今回の件だけならともかく、基本一般人相手じゃ何もできねぇよ。特例で登録してやるからとっととランク上げろ」

ランクが上がるまではどこかからちょっかいを出されても何とかしてやるからランクが上がったら自力でどうにかしろという事らしい。

さっき書いていた書類を渡される。特例措置により以下の者の登録を許可するという文章と三人の名前、一番下にギルド長のサインが入っていた。



「確かにその方が確実ですね。猶予期間が若干問題と言えば問題ですが……」

「猶予期間」

「ランクごとに一定の猶予期間があり、その期間内にランクに応じた依頼を達成しなければなりません。達成できなければランクが下がり、更にそれが続けば登録が抹消されます」

そういう仕組みになっているのかとイワンの言葉に頷く。冒険者登録をしているだけで税の免除などの恩恵があるので当然の措置だろう。

ちなみに税の免除と言っても依頼料や素材の売買金額から自動的に引かれているので冒険者も払ってはいる。高額依頼を達成する高ランク冒険者達がより多くの税金を支払うという理にかなったシステムだ。



「とりあえず今回の滞在中に最低Dランクまで上げろ。そうすりゃ猶予期間は半年、Cランク以上なら一年だ」

登録したての冒険者のランクはGランク。最低でもそこから三つ上げなければならない。いや、次にいつここに来れるのか分からない事を考えると出来ればCランクまで上げておきたいけれど……。

「できんだろ?」

「まあ、それは問題無いでしょう」

何故かイワンが自信満々に答えている。


ランクを上げるための条件など分からないが、イワンができると言っているので少なくともDランクまでは大丈夫なのだろう。それに猶予期間については長距離転移で何とかなるかもしれない。

「ふふ。冒険者だって」

「予定外だけどねぇ」

「早くなっただけだろ」

三人で顔を見合わせて笑いハイタッチした。



こうしてこの日小さな規格外の冒険者パーティが誕生した。




------------------------------




夜、宿で美味しい夕食をゆっくり食べて部屋に戻った。

ドラン達への報告も済ませたしお風呂にも入ったので、もう後は寝るだけだ。

「冒険者、かぁ」

受付で貰った木のプレートを見ながらニマニマ笑う。プレートにはリーンの名前と『Grank』の刻印。

Gランクはほぼ見習いのような扱いで基本的には採取依頼を受けたり他の冒険者パーティの荷物持ちをしたりするらしい。プレートも普通は石や金属製だがこのランクは木、一つ上のFランクは革で出来ていてどちらも単独でダンジョンに入る事は許されない。

それでも、三人にとっては憧れが形となった物だ。

数年後じゃなければ手にすることが出来ないと思っていたのもあって何度も見てしまう。



「ふふ、ふ、リーンが受付カウンターに行った時の反応」

「周り全部口開けてたな」

またケネスがプルプルしている。


あの後役人が置いていった報酬の他にアマート達からも依頼の助力に対する報酬を受け取った。そこでもアマートが全財産貢ぐと言い出してザラにゴーサインを出された猟犬が再び飛びかかって沈めるという一幕があったが。

エルフスキーというのはエルフという種族を応援?する人達の事を言うらしい。エルフでは無いと言ったけど聞いてくれなかったので諦めた。害は無さそうだし応援されよう。



ケネスが思い出し笑いしているのはその後の事だ。

そのまま一階に行きギルド長に貰った書類を受付カウンターに出して「登録お願いします」と言ったら受付の人も含めてフロアにいた人全員が口をポカンと開けて停止した。

報酬を受け取った冒険者達で賑わっていてザワザワとしていたのに。

急にシーンとした空間でケネスが笑いを堪えセオがため息を吐き、リーンは困った顔で首を傾げた。



受付の職員が出された書類に気付き「ギルド長の許可が出ているので問題ありません」と言うと途端にドっと沸いた。

「おいギルド長の許可だとよ」

「ちっせーなぁ」

「マジで?あれが戦うん?」

「あれ矢継ぎ早の弓使いじゃねーか」


どうも門前でリーン達を見ていた人もいたらしく、更に神業を見せた弓使いが子供だったと噂になっていたので案外あっさり受け入れられた。もっといちゃもんをつけられたりすると思っていたのに拍子抜けだ。

ちなみに土魔法使いは『謎の凄腕』だそうだ。誰が使った魔法なのか分からなかったようなので黙っていよう。

結果的にリーンはゴツイおっさん達に撫でくりまわされて何か困ったら言えよと口々に言われた。大歓迎だった。



「なんだか冒険者の人達、狩人さん達みたいだった」

「あー……脳筋っていう同じ種族だからぁ」

「否定はしねえ」

ふふふと笑って言うリーンにケネス達も苦笑する。確かに彼らの空気は慣れ親しんだものとよく似ていた。

「さあ、明日は教会に行って依頼も受けるのでしょう?冒険者の資本は健康的な肉体です。もうお休みください」

イワンの言葉にそれぞれ返事をして毛布に潜り込む。



今日一日は本当にいろんな事があって目まぐるしい速度で過ぎていった。

魔物達のスタンピードに防衛戦、びよん達のご飯の話や冒険者ギルドでのあれこれ。様々な人に会い様々な事を知った。

そして、冒険者としての新たなスタート。


明日は……明日もきっとたくさんの事があるだろう。まずは朝一で教会へ行ってスキルを調べて、その後ギルドに行って依頼を受けて。

(あ。アマートさん達が明日は初仕事のお祝いに夕食をご馳走してくれるって言ってた。宿の女将さんに夕食要らないって言っとかなきゃ。そういえばヨーシフさんにびよん達の話をもっと詳しく……)

そこまで考えたところでリーンの意識は夢の中へと旅立った。夢の中では初依頼で三人とびよん達で走り回り何故か狩人達が周りにいて頑張れ頑張れと応援してくれている。




三人共いい夢を見ているらしく口元をモゴモゴさせて楽しそうな顔で寝ている。イワンはクスリと笑い唯一ついていた窓辺のロウソクの火を消して自分もベッドに入った。


初依頼にこっそりついていって見守るようにと過保護などこかの誰かから指示がきた。明日は自分も忙しくなりそうだ。



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