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リーン君の大冒険?  作者: 白雲
第2章 少年期
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名前は置いておいて、何を売ろうかという話に戻る。


「魔物素材はともかく、薬と付与は何作れんだ」

「僕は魔法の鞄しかまだ作れないよ」

リーンが首を振る。結局氷属性のひんやりした布もまだ成功していない。

「薬は色々作れるようになったよぉ。ポーションは低級ならなんとかって感じ」

ポーションというのは傷を一瞬で治してしまう魔法薬だ。ポーションのランクにもよるが最上級のポーションなら死の淵にいる重傷者でも即座に回復させるらしい。



薬師は傷薬や病の薬、解毒薬などの他に魔力を用いて作る各種魔法薬も作る。

魔法薬は瞬時に傷を治すなどとても便利な物だが高価だ。なので一般的な村や街に住む人にはあまり需要が無く冒険者や騎士のような人々が使うイメージ。

怪我を負って時間が経ってから回復魔法で治療しても傷跡や後遺症が残るので、怪我をしたらまず最低限ポーションで傷を塞ぎその後街に行って治療院などで回復魔法をかけ完全に治療するというのが多い。

ランクの高い高価なポーションは緊急時に使う物だ。


また、病に効く魔法薬は今のところ存在しない上に回復魔法で癒してもすぐに再発する事が多く、病の薬を作れる薬師は大きな街でも歓迎される。

そういった形で薬を作る薬師と回復魔法使いは上手く住み分けているのだ。役割が違う。



「ポーションってやっぱり難しいの?」

薬の作成については全く分からない。ケネスが欲しがる薬草の知識は増えたのだが。

「う〜ん。使う水に魔力を溶け込ませるんだけど。水と魔力がちゃんと混ざってる気がしないって言うかぁ」

「オババは出来んのか」

「ううん。オババの家にレシピが残ってただけ。魔力を溶かした水としか書いてないんだよ〜」

オババは引退した元薬師で、ケネスのもう一人の師匠だ。村ではポーションを作っても売れないので古いレシピはあったが作った事がある人は居ない。



「ケネス、あれ」

話の途中から倉庫の方に視線を向けていたリーンがうんうん頷いた後で自分が見ていた方向を指さす。倉庫では無くその後ろに先日出来たばかりの池を指しているようだ。

滝は水源が無いので当日中に消えているが、その時溜まった水はまだ残っていてびよん達のお気に入りの場所だ。今も放し飼い状態でチャプチャプしている。


「ん〜?池がどうか……え?」

「……なんだアレ」

池から強い魔力を感じる。あそこだけ強い魔力を放っている不自然さに言われるまで気付かなかった。

「なんで?え、いつから?リーン何かした?」

「ううん。多分、びよん達」

「……えぇ」

「あいつらホントどうなってんだ」

言われてみれば池から感じる魔力はびよん達の魔力に似ている。慣れ親しんだ魔力のせいで気付かなかったのか。



理由は不明だがびよん達がチャプチャプした水には高濃度の魔力が溶け込んでいた。

ケネスはものすごく納得がいかないという表情でランクの高いポーションの材料となる水に視線を向ける。びよん達が水遊びした水……いや。精霊達が触れた水、だ。言い方で印象が大分変わる。

ケネスが水を汲む横でリーンとセオの二人はびよん達の大きさを測っている。大きさは変わっていないので体が溶けた訳じゃないみたいだ。良かった。



「この池、元々こいつの水魔法の水だろ。普通の水でも魔力溶けんのか?」

セオが疑問を口にする。

「あー試してみないとだねぇ。びよん達ちょっとおいで〜」

ケネスがびよん達を引き連れて岩場の奥の池と言うか沼と言うか、水が溜まっている場所に向かう。


その後ろからセオと二人並んで歩きながら、ケネスの誘導に従い移動するびよん達を眺める。

「普通に言う事聞いてんじゃねえか」

「ふふ。使役も支配も使えないって言ってたのにね」

意思の疎通がとれないと言いながらごく普通に会話している事に本人はいつ気付くのか。

同調のスキルも練習したら使えると思うんだけど。



若干濁った水場に着いた。びよん達はこの水に入るように言われて嫌そうな空気を出している。

「ダメです〜。実験なんだから。ほら入って入って」

やっぱり普通に会話している。

リーンとセオが生温かい視線を向ける中、赤びよんが何故かいきなり青びよんにタックルした。捻りを加えた見事なタックルだった。

バチャーン!と水飛沫を上げて勢いよく落ちる青びよん。

え。なんで。



「ちょ、何してんのーーーー!?」

リーンが突然の喧嘩?に瞳をパチクリさせているとケネスの叫び声が響いた。青びよんは沈んだままだ。

「……これ、拾いに行った方が良いのか?」

セオが濁った水の底を覗き込む。見てみると不透明ながらも一応底まで見えた。青びよんは底でびよんびよんしていて問題がある状態なのかそうじゃないのか……。

「えぇ…うわ、ちょっと深いね」

足は着く深さだが拾いに行ったら全身びしょ濡れになる。

「ねえ、倉庫の池ではびよん達チャプチャプ浮いてたよ?」

「あ?そういやそうだな」

じゃあ何故ここでは沈むのか。水魔法の水じゃないと浮かない?わからな過ぎて困る。


三人で顔を見合わせていると水に変化が起きた。底の青びよんを中心にしてどんどん濁りが無くなり透き通っていく。

水場全ての水が透き通った状態になると青びよんがプカーと浮いてきてチャプチャプ。赤びよん達も続々と水に入っていって皆で楽しそうにチャプチャプし始めた。




「……なんなんだアレ」

「あー…えぇ?青びよんは水を浄化するって事ぉ?」

赤びよんは水を綺麗にする為に青びよんを落としたようだ。青びよんの了承を得ていたのかは不明だが。今特に険悪な雰囲気は無い。


「そうみたい。あと、皆は濁った水が好きじゃなくて、綺麗な水じゃないと浮かないんだね」

喧嘩じゃなくて良かったとニコニコ笑うリーンに二人の視線が向けられる。その情報必要?

「それと、普通の水だと魔力は溶けない」

そう言えばそれを調べに来たんだった。ハッとした二人が目の前の水に意識を向けるが、リーンの言う通り綺麗になった水から魔力は感じない。



「なんか、凄く疲れた気がする〜」

「ああ。茶でも飲むか」

「じゃあハーブティー淹れよう」

ため息をつく二人といつも通りの一人で先程来た道を戻る。

青びよんの能力が判明したのは良かったが、不明なのがあと三匹も残っている。そして相変わらずよく分からない。


遠い目をするケネスにセオが同情を込めて肩を叩いた。



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