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リーン君の大冒険?  作者: 白雲
第2章 少年期
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蜂祭りから数日。朝食後にドランに呼ばれたリーンは両親の部屋へと向かっている。

今日はドランとの勉強の日では無いし。なんだろう。



あの後、ラウロから瑠璃色の美しい羽根、ジャネットから丸々と太った兎、追加で取引したウォードから沢山の木苺が届けられた。更に三人お揃いのブレスレットまで。

ラウロが集めた石にウォードが街で身代わりの魔法を付与してもらいジャネットが革紐で編んだ物だそうだ。 一度だけ身代わりになって守ってくれる。


左の手首に着けたブレスレットを見てふふと笑う。

リーンの石は紺色で光が当たるとキラキラと青く輝く。セオは金色っぽい黄色でケネスは赤銅色だ。

自分だけ目の色でも髪の色でもないとラウロに言ったら、おめぇのは服の色だと言われた。何故、服。


考え事をしていると部屋に着いた。さて、なんだろう。




「やあ。来たね」

テーブルの上に何かの書類を広げていたドランが立ち上がってリーンを迎える。

彼は愛娘をリュクスに送り届けて戻ってから気を落としていたが、最近ようやく少し元気になってきた。



促されて椅子に座る。テーブルの書類を脇に纏めてからドランも向かいに座った。

「お父さん。どうしたの」

「うん。リーンは付与が出来るようになっただろう?」

コクリと頷く。

「ケネスも薬を調合出来るし、セオが狩った魔物の毛皮なんかも質が高くて商人が喜んで買い取るらしいね」

再度コクリと頷く。



メイソン侯爵家から荷物や手紙などが届くようになった二年前からマルツ村は少し変わった。侯爵家の荷物と一緒に商人が来るようになったのだ。

商人達は北の首都周辺から海沿いに南下して辺境まで行く。山脈を隔てて海沿いの港町と平行に並ぶ村々には旨味も無い為商人が通る事も無くほぼ自給自足。困った時にはギールまで出るか周囲の村を頼るしか無かった。

だが天下の侯爵家の依頼で荷物を運び、護衛まで付くとなれば話が違う。年に数回そういった商人が来て商売をするようになった。


そうして村に来る商人のおかげで手に入れ難かった魔石で動く魔道具や日常生活で使う様々な物が手に入り、また買い取ってもらえるようにもなった。

村の大多数を占める農民達も物々交換主流から貨幣での売買主流に徐々に切り替わりつつある。



「だから、それらを売る商会を作ったらどうかな」

「商会」

「この村にいる間に立ち上げればお父さんもミリーお母さんも手助けが出来る。登録上の本拠地はリュクスの街になるけどね」


リュクスで会ったシルヴィオもそんな話をしていたんだと言う。各種属性を使えるリーンが付与のスキルを習得したら高値で売れる物が作れる。それらを個人で商人に売るより商会を作る方が色々都合が良いんじゃないかと。

ドランとしても放っておいても将来確実に商会を立ち上げる必要が出来るだろうし、だったら目も手も届くうちにやらせたいと思う。



「わかった。二人に相談する」

「ああ。急ぐ話じゃない。数年後で良いんだ。三人でゆっくり相談しなさい」

コクリと頷いて答えるリーンの髪をサラリと撫でてドランが笑った。




------------------------------




「商会〜?」

「うん。数年後の話でいいって言ってたけど」

「お前が好きそうな話じゃねえか」

翌日、秘密基地に来て早速二人にドランからされた商会を作るという話をした。



セオは可もなく不可もなくという感じ。ケネスは何か考え込んでいる。

「……確かに薬と付与品ならコンスタントに作れるしセオも色々狩ってくるし。でもそれが商品って…あぁシルヴィオ様が協力してくれるんなら大きな商会に卸すような……」

なんかブツブツ言ってる。


セオと顔を見合わせ、しばらくそっとしておく事にした。



「良く分かんねえな。稼げる手段はありがてえけど」

「僕も。でも多分、キャシーのスキルと同じ」

セオが問いかけるようにリーンに視線を向ける。

「付与は珍しいスキルなんだって。それで、普通は一つか二つの属性しか使えないから」

セオの眉間のシワがどんどん深くなっていく。

「何種類も一人で付与出来んのがバレたら狙われんな」

コクリと頷いた。

付与品を作らなければ問題ないが、便利な物を作れるのに作りも使いもしないというのは難しい。


商会として売れば制作者が一人なのか複数人なのかなど分からない。調べれば分かるだろうが、それもメイソン侯爵家の後ろ盾があれば解決する。

余程の阿呆でなければ手を出す者などいないだろう。


「リーン!セオ!商品考えなきゃ!」

ケネスが目を輝かせてやる気に満ちている。考え事は終わったらしい。

楽しそうなその様子に「やっぱあいつそーいう話好きだよな」とセオが笑う。色々理由があるみたいだけど、三人にとっては楽しそうならそれが一番なのだ。



「その前にアレじゃねえの。商会の名前」

「名前」

「あーそっか。そうだよねぇ。どうする〜?」

「あー……リーン商会?」

「それはちょっと」

セオの出した案に間髪入れずリーンがフルフル首を振った。普通に嫌だ。

「それならターナー商会じゃないのぉ?」

「それもちょっと。三人の商会だし」

「じゃあお前は何が良いんだよ」

「えっと。……三人商会?」

「…………」

「…………」

うん。自分でも思う。無い。



「じゃあ、皆で次に集まるまでに考えてこよう」

無かった事にしてコクリと頷き問題を先送りにした。



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