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リーン君の大冒険?  作者: 白雲
第1章 幼児期
8/94

8

「これ……!これすごい!すごくかっこいい!」

大興奮である。

見せてくれた枝というか杖は片側の端にT字になるように斜めに持ち手が加工してあり、それでも自然の造形美は失っていない。つまり、とてもかっこいい。

惜しむらくは、いい感じなのはあくまでセオが持った場合の話だという事。枝の片側を地面につけるとリーンの顎の高さ程もあるので、リーンには長すぎる。



鋭い視線は変わらず、でもちょっと得意げにフフンと笑うセオ。なんか強者感に溢れている。

リーンがキラキラした瞳で見上げると、右手に抱えていた枯れ枝を地面に下ろし、しゃがみこんで結わえていた縄を解き始めた。

「お前チビだからな。この辺のがいいんじゃねえか」

ガラガラと枝の塊を崩して、先程目をつけた枝かどうかはわからないが、文句なくかっこいい形でリーンに丁度いい長さの枝を選んでくれた。



「わぁ。これ、くれるの?」

とても、とても期待したキラキラした瞳でセオの鋭い瞳を見つめる。

「ちゃんと加工したらな。お前コレ、このまま持って転んだらあぶねえだろ。ヤスリかけなきゃトゲも刺さる。お前の手、やわそうだし」

先程から見ていた中で一番の眉間のシワと一番の眼光で言われた。


パチクリと大きな瞳を瞬いて、次には満面の笑みで、ふふ、ふふふと笑い声を漏らした。

凄く怖い顔で凄く心配されている。しかも気遣いが細かい。



「おい」

睨まれた。

「ふふ、ごめんね。すごくうれしいなっておもったの」

ニコニコとリーンが答える。

「……そうか。加工したら家に持って行ってやる」

耳を赤くして、明後日の方向を睨みながらボソボソと話す声が聞こえる。

それにまたニコリと笑って答えた。

「うん、ありがとう。たのしみ」



これがセオとリーンの友情の始まり。

セオはその鋭すぎる眼光と、周囲の狩人達の影響による荒い話し方の合わせ技で子供達に敬遠されていた。

ちょっと照れ屋な性格のせいで割と、いやかなり世話焼きな言動も誤解される事が多くリーンが生まれて初めての友人となった。


これは数年、数十年経った後でも、なんなら死ぬまで誰にも言ってないが実はこの日、家に帰ってちょっとだけ泣いた。



かっこいい枝のご縁だとリーンは後に語る。

セオにも異存は無い。

セオはまだ、この頼りになるんだかならないんだかよくわからないポヤポヤした友人に、この先数十年単位で世話を焼く事になるとは微塵も思っていない。




------------------------------




セオに手を振って別れキャシー達のところへ戻ると、風船のように頬を膨らませたキャシーと嬉しそうに笑うイワンが迎えてくれた。


イワンは孤高の雰囲気を全身から放っているセオが、別に好きで孤高でいる訳じゃないのを知っていたのだ。セオの父親とも交流があり昔から不憫に思ってはいたが、大人がどうこう出来る事では無いため困っていた。



「お友達が出来ましたね。おめでとうございます」

ニコリと笑って頷くと、キャシーが益々頬を膨らませた。

リーンはギョッとして、パンッと破裂するんじゃないかと慌ててキャシーのご機嫌をとる。

「おいていってごめん。こんどは、キャシーがいきたいところにいこう。……ね?」

へにょりと眉を下げて、実の父親ばりの情けない顔をキャシーに向けた。



兄のあまりに情けない顔に溜飲を下げたのか、元々タレ目のリーンがそんな顔をするとなんかこう、いたたまれない感じを受けるのか。とにかくキャシーのご機嫌を回復させる事に成功した。


キャシーのリクエストはお花畑。

先程まで殺し屋か野生の獣かという眼光を正面から見つめていただけに、よりいっそう可愛らしく感じる。

キャシーが言うには、ここから農地に向かう途中の道を少し逸れると青い小さな花の群生地があるらしい。

情報源は家の使用人さん達。



少し歩くみたいだけど、どうだろう。

場所知ってるかな?とイワンを見上げると、ニコリと笑って頷いてくれた。問題ないようだ。


よし。次は小さなお姫様のお願いを叶えるために、出発。

また二人で手を繋いでニコニコと歩みを再開した。



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