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リーン君の大冒険?  作者: 白雲
第2章 少年期
52/94

52 番外編1

あけましておめでとうございます。

お正月なので番外編で二年前の旅の帰り道のお話を。

どうぞ今年もよろしくお願い致します。


※最後の方に軽い暴行シーンがありますので苦手な方はご注意ください。主人公はのほほんとしてます。

さて、困った。

リーンは今麻袋に入れられてどこかに転がされている。視界はほのかに明るいので周囲は明るいのだろう。麻袋のチクチクした感触で顔や腕が痒くなりそうだ。それと埃っぽい。


クシュンと一つくしゃみをしてうぅーんとモゾモゾ動き麻袋からの脱出を試みる。麻袋の口が頭側なのか足元なのかも分からない。でも手足は縛られていないしなんとかなりそう。

やっとの事で足の方から麻袋を出てぷはっと息をつく。

周囲を見回すと木で出来た家で、屋根の隙間から日が差し込み埃がキラキラしている。人の気配は中も外も無い。

……困った。




そもそも何故こんな事になっているのかというと、よく分からない。

ギールの街の手前にある大きな村の広場で皆で露天を見ながら歩いていた筈。露天商の人に話しかけられてそちらを向いた途端に多分、麻袋を被せられて運ばれた。それと同時に急に眠くなったので何かされたのだろう。

眠って起きたらこれだ。

「うぅーん?」

どうしようかな。とりあえずここを出た方が良さそう。悪い人が帰って来たら困る。



部屋に一つだけある扉は当たり前だが鍵がかかっていて開かない。家はオンボロだけど隙間があるのは屋根の方だけで壁はしっかりしている。床は屋根の隙間の下は所々木が腐って抜けて土が見えるけど。

リーンが使えるのはコップ一杯の水を出す魔法。どう考えても今の状況では役に立たない。


教会で調べたスキルは何があった?

風魔法、はこれも役に立たなそう。土魔法は……土?

床板の隙間から見える土をじっと見る。うん。



水魔法を使う感覚を思い出して集中。お腹のモヤモヤをちぎって手まで順に移動させて

「つち」

ベコリと地面に穴が開いた。ウンウン頷く。

想像したよりは小さな穴だが丸まったらリーンが入るぐらいの大きさ。いけそうだ。

穴の中に入り下に向けてもう一度。

「つち」

ベコリ。立っていた地面が凹んだのでバランスを崩して尻もちをついてしまった。立ち上がってお尻をポンポン叩き、今度は横方向。壁の方に向けてもう一度。

「つち」

横穴が出来た。けど感覚的に魔力はもう残り半分ぐらいしか無い。壁の外まではちょっと無理なんじゃ?

首を傾げていると外に人の気配と馬の嘶き。



「おい、ガキは縛ってあるんだろうな」

「縛っちゃねえですけど麻袋は閉じてあるし、眠りの魔法もまだしばらくは効いてまさ」

「あんたの魔法は天下一品だ。あ〜ワクワクするね!あんだけ綺麗な子だ。金持ちにいくらで売れるかねぇ」

年かさの男の声に答える若い男の声。次いで舌なめずりでもしそうな女の声が聞こえた。女の声は露天でかけられた声と同じだった。


悪い人達帰ってきちゃった。眉をヘニョリと下げて困ったぞと考える。

このまま横穴を掘って外まで行くのはすぐには無理。じゃあ、と入ってきた縦穴の縁を見る。自分の目線より少し上だ。しゃがんで手を上げる。

「つち」

なるべく平らに周りと違和感が無いように土で塞がれる様子を想像する。どこまで反映されるかは分からないけど。固い地面で蓋をして、自分がいる場所は潰れないように。

集中して魔法を使い、目を開けると真っ暗だった。手探りで石を探し右手に持って仄かな明かりをイメージする。確か光属性も使えたはず。

「あかり」

小さな声で呟くと握った石がぼんやりと明るく光った。上を見るとちゃんと土で天井が出来ている。ウンウン頷いてその場に座り込む。魔力はもうほぼ残っていない感じ。少し休まないと。



「ガキが居ねえ!!」

「はあ?どっから、いや……まだ寝てる筈ですって。鍵もかかってた。誰かが連れてったんじゃ」

「ちょっと。なんでアタシを見るんだい」

「お前、ガキが高値で売れるってやたらはしゃいでたな。報酬を独り占めしたくなったか?」

「まさか。ちょっと物騒な物仕舞いなよ。アタシはずっとあんたらと一緒にいたじゃないか。それに疑うならガキを一人で運んだ奴だろ」

「こいつにそんな度胸はねえ。ここはお前の持ち物。乞食を端金で雇うなり、やりようなんざいくらでもあるだろ」

「姉さ〜ん、今のうちに白状した方がいいぜえ?怒った旦那の怖さは知ってんだろ?」

「何を言って、ほんとに知らな…ぎゃあ!」

「あーあーあー。ほら旦那にごめんなさいしなって」



ドタバタする物音と怒鳴り声、時折女の悲鳴が聞こえる。

リーンは「わぁ大変そう」と思いながら目を瞑った。新しい魔法を使うのに集中して疲れたし。見つからなそうだからちょっと寝よう。

起きたら悪い人達居なくなってると良いんだけど。



その頃、勿論ドラン達は半狂乱で走り回っていた。



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