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リーン君の大冒険?  作者: 白雲
第2章 少年期
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長かった外出禁止が終わった。

早速念願の水遊び、といきたいところだが我慢して秘密基地で旅の準備だ。これもこれで楽しみだし。



まずは食料。セオにおすそ分けで貰ったスノウボアの肉を収納鞄に入れていたので干し肉を作る。収納鞄があるなら生肉で良いじゃないかなどと言ってはいけない。旅と言ったら干し肉なのだから。

本当はもう少し涼しくなってから作る方が良いのだけど。

夏は東から西に強い風が吹き、マルツ村の東側に南北に連なる山脈が雨雲をせき止めるのでとにかく空気が乾燥する。山脈から豊富に水が流れてくるので困りはしないが。

日向はジリジリ暑いけど日陰はひんやり。日陰でサッと乾燥させて燻製にすれば問題ないだろう。



塩や香草などを混ぜた特製調味料を揉みこんでワインに漬けておいた肉を出し、スライスして木の枝に刺していく。

出来上がった肉付き枝を倉庫の横に土で作った乾燥部屋の壁に掛け、部屋の中央に設置した大きな石に風魔法を付与。途端にぶわりとリーンの髪が巻き上がった。

いい感じ。このぐらいの風が吹いていれば虫も弾かれて入ってこれない。



「ねーリーン。テントってさぁ……」

乾燥部屋の入口からひょこっと中を覗いたケネスが見たのは髪の毛を四方八方に逆立たせ満足げにウンウン頷くリーン。

なんか、強そう。

口を閉じてするすると顔を引っ込めた。

強風で聞こえてないみたいだし。何故か干し肉作りに物凄く張り切っていたし。後にしよう。


「テントどうするって?」

「今はダメ」

「あ?」

リーンに頼まれて燻製用のチップを作っていたセオが首を傾げるが、ケネスはとりあえず今はダメと言い張った。

「そもそも干し肉要るのか?」

「…………」

言ってはいけない。旅と言えば干し肉なのだから。



「テントは使うなら貸してくれるでしょ〜。馬で行くなら野宿しないし。あ、でもタープぐらいは作っておく?」

「まあ、あったら便利だな」

ケネスの言葉にセオが背負い袋から大トカゲの革を出して差し出した。鞣すと軽くて丈夫な革になるので狩人達はこれは売らずに様々な物に加工して使う。

「えぇ。これこの前の」

「鞣す時間ねえだろ。去年狩ったやつだよ」

去年からあんな大物狩ってたのか。

ドン引きしながら有難く受け取った。そして三匹分もあってちょっと顔が引き攣った。




乾燥部屋を燻煙部屋に改装して、風魔法を消して火魔法を付与した石の上にチップを置く。

付与のスキルレベルが上がって硬い物に付与出来るようになったし、付与した効果を消す事も出来るようになった。前までは壊さなければ消せなかったのでとても便利だ。

嬉しそうに燻煙部屋を眺めるリーンにセオは「干し肉要らねえだろ」の言葉を飲み込んだ。



「あれ。そういえばケネスは?」

やっと干し肉から意識が逸れたらしい。きょとりと見上げる視線にセオが呆れた顔で竈がある方を指さした。

そちらにはリーンが外出禁止だった間に二人と狩人達が作ってくれた東屋があり、見ればケネスがテーブルに何かを広げて作業している。何をしているんだろう。



「ケネス、それ何?」

「あ、リーン。干し肉終わったのぉ?」

「ううん。燻してもう一回乾燥させたら終わり」

まだ工程あるんだ。

「それさっきの革か」

すかさずセオが話題を変える。笑顔で固まっていたケネスが再起動した。

「そうそう。タープ出来たから防水加工するとこ〜」


以前の蜂祭りで手に入れた巣を蜜蝋に加工していたので、それと木の実から取れる油を混ぜて塗るらしい。テーブルとベンチに跨って大きな長方形の黒っぽい革が広げてある。

何枚かの革を縫い合わせて大きな一枚にしてあり、端や角には細長い革で輪っかが作ってある。

「タープ」

「日除けだよぉ。木に吊るしたり棒立てたりして簡単に設置出来るし。あったら便利でしょ〜?」

そんな物があるんだ。確かに便利そう。



蜜蝋を溶かすと言うので、焼いた土の器にじんわり温かくなる付与をしたらとても喜ばれた。

防水加工するケネスとタープを設置する用の丁度いい枝を探してくると言うセオに手を振り燻煙部屋の前に戻る。

タープという物は使った事が無い。出発する頃も日差しはキツいだろうし重宝するだろう。出来上がりが楽しみだ。




お昼ご飯を食べた後リーンは干し肉の乾燥作業をし、ケネスは引き続きタープの防水加工。

防水加工は塗って乾かしてを何度か繰り返す必要があるのでリーンは干し肉の乾燥部屋と東屋を行ったり来たりとうろちょろした。風魔法で乾かすと早いのでお手伝い。

セオは何か草や木の皮、木の実で虫除けを作っていた。外で寝る時に燃やして使う用と肌に塗る用らしい。



「後はー……マントぐらい?」

この地方は夏も朝晩は涼しいのでマントは必需品だ。

「うん。野菜も果物も鞄に入ってるし。あとロープとかも足しとこう」

「大体の事は収納鞄で解決すんな」

収納鞄の便利さを改めて思い知る。作って良かった。

「そういえば結局移動は馬車なの?馬なの?」

「馬だって」

「お前馬乗れねえだろ」

「大丈夫。イワンが乗せてくれるから」

物理的に小さいのでこれは仕方ない。それと一応並足までは指示出来る。乗り降りは風魔法使用になるが。


「マントは雑貨屋さんで売ってるかな」

「材料あったら作るよぉ」

「ん。使えるもんあったら使え」

セオが背負い袋をケネスに渡す。色々と狩って加工したりしてなかったりする素材がたくさん入っている。

大喜びで中身を物色するケネス。基本的に何かを作るのが好きらしい。



そんなこんなで三人は渡された支度金を一切消費せずに旅の準備を進めていった。

ひとまず自由にやってみるようにと言ったものの、全く相談されない大人達は大丈夫なのかとやきもきする事になる。



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