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リーン君の大冒険?  作者: 白雲
第1章 幼児期
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馬車を降りた周辺には大きな商店がたくさんあった。宿の周辺で見たごちゃごちゃとした雑多な雰囲気ではなく、一つ一つの店が大きい。そして道を歩く人の数がとても多い。



はぐれないようにとキャシーはドランに抱っこされリーンはイワンと手を繋ぐ。セオとケネスの方にもう片方の手を差し出したらセオに「なんでだよ」と手を軽くパチンとされた。ケネスは爆笑している。え。なんで。

「大丈夫だよぉ。セオと俺は迷子にならないようにちゃんと手を繋いでついて行くから〜」

セオの左手を握って持ち上げケネスがニコニコと言う。セオは「おま、おい」と凄く嫌そうな顔で左手を振り回すが、ケネスの右手は外れない。

良かった安心だと前に向き直り歩き出す。後ろは何か揉めてるが大丈夫だろう。いつもの事だ。



しばらく歩き、大きくて立派な建物に入っていくドランに続く。下級貴族や裕福な商人向けのそれなりに上等な衣服を扱うお店だ。平民が一般的に買い求める中古品ではなく、既製品だが新品と思われる商品が並んでいる。

「さあ、先ずはリーンの服から選ぼうか」

ドランのこの言葉を合図に、嬉々とした店員達に着せ替え人形にされる時間が始まった。




「リボン……フリフリ………」

「あー…うん。お疲れ様ぁ」

ぐったりとしたリーンと苦笑しながらそれを慰めるケネスが店の端のベンチに座り、横の壁にセオが寄りかかって同情の眼差しを向けている。今は交代でキャシーが着せ替え人形になっているが、キャシーは楽しそうだ。

二人共リボンもフリフリも似合っていたとは口が裂けても言わない。自分も絶対に嫌だし気持ちはわかる。



あれがいいこれがいいやっぱりさっきの…と山ほど着替えさせられた。しかもフリフリでキラキラした物を勧めてくる。

リーンが普段着ているのは簡素なシャツとチュニックとズボンだ。豪華なフリルもキラキラした刺繍も興味は無い。あと水色とかピンクはちょっと。


結局、袖なしでお尻まで隠れるダボッとした紺色の上着とちょっと膨らんだ膝丈の黒い半ズボン、フリフリブラウスに決まった。上着には銀糸で控えめに刺繍が入っている。

フリフリブラウスは断固拒否したが拒否し切れなかった。そしてレースのヒラヒラなリボン(クラバット)も拒否したが着けられた。貴族の装いはフリフリキラキラしている物だ、本当はもっとこんなフリフリやあんなキラキラが…と言われ最終的に仕方なく頷いたのだ。

店員達イチオシのまん丸に膨らんだ短い半ズボンと白いタイツの組み合わせは、お父さんが履くならボクも履くと言ったらドランが下げさせてくれた。



キャシーは更に時間をかけ、リーンと色味を合わせた紺色のワンピースに決まった。

ワンピースの胸の下らへんに銀糸で刺繍が入った白いリボンが縫い付けられていて、背中でちょうちょ結びになっている。リボンの下から足元までふんわり裾が広がるスカート部分は体の中心に切れ込みが入っていて、中に重なっている白い布地が覗くようなデザインだ。こちらも襟ぐりと袖口にフリルがあしらってある。

幅広のヘアバンドと合わせてとても可愛らしい。



服はサイズ直しをして明日の午前中に宿に届けてくれるらしい。その後隣の靴屋で中古の綺麗な靴を買い、多少の手直しをして同じく宿に届けてもらうよう手配した。

朝食後に宿を出たのにもう昼過ぎだ。約一名、普段ぽやぽや笑っている人物が死んだ魚のような目をしているので、一行は急ぎ美味しいと評判の料理屋へ向かった。




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ニコニコとシチューを頬張るリーンを見てホッとする一同。セオは隣でいつも以上に世話を焼いているしキャシーまでパンをあーんしてくれた。

なぜこんなに周りにハラハラされているのかは分からないが、疲れてはいたので有難く享受する。キャシーにはあーんをお返して、セオには断られた。



食事をしながら午後はどこに行こうかと相談する。

リーンとキャシーがミリーお母さんに何かお土産が欲しいと言うと、セオもケネスも家族に土産を買おうとなった。しかし何が良いのか全く分からない。

首を捻る三人をドランとイワンがニコニコと見ていたので意見を求めてみる。

「そうだね。広場に露店が集まっている場所があるよ」

中心街の大きな広場には細工物などの露店が並ぶらしい。夕暮れには片付けてしまうそうだがまだまだ大丈夫だろう。




「わぁ」

「凄いだろう?面白い物も多いけど、ガラクタを高値で売ろうとする人達も居るから私達から離れないようにね」

ドランの言葉にウンウン頷く。

入口で見た広場よりもっと大きな空間にたくさんの露店が所狭しと並んでいる。地面に布を敷いた場所に商品を並べて座り込んでいる人や、テントを設置している人、荷車の横に椅子を置いて座っている人など様々だ。



「これだけあると目移りしちゃうね〜」

「端から見てきゃ良いだろ」

「ふふ。うん行こう」

笑って二人の手を取り歩き出すリーンに、手を繋ぐのを嫌がっていたセオも仕方ないとため息一つで諦め歩調を合わせる。ケネスもその様子をクスクス笑って同じく歩調を合わせた。


楽しげな凸凹三人の後ろ姿を眺めながら、きょろきょろするキャシーを抱いた大人二人もそれに続く。



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