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リーン君の大冒険?  作者: 白雲
第2章 少年期
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寂しい。

リーンは今ケネスが呼んでくれた赤びよんをぎゅっとして石の上に座っている。周囲では青びよんと緑びよん、白びよんと黒びよんがびよんびよんしている。


「……なんだアレ」

「さぁー。多分、慰めてる?」

「お前の精霊だろうが」

「あいつら未だに意志の疎通がとれないしねぇ〜」

「アレ触れる時と透ける時あんの何」

「あーそれも…よく分かんないかなぁ」

ケネスがはははと乾いた笑いを零す。呼べば現れるが未知の存在過ぎてどうにもならない。

唯一緑色のやつは畑に放すと植物を急速に育てる事だけ分かったが。あと多分リーンの事が好きだ。リーンの傍で一匹呼ぶと勝手に全部出てくる。



ケネスは二年でラウロの一番弟子と言われる程弓の腕を上げ、たまに狩人達に呼ばれて狩りに同行している。精神魔法もその特性上必ず成功する訳では無いが、獲物を眠らせたり混乱させて群れの連携を乱したりと大活躍だ。

しかし精霊召喚はどうにも。何をどうしたらいいのか全く分からない。暇を見て使い続けてはいるが結果リーンに懐いただけだ。『使役』と『支配』仕事して。



ケネスに呆れと同情を含んだ視線を向けていたセオがスっと目を細めリーンの方に歩き出す。ケネスも「あー」と面倒そうに声を出してそれに続いた。

二人が各色びよんを避けてリーンの隣に立つとその数秒後に騒がしい子供達の集団が近付いて来た。



「なんだお前置いて行かれたのかよ」

生意気そうな子供がバカにしたような声でリーンに話しかけると、周りの子供達もクスクスと笑いながら「本当の子供じゃないから」とか「嫌われてんじゃねえの」など囁く。


「ハドリーこんにちは。農作業終わったの」

リーンはニコリと笑って挨拶する。この人達はいつも楽しそうだ。

「っうるさい!ケネスだってサボってるだろ」

「俺ぇ〜?昨日兎狩ったから今日は免除だよぉ」

「農民の子なのに狩りに行くなんて変だ!サボってないで畑の世話しろよ!」

「いやぁ俺家継がないしー大人達の了承は取ってるしぃー」

「っっ……セ、セ、セオだってサボりだろ」

「あ?今日当番じゃねえよ」

「お前!恥ずかしくないのかよ!自分より強い奴に守ってもらって卑怯な奴だな!」

再びリーンに矛先を向ける。周りもそうだそうだ弱虫だ卑怯者だと囃し立てる。


「ハドリーはキャシーの事が好きだったもんね。はい、赤びよんに慰めてもらう?」

ニコリと微笑んで膝に置いていた赤い半透明の塊を差し出す。途端に赤びよんが暴れてリーンの手を抜け出し、他の仲間の所に行ってしまった。

「あ、赤びよんは嫌だって。残念」

ごめんねとハドリーに笑いかけるが返事がない。真っ赤な顔でプルプルしている。大丈夫だろうか。

「う…う……うるさい!!!」

叫んで走って行く。周りの子供達もこちらをチラチラ見ながらハドリーを追いかけ、それにバイバイと手を振るリーン。いつものパターンだ。



「懲りねえな。あいつも」

「セオが居ても来るのは感心するけどねぇ」

「賑やかだったね」

毎回毎回言ってる事はめちゃくちゃだし最後は叫びながら走って行くか、ごめんね今日は忙しいからと申し訳なさそうなリーンに手を振られて微妙な表情で見送るかのどちらかだ。リーンは割と歓迎している。

「さ、ハドリーのお陰でちょっと元気出たし。森に行こう」

「……浮かばれねえ」

「あはは。リーンが元気出たなら良かったじゃん」


三人は今日は家の仕事もお勉強もお休み。サイズが大きくなった凸凹が並んで笑い合う。二年経っても変わらずだ。




村の周囲の森はそれなりの広さがあるので一人で来たら迷子になりそう。リーン達は薬になる草や花、料理に使える葉や実などを摘みながら奥へと入って行く。

「木苺はまだちょっと早いね」

「ああ、もう少しだな」

「残念。あ、アレは〜?なんか赤い実なってる」

「あれは実も枝も毒。触んなよ」

「うわ」

ケネスが指さす方には赤いツヤツヤした実が見えた。あれ毒なんだ。美味しそうなのに。リーンは赤い実をじっと見つめて鑑定してみる。脳裏に文字が浮かび上がり……


『木の実』


全く役に立たない。

うぅーんと呟いてまた歩き出す。

「どうかした〜?」

「ううん。赤い実鑑定したら木の実って出てきただけ」

「あー…しばらくはそんなもんらしいな」

「え、てゆーかリーン!鑑定出来るようになったの?」

「うん。この前」

「こいつ、いつもみてえに木じっと見て、はっとした後『木だ』つーから。寝ぼけてんのかと思った」

「ぶふっなにそれ。俺も見たかった〜」

ケネスがケラケラ笑う。

「僕はまだ魔法で戦えないから。鑑定出来るようになったら役に立つと思ったのに」

珍しくちょっと不貞腐れた顔で言うリーンにセオが呆れた顔でツムジをグリグリし、ケネスが笑いながら脇腹をつつく。

「バーカ。これからだろ。つーか魔法充分役に立ってる」

「リーンの魔法狩人達に大人気じゃん。てか年々規模がでっかくなってるけどアレどこまでいくんだろ」

ケネスがちょっと遠い目になった。



リーンもたまに狩人達の狩りに同行する。

獲物を仕留めた際、大抵はその場で簡単に解体して不要な部位は土に埋める。それと食べられない魔物なんかも魔石と呼ばれる石を取り出した後に埋める。放置すると魔物が寄ってくるからだ。

そんな時に一瞬で穴を掘りまた一瞬で埋めるリーンは重宝され、水が使い放題なのも喜ばれる。二年前はコップ一杯だった水魔法は無事に出せる量が増え、今ならドバドバ出せるようになった。

魔法で狩りに参加していないのは制御が難しく動き回る人を巻き込んでしまいそうだから。まだまだ練習中だ。



「ん。頑張る」

「まだ六年もあんだ。俺も腕磨く」

「セオはそろそろ自重しなよ。ウォードさんがこの前あいつやべーなってボヤいてたんだけど」

「なんでだよ」

「ほんと、逆に聞きたい。一体何をしたの」

ケネスの真顔に思わず笑ったらまた脇腹をつつかれた。



家を継がない子供が独立するのは十三歳から十五歳。冒険者としてギルドに登録出来る年齢はもう少し早いが、別に早く出て行かなければいけない理由も無い。


子供達はまだまだ、ぬくぬくしながら爪を研ぐ。



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