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リーン君の大冒険?  作者: 白雲
第2章 少年期
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「あの男はこの街に人生捧げてるような気狂いでなぁ。有能な駒として手元に欲しかったんじゃねーの」

ガキならこれからいくらでも躾できるし、とお茶を啜りながらギルド長が教えてくれた。イワンから一番遠い席に座っている。

あの目はそういう意味だったのかと納得した。

「こんな子供らに何させようってんだか」

ヨーシフがため息を吐いて眉をひそめている。この商人はどうやら随分と子供好きらしい。さっきはありがとうとお礼を言うと目を細めて頭を撫でてくれた。


そして役人達は帰ったがアマート達はまだ室内にいた。ザラの睨んでくる視線がそろそろ痛い。



「ねぇちょっと。あんな事ができるなら穴からパウル出すなんて簡単だった筈よね」

「うん」

ザラの言葉に素直に頷く。

「ザーラー、まぁだそんな事」

「いいから黙ってて」

アマートの言葉をピシャリと遮ってザラが続ける。パウルはアタフタしているが止めようとはしない。

「じゃあなんであの時は知らんぷりして今回は手を貸したのよ。大勢の前で力見せびらかしたかった訳?」

「んー。今回の方が手を出したくなかったけど」

「はぁ!?」

身を乗り出すザラをさすがにパウルが止める。



「僕の妹は珍しいスキルを持ってたから侯爵様のところに行ってしまって。それが悪いことだとは思わないけど。僕は、僕達は自由でいたいから権力を持つ人達に目をつけられるのはちょっと」

ふざけて落ちた人を助ける為にリスクを負いたくなかったと言うとザラが気色ばんで鼻で笑う。

「大層な事を言うけど、自信過剰なんじゃないの」

「坊ちゃんは十種以上の属性を扱いますよ。その質も高い。充分に警戒するべきです。あ、後で誓約魔法使って他言できないようにしてくださいね」

イワンが最後はギルド長に向かって言う。


「やっぱり!!」

向かい側に座っていたアマートが突然笑顔全開で叫んで立ち上がった。リーンがびっくりして瞳を瞬く。

「あれ結界だよね?エルフだよね?だよね?俺の目に狂いは無かったー!」

更に叫びながらテーブルを乗り越え……イワンの教育的指導で吹っ飛んでった。



「おい変態。近寄んな」

「この人まともだと思ったのにぃ」

めげずにテーブルを回り込んできたアマートの前にセオとケネスが立ち即座にリーンを後ろに隠した。

「ちが、ちょ、握手!握手だけ」

「うるせえ」

「リーン、目合わせちゃダメだよぉ」

瞳をパチクリさせて攻防を見守っていると、ため息を吐いたザラがパウルに手振りで行けと示す。途端にパウルが猟犬のようにアマートに飛びかかって押さえ込んだ。

なんか、このパーティって。



ものすごく疲れた表情になったザラが頭を振ってリーン達の方に歩いてきた。

「ああもぉ。そっちの事情は分かったし、自分がガキみたいな駄々こねてたのは分かってた。収まりがつかなかったのよ。ごめんなさい」

そしてため息をもうひとつ。

「あと、うちのエルフスキーがほんとごめん」


急に冷静になったらしいザラと握手をして和解した。けど、エルフスキーってなんだろう。

「ザラずるいよー俺も握手〜」

パウルの筋肉の下で弱々しく主張するアマートを見て、人っていろんな側面があるんだなと思った。



「でも、イワンがギルド長さんと仲良しなんだったら、あそこでパウルさん助けてても問題無かったね」

あの時彼らが報告すると言っていたので余計に警戒したのだが、報告する相手はここにいるギルド長だ。

ちょっと悪いことしたかも。

「結果論ですよ。あの時は彼らの後ろに誰がいるのかなど分からなかったのですから」

「いや、まず仲良しじゃねぇって言うか。つーかなんでこんなとこにいるんです。この子らってまさかお子さん……」

イワンの言葉にじゃあいいかと頷くと、ギルド長が恐る恐る視線を向けてきた。ギルド長が敬語なんだけど。

「私が仕える方のご子息とそのご友人方です」

「ツカエル、カタ?…………仕える?魔王、とか?」


本当に、過去のイワンはいったい何をしたんだろう。





「あ〜、で?魔法特化のエルフと矢継ぎ早の弓使い、そっちの黒髪が近接か?」

ギルド長がお腹をさすりながら再度三人に視線を向ける。

さっき魔王発言の後に「ぐぅっ」と言って体をくの字にしてたので多分イワンにお仕置をされたんだろうけど、何も見えなかったので何をしたのかは分からない。結構距離が離れていたのにどうやって攻撃したのか。

イワンに視線を向けたらニコリと微笑まれた。



「ええ。彼はソロでC級の魔物を複数体討伐します」

「……は?」

「無傷で」

「…………」

ギルド長が凄い顔でセオを見ている。

魔物も冒険者と同じように強さごとに分けられているが、どの魔物が何級なのかなどはリーン達は詳しく知らない。ただ、魔物一体に対して同ランクの冒険者1パーティで相手をするのが適正だと聞いた事がある。

という事はセオは一人でCランクの冒険者パーティと同等以上という事だろうか。それは凄い。


「それと先日、彼ら三人でエダークスベアを瞬殺してます」

「それ、B級……」

「はい」

リーンがキラキラした視線をセオに向けケネスがドン引きしてる間もイワンとギルド長の会話は続いていた。

ベア?あの人喰い熊だろうか。何かかっこいい名前がついていたらしい。



「ちょっとあんたらおかしい」

「うわ。うわー俺らと同等って事?ヤバいヤバい」

「セオ君、後で手合わせしてほしい」

ザラが引き攣った顔で呟く後ろでアマート達二人は楽しそうに笑っている。パウルなんか輝く笑顔だ。穏やかで優しそうな印象だったがあの笑顔には戦闘狂の気配を感じる。


やっぱり人って第一印象だけじゃ分からないものだな、と頷いているとギルド長が頭を抱えて呻くのが聞こえた。

「お前らいくつだ」

「えっと。七歳」

「八歳だよぉ」

「同じ」

「ふざけんな。せめてあと十歳足せ!」

そんな無茶な。



ギルド長の横にイワンがスっと並ぶ。

「エンハの街のギルド長が後ろ盾になってくださってようございました。これで少しは安心ですね」

「了承してない!」

「歳のせいか耳が遠くて。もう一度、お願いします」

「…………イエ。光栄デス」

やっぱり仲良しなんじゃないかな。



何はともあれ、冒険者ギルドのギルド長と繋がりが出来た事はとても心強い。

それにBランクの冒険者パーティとも仲良く?なったし。

「坊ちゃんらは出世しそうだなぁ」

「ん~?どぉだろ。リーダーがのほほんとしてるからねぇ」

ヨーシフの言葉にケネスがリーンを見て言う。

「リーダー」

そんなの決めてたっけと首を傾げる。

「お前以外に誰がいんだよ」

「三人で冒険するって決めたのリーンじゃん」

つむじをグリグリされて脇腹をつつかれた。このダブル攻撃はちょっと。


どうにか逃げようとワタワタするリーンといい笑顔で追いかけ回すケネス。つむじ攻撃はやめてくれたが、頑張って逃げろと頷いて見守るセオ。

色々と騒動だらけの一日だったが結局最後はいつも通り。



で、話は終わらなかった。

この日の出来事は最後にもうひとつ。



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