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リーン君の大冒険?  作者: 白雲
第2章 少年期
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57

前話少し修正しています。特に話自体は変わってません。

「ギュア……」

「ピャー……」

足場に座り込むとバサァという羽ばたきの音と共に二種類の鳴き声がすぐ傍から聞こえた。隣を見ると大きなドラゴン。背中に子供ドラゴンを乗せて下を見ている。

あれ。避けられてた。

パチパチと二度瞬きうぅーんと考える。

さっきの反省を活かして今ぶち込むべきだろうか。


じっと見ているとドラゴンと目が合った。その琥珀色の瞳にもう怒りは見えない。というか、ドン引き?

「え、違うよ。なんでかああなったの」

首をフルフル振って主張するがドラゴンの目が変わらない。誤解だってば。



「リーーーン!どこーーーー!」

「上」

下から良く知ってる声が聞こえる。

そちらに視線を向けると、もっくもっくと広がる砂埃が切り取られたように存在しない一角があった。扇形のその空間の中心角に上を指さすセオ。セオの後ろにキョロキョロするケネスとびよん達の塊。

あ、びよん達が近くに居たから岩が山になったのか。それと、まさかセオ衝撃波切った?切れるの?アレ。

きょとりと瞳を瞬いて見下ろしているとケネスがこちらに気付いた。

「リ゛ーーーーン゛ーーー!」

あああ泣いちゃう。急いで足場をピョンピョンと降りて行くと最後にケネスにキャッチされた。

「もうっもおぉぉ!ドラゴンとか!来たら火の海だし山出来てセオが砂煙切って、心配したんだからーー!」

「ごめん。ごめんね」

言いたい事がいっぱいらしい。


ケネスにぎゅうぎゅうされてセオに頭をガシガシされながらふふと思わず笑った。いつかもこんな事があったなと思い出す。なんだか懐かしい。

「何笑ってるのぉ!もぉお説教だからね!狩人達からもドラン様達からもお説教だからー!」



「おい」

ケネスとわちゃわちゃしているとセオが警戒を滲ませた低い声を出す。バッサバッサという羽ばたく音が聞こえ大きな影に覆われて辺りが暗くなった。

「ギュアァァ」

改めて見るととても大きい。後ろ脚だけでリーン四人分ぐらいの太さがありそう。先程までその身に纏っていた炎は消えている。

ドラゴンが静かに30メートル程先の地面に降りるのに合わせてセオとケネスがリーンの前に出る。リーンはびよん達にもちゃっとくっつかれてて動けない。え。なんで。

あたふたしていると音も無く周囲に人影が現れ子供達の更に前に展開した。後ろ姿でも分かる。森の狩人達だ。師匠達以外にもたくさんいる。いつの間に来たんだろう。



狩人達がそれぞれの武器を巨大なドラゴンへと向ける。セオの構える剣からバチバチと雷光が迸りケネスも無言で弓を構えた。リーンは急展開についていけてない。

一触即発かと思われたが、ドラゴンはゆっくりと頭を下げて地に伏せた。

「ギュア」

上目遣いでこちらを見ている。

「あ。ごめんなさいしてる」

「ピャー」

ポツリと呟いたリーンの言葉を肯定するように子供ドラゴンが大きな背中から鳴き声を上げ、その場に狩人達から出た盛大なため息が満ちた。



大きく息を吐き出して雷を消し剣を鞘に収めるセオ。続いてケネスも弓を下ろす。狩人達は武器を下ろしながらもまだちょっと警戒している空気。

「あの子迎えに来た時は凄く怒ってたの」

今は怒りは微塵も見えないけど。結局何だったんだろう。

「ガキ拐われたとでも思ったか」

「ギュア」

「人騒がせだねぇ全く」

「ピャー」

「ギュウゥ……」

「じゃあ誤解は解けたっつー事で良いんだな?」

「ギュアァ」

そういう事らしい。

と言うか皆ドラゴンと普通に会話している。なんか凄い光景だなぁとニコニコ眺めているとセオにつむじをグリグリされた。痛い。



なんだかんだでこれにて一件落着。とはいかなかった。

師匠が怖い顔で歩いて来る。あ、これ絶対怒られるやつ。身構えるリーンの目の前まで来て頷くラウロ。

「よし」

拳が正確に頭上からまっすぐ落ちてきた。

ごいんと固い音が自分の頭からして目がチカチカする。

「っっ〜〜〜」

痛い。とても。


「ジャックは逃げろっつったろ。他も。なんであいつらだけ逃がしてテメーは残った。自分ならドラゴンの相手も出来ると思ったか?」

そういう訳じゃない。ただ

「村が燃えちゃうのは嫌だった」

あの場に誰も居なくなったらドラゴンが村に行くかもしれないと思った。それは絶対に嫌だっただけ。

「テメーが死んじまってもか」

「ううん。誰かが死ぬのも自分が死ぬのもやだ」

フルフルと首を振る。

「だったら」

「林組さん達は動けなくなってたから、あそこに居たらすぐ死んじゃうでしょ?だから緊急避難。ついでに師匠達呼んでくれるかなと思って」

皆はお守りも持って無かったしと自分のブレスレットを見ながら続ける。

「咆哮効かなかったら、林組さん達に抱えて走ってもらって魔法撃ち放題だったんだけど」


やばいやばい死ぬ死ぬと連呼して大騒ぎしながら小脇にリーンを抱えて必死で走る林組の幻が見えた。

つーかもしかして、自分達が間に合っていたらそれをやらせるつもりだったのか?

ラウロと横で聞いてた狩人達が変な顔になる。セオとケネスは何かに納得して頷いていた。



「遠くからいっぱい魔法撃ってたら諦めてくれるかなって思ったんだけど、一人じゃ無理で。ちょっと焦げちゃった」

失敗したと口をへの字にするリーンにラウロがため息をつく。自己犠牲の精神か、もしくは思い上がった考えでも持ってるならぶん殴ってやろうと思ったが。割と堅実に考えてた。それでも無謀ではあるが。

あの場ではリーン以外にはどうにも出来ず、放置したら村に来た可能性が高い。結局はあれが最善だった。ただ、もう少しやりようはあったと思うが。

「分かってんならいい。あぁ、あとアホ共助けてくれてありがとな。褒める気なんざねぇが礼は言わせろ」

「うん。心配かけてごめんなさい。ありがとう。皆も」

神妙な顔でペコリと頭を下げ、顔を上げてニコニコ笑って礼を言う。結局ラウロも釣られて笑い後で特訓なと言いながらリーンの頭をグシャグシャ撫でた。

「いた、痛い」

あ、たんこぶ。



その後人騒がせなドラゴンはケネスに迷惑料として鱗を何枚か剥ぎ取られ情けない顔で帰っていった。子供ドラゴンが自分の鱗も差し出そうとしてきたのは丁重にお断りした。


そして勿論リーンにはお説教祭りが待ち受けており、ちょっと焦げたし反省しているので甘んじて皆に怒られた。

林組の狩人達は全員号泣し過ぎて何を言っているのか全く分からなかったけど。



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