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リーン君の大冒険?  作者: 白雲
第1章 幼児期
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リーンに魔法の適正があると分かったので、近々ギールの街の教会に行こうという話になっている。ただギールの街まで馬車で五日程かかるので、今すぐにとはいかない。ドランの予定を調整しているところだ。



「へぇー良いなぁ。羨ましいよ」

先日耕した家の畑で、再度肥料の水を土に混ぜながらケネスが言う。お野菜育てよう計画第二回が開催中だ。

「うらやましい?」

小振りな鍬を持たせてもらったはいいが途端にふらついて取り上げられたリーンが、しゃがんだ体勢から見上げる。

「そりゃあね。自分のスキルとか適正が分かれば、可能性もわかるでしょ〜?」

「かのうせい」

「そそ。そんでさぁ〜農業のスキルしか無いとか、何も無いとかだったら、まぁ、諦めもつくかもしんないし」


リーンはちょっとびっくりして瞳をパチリと瞬く。

「ケネスは、むらを出たいの」

「ここが嫌って訳じゃないよぉ。でも、出来るならあちこち行ってみたいじゃん?ほら、リーンが言う冒険」

な?と同意を求められたセオも「そうだな」と返す。


冒険。冒険に行きたいというのなら気持ちは分かる。ウンウンと頷き、同志が出来たとキラキラした瞳を向けた。

そんな三人をフレディが慈愛の眼差しで眺める。誰もが一度は通る道だ。自分もそうだった。



「じゃあ、二人もいっしょに行きたいってお願いしてみる」

フレディがぎょっとちびっ子に視線を固定し、セオは盛大に眉を顰めて何か考え込んでいる様子。そしてケネスは子供らしからぬ苦笑で返した。

「いやいや。そう簡単には」

「きょうかいに払うお金は高くないんだって。みんな行かないのは、歩いて行くとあぶないし時間がかかるから。でも、今はしゅうかくきじゃないし」

一緒に馬車で行けば少しぐらい大丈夫でしょ?と平然と言い、ニコリと続けた。

「畑のさぎょう、ケネスとセオに、ほうしゅうは何がいいか聞いておいてほしいって、お父さんが」

一気に実現性が増した。


「い…や……でも、畑作り程度の報酬で、それは」

「教会の費用はおいらが出す」

フレディが走ってきてリーンの前に両膝をつく。

「宿も、良いとこは無理だけんど、ちゃんと泊まれる分持たすし。坊ちゃんお願えします。どうかケネスの事頼んでみてくれねぇですか」

「伯父さん……」


フレディは可愛がっている甥っ子に自分と同じ思いはさせたくなかった。もし、子供の頃に魔法適正があると分かっていたら。子供の頃からその能力を伸ばす努力をしていたら。

たらればの話に意味は無い。だが、時折ふとした瞬間に思ってしまうのだ。もしかしたら違う人生が、と。



自分が提案している筈なのに何故か逆に頼み込まれたリーンが瞳をパチクリしていると、盛大に顰めた顔のままセオも近寄ってきた。眉間のシワがすごい。

「俺も、教会に行くのに金貯めてる。まだ全然足りねえだろうけど足があるなら大分違えし。親父に頼んでみる」

農民は物々交換が主流だが、狩人は狩った獲物の肉や毛皮を売るので金銭を得やすい。もちろん税も金銭で収めるので、裕福な訳ではないが。セオは一人で狩れた時などはその分を受け取って貯めている。


そんなこんなで、リーンがドランにお願いしてみる事になった。キャシーは自分が一緒に行く事は確定しているので、我関せずで種を吟味している。




仕切り直して種を植える作業だ。種はキャベツ、蕪、人参の三種類。小さな畑なので、種類は多くない。

リーンが畝に沿って等間隔に穴を開け、キャシーがそこに種を入れて土を被せる。他のメンバーは周囲に腰を下ろし、ぴょこぴょこ動く二人を眺める番だ。



一列、キャベツの種を植え終わった時に異変が起きた。

「あぁ?」

ガラの悪い声が聞こえ、心ここに在らずだったケネスがハッとセオに視線を向ける。畑を睨んでる?

自分もそちらを見てみると、目と口を見開いた伯父と小さな葉っぱが顔を出す畑。何もおかしくは……うん?小さな、葉っぱ。

「うぅえ?え、ちょ。なんで」

変な声が出た。


きょとりと不思議そうな顔をするちびっ子二人に何をしたのか聞いてみたが、種を植えたと普通に返された。どちらかが強烈な植物育成系のスキルを持っていると思われる。今度は一人ずつ、それぞれ蕪と人参の種を植えた。

結果、変わらず。蕪も人参も植えたそばから芽を出し、小さな葉を広げるのだ。



「キャシーだよ。キャシーが種をえらんでくれたから」

誇らしげに妹を撫でようとして、自分の手が土だらけな事に気付きピタリと止まる。そしてその手をセオが布で拭いてやっている。

なんだあれ、お母さんか?とケネスが微妙な表情で眺めているが誰も気にしない。


「いやぁびっくらこいた。坊ちゃんは、前に畑を作った時にはこんなんでは無かったんですよね」

フレディの問いに、うんと頷く。変だなとは思ったが、フレディの例のスキルの効果だと思っていたらしい。

「おやさい!すごいねぇ」

当のキャシーは何故か野菜を褒めている。間違った知識を持ちそうだなとちょっと不安だ。




どうやら今日の夜は、お父さんに話をしなければならない事がいっぱいだ。キャシーの凄そうなスキルはきっと大喜びだろうとニマニマするのだった。



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