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リーン君の大冒険?  作者: 白雲
第2章 少年期
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枯れ枝に火をつけその上に葉が付いたままの生木の枝を被せる。もっくもっくと上がる煙をリーンが風を操りせっせと壁の中へと送り込んでいる。


この煙は酩酊の草のような特殊な効果は無い。蜂蜜に影響すると困るので敢えて無害な木を選んでいる。

煙を浴びた蜂は一時的に気絶するのでその間に蜂を仕留め巣を壊すのだ。この辺はサイズが大きいだけで普通の蜂と扱いは変わらない。



「羽音が聞こえなくなったなぁ。崩せるか?」

ラウロの問いに頷き、壁を上から順に土に戻して巣に被らないように横に積み上げる。

蜂が大量に落ちている光景が見えてきてうわーと思いながらも集中。作るよりも壊す方が魔力も気力も使う。


「よっし。んじゃおめぇら蜂なー。坊ちゃんは出来るだけ巣の中に煙送ってくれ。ケネス、坊ちゃんの護衛」

ラウロが指示を出しリーンの頭をワシャワシャ撫でた後に巣へと歩いて行く。林担当の二人が頷き落ちている蜂にナイフを刺して針を回収し始めた。

え。あれ全部?お仕置きまだ続いてるの?



今日ここに来ていない林組はどんな目に遭うんだろうかと煙を送りながら考えていると、ラウロがザクザク巣を壊す音が聞こえた。

無造作にナイフを入れていくラウロの後ろに槍を持ったジャネットがつく。更に後ろに剣を持つセオ。



ラウロが蜂を落としながら巣を適当な位置で本体から外し、地面に敷いたいつもの大きな葉の上に置く。それを六回繰り返した頃に久しぶりにブブブと羽音が聞こえた。

あ、と思うと同時に巣から元気な蜂が飛び出してくる。奥にまだあんなに残っていたのか。そして聞こえてくる高笑い。


「アーハハハハ!おら蜂ども!かかって来なぁ!」

ジャネットが槍を振り回している。蜂の相手に槍は向かないんじゃと思ったが次々真っ二つになる蜂。

そして顔の真横を槍が通過しても全く気にせず巣の解体を続けるラウロ。どうやって察知してるのか蜂の突進も振り回される槍もヒョイヒョイと避けている。

ジャネットの後ろに居るセオは眉間にシワを寄せたいつもの顔で無言のままジャネットを抜いた蜂を真っ二つ。

周囲でワサワサ動く林担当。

「…………カオスぅ」

効果があるのか無いのか分からないが煙を送り込み続けながらケネスの言葉にコクリと頷く。なんか色々凄い。




結局地中の巣は地上の三倍もあった。土を操作して掘り出しそちらも解体。こっちには蜜はほとんど無い。大量の蜂の死骸と蜂の子がリーンが掘った穴にポイポイされる。

「ひい…ぃ……」

ケネスが穴を覗いて声にならない悲鳴を上げていた。わかる。だから見ない。

「おぉい。坊ちゃんツボ追加ぁー」

「はーい」

採れる蜂蜜も大量だ。リーンが土魔法と火魔法で即席で作った壺が大活躍している。どのくらいもつのかは不明だが、とりあえず土魔法で崩そうとしても崩れなかったし水を入れても濁らなかったので、多分大丈夫。



「しっかし。どーやって持って帰るかだぁな」

追加の壺を持っていくと、眉を下げたラウロが蜜入りの巣の欠片を口に入れてくれた。噛むとジュワ〜ッと甘い蜜が出てくる。美味しい。目の前には十近くの大きな壺。それと様々な物の材料となる巨大な巣。

これは。お披露目の時がやってきた。

穴の近くで「アレ食えるらしいぞ」と蜂の子を指さすセオとその言葉に再度悲鳴を上げているケネスをもぐもぐしながら呼ぶ。


「何食ってんだ。幼虫か?」

「やめてやめてやめて。違うよね?リーン違うよねぇ?」

「二人に贈り物があります」

ケネスが真っ青な顔で半泣きだが気にせず進める。ゴソゴソと肩掛け鞄の中から付与した鞄を出して二人に差し出した。

「背負い袋?」

「ポーチ?くれるの?てか、食べてたの虫じゃないよね?」

鞄の種類は独断と偏見により決定した。重々しく頷き、ケネス用の小さなポーチから一抱えある氷を取り出した。

「魔法の、鞄です」

渾身のドヤ顔だ。



「えぇぇぇ!付与?てか収納魔法使えるように……待って。待ってリーン。その氷いくつ入ってるの。あとそれ中に布?入ってるのなんで?」

「氷溶けねえのか」

「うん。そうみたい」

「待って。ねぇ聞いて。ポーチに氷しまわないで。それ俺にくれるやつなんだよね?」

先程からケネスが騒がしい。


氷は実験の為に入れていた。明らかに入らないサイズのポーチに入るのか、中に入れた物は時間により変化するのか。

大きさは問題無かった。しまおうと思ってポーチの口を氷に近付けたら吸い込まれたし、何も思わないで近付けても吸い込まれない。大きな氷五個入れてもまだ入る。

時間による変化はさっき氷が溶けてない事を確認した。

とても便利な物なのでは。

ニコニコしてケネスに氷入りのポーチを渡す。

「はい。氷は失敗したやつ」

なんとも言えない顔でお礼を言われた。



傍で見ていたラウロとジャネットも欲しいと言うのでその場でそれぞれの鞄に付与しようとしたが、ラウロ本人から待ったがかかった。

「ぅおい。交渉ぐらいしろっつーの」

「交渉」

なんの。

きょとりとするリーンにジャネットが笑う。

「こいつは街で買ったら安くとも数十万ルクはする代物なんだよ。高いと数百万だねぇ」

「え」

「金貨払えっつわれても無ぇけどなぁ」

ラウロがくつくつと笑って続ける。

「タダでやり取りすんのはおめぇら三人の間だけだ。親兄弟でも特別な贈り物じゃなきゃぁ多少でも対価を貰え」

「あ。 "前例を作るのは良くない" ?」

いつかドランから聞いたセリフを呟くと良く分かってんじゃねぇかとワシャワシャ頭を撫でられた。



「分かった。師匠は綺麗な羽根と交換。ジャネットさんは兎の肉と交換で」

「おぉいケネス、おめぇ交渉役交代しろ」

チェンジを要求された。

口をへの字にするリーンの隣に苦笑したケネスが並ぶ。

「師匠、親兄弟は多少の対価でって言ったでしょ〜」

「あぁ?」

「リーンにとって師匠もジャネットさんも家族と同じって事だよぉ。ねー?」

ケネスの言葉にうんうん頷く。

「そら……まぁ。ありがてぇが」

嬉しいのか照れてるのか両方なのか。首の後ろをかきながら視線を逸らすラウロを鼻で笑ってジャネットが答えた。

「チビありがとう。嬉しいよ。とびきり美味い肉を狩って来なきゃね」

リーンの頭を優しく撫でながら、身内以外は全部ケネスを通すんだよと釘を刺す。




林担当の二人はすげーなぁと関心してリーンを褒めてくれた。基本的に気のいい奴らなのだ。

彼ら以外は全員大収穫で大満足。二人は重い体と大量の針が今日の収穫となった。危険な魔物放置ダメ。絶対。



もちろん今日来なかった林組がもっと酷い目にあったのは言うまでもない。



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