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リーン君の大冒険?  作者: 白雲
第2章 少年期
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「ガオォォォォォン!!」

突如響き渡る咆哮。地面も空気もビリビリと震え、一瞬何が起きたのか分からなかった。

「ピャー!」

すぐ傍で咆哮に応える声が聞こえる。

あ、お迎え?と思って顔を上げると、もの凄い速さで上空を滑るように飛び一直線にこちらに向かって来る炎の塊が見えた。


「坊ちゃん逃げろ!!」

ジャックが叫ぶが本人は咆哮による効果で体が硬直して動けないらしい。他の狩人達は声すら出せない様子。リーンに咆哮の影響は無い。が。



「ピャピャー!」

焦ったような子供ドラゴンの声に狩人達から視線を外して再度上空を見ると、既に目の前に炎を纏う巨体が居た。

琥珀色の瞳と目が合う。……凄く怒ってる?

上空のドラゴンの口がパカリと開き喉の奥にとてつもない魔力が集まるのを感じる。

「土!」

咄嗟に狩人達と自分の前と上を半ドーム状に囲うように分厚い土壁を築くとほぼ同時、ゴウッという音と共に辺りが熱気に包まれた。土壁の色がすぐに真っ赤に変わる。出来るだけ分厚くしたのに。

真っ赤に燃える土壁を外側へ押し退けるように再度同じ物を作った。動けない狩人達の上に落ちてきたら困る。



更にもう一度、三度目の壁を作りながら頭の中で目まぐるしくこの状況の打開策を捜すがどれもこれも使えない。

ブレスはとりあえず土壁でいい。けど体当たりでもされたら一瞬で崩れる。動けない狩人達をどうやって守る?

水は高温の水蒸気になって今よりも状況を悪くする。氷は土壁も溶かされるのだから役に立つとは思えない。そもそも大きな氷は発動に時間がかかり過ぎる。

ええとじゃあ……


「坊ちゃん!逃げろって!地面に穴掘って逃げろ!」

「地面」

なるほど。ジャックはぎこちなく動き始めているし他の面々も「坊ちゃん良いから早く逃げろ」と口々に言う。声は出せるようになったらしい。

リーンが頷くのを見て狩人達がほっとした顔をする。

そして、そのまま落ちていった。

「ぬおおぉぉぉぉぉぉ………」


狩人達の下に斜めに穴を掘り内側を氷でコーティングしてみた。水遊びで使おうと思って練習していた技だ。途中で氷コーティングを無くして地面と並行に更にトンネル状に掘り進め林の入口辺りで地上に繋げる。それと同時にこちら側の入口に土を大量に出して埋め立てた。

その直後にドォン!という衝撃と共に土壁が崩壊する。体当たりだ。とりあえずは間に合って良かった。



半分溶けながら崩れる土壁のドームから距離を取ろうとすると間髪入れずに再度のブレス。周囲に土壁を作りながらドラゴンの胴体を回り込むようにして回避する。

リーンはあんまり早くは動けないので風を纏い、風に押し出されるようにして移動して着地点に空気の足場を作るという移動法だ。ちょっと目が回りそう。

広場の周りをチラリと見ると木々や下草が盛大に燃えている。子供ドラゴンはピャーピャーと大きなドラゴンに何かを必死に訴えているが聞く耳を持たない様子。



「あのね。キミが何を怒っているのか分からないけど、ここでこれ以上暴れるなら僕も怒るよ」

ここまでリーンはドラゴン本体に攻撃をしていない。防いだだけだ。本格的に敵対するのは不味いかなと思っての判断だが、このまま暴れられるのも困る。

「ガオォォォォォォォン!!」

リーンの言葉に対する返答は敵対の意思。

「分かった」

覚悟を決めてコクリと頷いた。




といってもなかなか状況は厳しい。

ドラゴンの爪や噛み付き、体当たりを土壁も使いながら風を操って上下左右に避ける。土壁は一瞬で破壊されるけれど無いよりマシ。このドラゴン大きい癖に速い。

出来れば一瞬でも大きく距離を取りたいけどさせてくれない。的が大きいし自分以外に人がいないので攻撃魔法を使っても問題ないけれど、流石にこれだけ動き回っている上に自分がすぐ近くにいる状況で暴走魔法は使いたくない。

自分の魔法に巻き込まれるのはちょっと。



張り付くようにしての連続攻撃が続く。とても困る。距離、距離が取りたい。

そもそもリーンは実戦経験はほぼ無いし基本的に動かず後方で魔法を使う想定で今まで訓練してきた。現状行き当たりばったりで見て避けている。ドラゴンが激怒して攻撃が荒くなっているのはリーンにとって幸運だった。

セオの前衛とケネスの牽制が恋しい。

なるべく同じパターンを作らないようにめちゃくちゃな方向に大きく避けているけど多分、長く続くとそのうち捉えられるだろう。分かっていてもどうしようも無い。こちらの動きに順応される前に一発ぶち込む隙が欲しい。


風を纏っていて尚肌をジリジリと焼かれるような感覚がする。髪が焦げる匂いも鼻をつき顔を顰めた。

四苦八苦しながら纏う風に氷属性を加える。大丈夫、魔力はまだまだ余裕がある。

やっぱり一番ダメージ出せそうなのは土属性か。どこかで動きを止めてくれれば上空に退避しながら岩を落とせる。

攻撃を岩落としに決めて、避ける作業に集中しながらドラゴンの脳天に岩を落とすタイミングを見計らう。びよんが居ないから頑張ってもそこまで巨大な岩にはならないし、胴体じゃあんまり効かなそう。


さっき自分の言葉に返事をしてた時に落とせば良かったと反省しながら振り回される尻尾を避ける。更に続く爪も避けたところで魔力の収束。やっと、止まった。

「えい」

ブレスの為に動きを止めたドラゴンの脳天目掛けて大きな岩を落とす。魔力がごっそり消費される感覚の後にズゥゥゥゥゥゥン!!と派手な地響き。土と砂が衝撃波と共に周囲に撒き散らされるのをすんでのところで上空に逃れた。




上空の足場に避難したリーンが下を見ると広場に小さな岩山が出現していた。高さ5、60メートルはある。

「え」

そんなバカでかい物を出したつもりは無かったんだけど。

とりあえず衝撃波で炎は全部消えたしドラゴン問題も多分解決したし。まぁ、いいか。


ようやく目まぐるしい戦闘から解放されて、久しぶりにゆっくり大きく息をした。

あー疲れた。



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