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リーン君の大冒険?  作者: 白雲
第1章 幼児期
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ウトウトとしている間に最初の村に着いたらしい。声をかけられてハッと覚醒したリーン達は、しばらくぶりに馬車を降りて体を伸ばした。



「うぅーんあぁ〜、体がバキバキするぅ」

両手を上げて伸びをしているケネスの横で真似をしてみる。

「うぅーー…ん?」「おい」

ひっくり返りそうになってセオに背中をキャッチされた。左手一本でリーンのほぼ全体重を支えているのはなんなのか。再び筋肉へ思いを馳せそうになるが、堪えてお礼を言う。


キャシーは眠くてグズっており、この村の代表らしき人物と話すドランが抱っこしているのが見える。イワンもその傍に。他はそれぞれ散っているようだ。

村の雰囲気はマルツ村と変わらない。大きさはこちらの方が小さい感じ。周囲を見回しもう一度ドランの方に視線を戻すと、イワンがこちらの方に歩いて来ていた。

「坊ちゃん、この村を治める方がお部屋を貸して下さるそうですよ。全員分とはいかないので、他はここで野営となりますが」

「やえい…!」

子供達が目を輝かせたところにドランもやって来た。

「ふふ。やっぱり野営やりたいのか。でも、今日は初日で疲れているだろう。食事は断ったから野営気分は充分味わえるし、寝る時だけはベッドを借りてきちんと休みなさい」

君たちもね、とセオとケネスに向けて言う。どうやら子供達とドランが部屋を借りる事になったようだ。


疲れていて体のあちこちが痛いのは本当だし、五日の行程のうち一晩は野宿もある。リーン達は素直に頷いた。



周辺に散っていた狩人達が戻ってきた。一人は水を持って馬の世話をしに行き、他二人は広場に水と薪を下ろす。ドランに銅貨を渡して、いや返しているので、薪は村の家から買い取ったのだろう。そしてあっという間に火を熾し焚き火を始めた。全てが手馴れている。



ポカンと口を開けて見ていたリーンとケネスを、セオが馬の世話の手伝いに誘った。もちろん二つ返事で了承する。

「おぉなんだ。馬ぁ見に来たか?」

馬に水を飲ませブラシをかけながら笑うのは弓使いのラウロだ。三十半ばぐらいの陽気な男で、木の上に登り獲物を狙い撃ちするのが得意だと馬車の中で話してくれた。

マルツ村の狩人の人々は黒髪で浅黒い肌の人が多く、今回同行している三人もセオと同じくその特徴を持っている。

何か手伝いがしたいと言う三人にラウロは喜び、餌やりを頼んだ。


「そこに積んだ干し草をそっち側の馬にやってくれ。絶対にケツの方にゃ近寄んじゃねぇぞ」

ウンウン頷き、張り切って干し草を運ぶ。どうやら "そっち側" は、ブラシがけと蹄の手入れが終わった馬のようだ。最初は一頭だったのに、運んでいる間に増えている。

なんとなく、四頭全部がこちらに来る前に運び終わらなければと謎の使命感に駆られ、よいしょとさっきまでより多めに干し草を抱えた。

「それじゃ前見えねえだろうが」

抱えた干し草の三分の一がひょいと無くなる。ふと見ると、セオもケネスも自分の倍ぐらい、いいやもっと抱えて運んでいる。またか。また、筋肉。いやそもそも体格が。


何かブツブツ言い始めたリーンにケネスが苦笑する。

「干し草いっぱい抱えられたって特にいい事も無いでしょーが。てか俺は農家の息子!慣れてんの!流石に俺はリーン片手で持ち上げらんないよぉ」

「俺も持ち上げた事は無えよ」

やってみたら?あ、俺の事も持ち上げれる?なんの為にやんだそれ、つーかお前は無理だろ。いやいやチャレンジ精神が……

干し草を抱えたまま、何やら仲良く言い合いを始めた二人に思わずふふふと笑いが漏れる。その声に釣られてこちらを向いた、ニンマリと笑ったようなグレーの瞳と人を射殺しそうな金の瞳。

「もう少しだから、終わらせてごはん食べよう」

笑いかけて三人一緒に歩き出す。漂ってくる食欲をそそる匂いに、晩ご飯なんだろうとまたワイワイ会話が弾む。


一日中馬車に揺られていたはずなのに、ガキの体力すげーなとラウロが遠い目をしていた。




馬の餌やりを終え服や髪に付いた干し草をお互いに取り合って、井戸で体を拭いてから広場に戻った。夕暮れの頃でちょうど食事の用意も終わったところらしい。


食事の用意をしてくれていたのはセオ父ウォードと、ジャネットという槍使い。ジャネットは熊を倒した事があるのが自慢の豪快な女性だ。左頬から顎まで残る爪痕を指さし「かっこいいだろ?」とガハガハ笑っていた。とてもかっこいい。


「ほら、チビ達もその辺座んな。芋とパンとスープだよ」

並んで座ると宣言通りの夕食が渡された。スープには干し肉や野菜が入っていて美味しそうだ。

「しっかしおめぇら元気だな。おい、こいつら馬の世話手伝いに来たんだぜ?」

「ああ見てたさ。全く大したもんだね」

カラカラと笑いながら交わされるラウロとジャネットの言葉にウォードが頷く。

「ケツ痛くなんなかったか」

「「「痛い」」」

ぶふっと、半分寝ているキャシーに食事させていたドランが吹き出した。横で手伝っているイワンが苦笑する。

「当然ですよ。大人でもきついものですから」

ラウロが軽い回復魔法が使えるらしく、後でかけてやると言われて胸を撫で下ろした。馬車のベンチには一応毛皮が敷かれていたが、気休め以外の何物でもなかったのだ。



食事も美味しく楽しく食べて、盛り沢山だった一日が終わる。回復魔法をかけてもらいイワンと狩人達に挨拶をして、完全に寝ているキャシーを抱えたドランと三人はこの村の村長宅に向かった。



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