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リーン君の大冒険?  作者: 白雲
第1章 幼児期
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7

いよいよこの時が来た。家を出て村の中の探検である。


と言っても村の人々に関しては、既にドランとミリアから顔役の数名に簡単な事情と夫婦の子供として育てる事を伝えてある。

ドランの評判は一時下がる、というかヒソヒソされるだろうが、その辺は自業自得だからと嘘偽りない事情を伝えた。

こういった村は住人の血縁者でもなければよそ者に酷く厳しい。リーンが貰われっ子などと悪口を言われ遠巻きにされるのは避けたかった。



そして今日の探検にはキャシーとイワンが一緒だ。

保護者付きの時点で探検……?と首を傾げるが、リーンにとっては見知らぬ場所への進出なので誰が何と言おうと探検。



かっこいい木の枝は間に合わなかったが仕方ない。今日の探検でいい出会いがあるかもしれないし。

リーンとキャシーはニコニコと手を繋いで歩く。

後ろには子供達との対比でいつもより三割増し巨人に見えるイワンが、こちらもにこやかに見守っている。



なんとも平和な空気を振りまく一行はあちらこちらで話しかけられた。

「おや、そちらが噂の坊ちゃんかい……ん?坊ちゃん?嬢ちゃんじゃなく?」

と二度見されたり、

「こりゃ可愛らしいね!おばさんがお菓子あげようねぇ」

とニコニコ話しかけられてリーンが突然警戒モードに入り、イワンに自分が知っている人なら大丈夫だと説得されたり。

なんだかんだありながら、テクテク歩いて行く。


この村は以前住んでいた村よりも大きくて、人もたくさん住んでいる。今日は農地まで見るのは無理だろう。




家の手伝いをしている子供達が興味津々といった様子でリーン達に視線を向けている。

ボケっと口を開けて見ていて親にゲンコツされているのはリーンと同じくらいの歳の男の子達だ。キャシーと仲がいい小さな女の子達は、寄ってきて自己紹介してキャラキャラと笑いながらパッと散って行く。賑やか。

周辺に見えるのよりも大きな子供達は日のあるうちは皆農地にいるらしい。



農家の子じゃないのも僅かに居て、そういう子達は大きくても村の中に居る事も多いと教えられる。

リーンの視界の左手奧から枯れ枝を両手で抱えて歩いてくる大きな男の子もそうだろう。リーンの二、三歳上ぐらいだろうか。十歳にはなっていないと思う。

「あ」

リーンがその大きな男の子を見て声を上げる。

彼が抱える枯れ枝の山にいい感じの、いい感じのとてもかっこいい枝があった。急いでキャシーにあの子に話しかけに行きたいと訴える。



「……セオ?は、こわいの。キャシーはおはなしいや」

ちょっと眉を顰めて、口を尖らせてキャシーが首を振る。

怖い?とは。

疑問に答えてくれそうなイワンをきょとりと見上げた。

「セオの家は狩人の家なのです。だからと言って乱暴者だとか、そんな事は無いのですが……」

イワンが困ったような顔で答える。


乱暴者では無いが怖がられる理由は何かあるらしい。でもイワンが関わってはいけないと言わないので、本当に危ない訳では無い。

なるほど。ウンウンと頷き、

「じゃあ、すこしまっていてね」

ニコリとキャシーに伝えて、かっこいい枝を譲ってほしいと交渉すべく繋いでいた手を離して走り出した。



「あー!」というキャシーの不満げな声が後ろから聞こえるが、追いかけては来ない。

そしてイワンも追いかけて来ないという事はやっぱり問題は無いのだろう。



キャシーの声で気付いたのか、セオが自分に向かって走って来る見知らぬ子供をじっと見ている。

肌は浅黒く、髪は黒。瞳の色はまだよく見えないが、早くもキャシーの "こわい" の意味がわかった。


とんでもなく目つきが悪い。子供なのに眉間にシワを寄せてこちらを睨んで(?)いる。

ただ、あまりにリーンの走る速度が遅かったからかリーンがぜえぜえ言い始めたからか、セオの方から若干早歩きでこちらに来てくれた。



「ハッハァ……ボク、リーン……ゲホッゲホッ…リーンって……」「ちょっと待て。落ち着け」

眉間にシワを寄せたまま、枯れ枝を右手一本で抱え直して左手で背中をさすってくれる。普通にいい人だ。

リーンが深呼吸しているのを鋭い視線で見守りながら、セオが再度口を開く。

「知ってる。村長さんちの子だろ。なんか用か。」


ちなみに見上げた瞳の色は金色だった。これは更に怖い。なんとなく肉食獣っぽい空気を醸し出している。

「えだを…」

「枝?」

もう一度深呼吸。やっと息が整った。

ニコリと笑って続ける。

「かっこいいかたちのえだ、もってるなっておもって」

セオの眉間に更なるシワが寄り、右手に抱えた枯れ枝にチラリと視線を向ける。そしてまたリーンに視線を戻し、ニコニコしている顔を見て金色の瞳を細めた。



そして徐ろに自分の背中の辺りをゴソゴソ探ると、なんと差し出したセオの左手には、これぞ理想形!と言わんばかりの素晴らしい枝?杖?が握られていた。

これ!冒険のやつ!



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