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リーン君の大冒険?  作者: 白雲
第1章 幼児期
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お野菜育てよう計画の第二回はまだ開催されない。

よく分からないスキルで短縮されると言っても流石に数日はかかる。



仕方がないのでリーンとキャシーは農地に行ってみることにした。プロの仕事を見学するのだ。

お昼を食べた後、ミリアに遠くから見るだけ。くれぐれも作業の邪魔をしないように。と言い聞かせられてウンウンと二人並んで首を縦に振る儀式を終えた。


今回も大きなクマのような護衛が一緒に行ってくれるらしい。

この村は年中平和で余所者が来る事もほぼ無いし、強い魔物も村の近くには来ない。来たとしても、毎日周辺の森や林に行く狩人達が異変に気付くし、弱いのは彼らに狩られる。

危険はあまり無いが念の為。幼児なので。



左手をキャシーと繋ぎ、右手に宝物となった杖を持ってニコニコ歩く。たまに気になった場所は杖でガサゴソやる。

「坊ちゃん、良い杖を作ってもらって良かったですね」

イワンの言葉に、でしょ?とちょっと自慢げにニコリと笑いかける。

セオが加工前に言っていた通り、全体にヤスリがかけられていてささくれで棘を刺してしまう心配は無い。持ち手になるように加工された部分は更に滑らかにされた上、滑り止めの布が巻いてある。

セオとリーン以外に需要があるのかはともかく、とてもいい物だ。子供が作ったにしてはクオリティの主張が凄い。



道中、宝物の杖や製作者のセオ、先日の畑作りや魔法やかっこいい石など、ころころと話題を変えながら和やかに進む。

すると前方から先程話題に登った人物が歩いて来た。


「セオ。おしごとおわったの?」

こちらを見つけ、眉間にシワを寄せて近付いて来た友人に話しかける。

「ああ。でけー鹿二頭仕留めたから今日は終わりだ。血抜き終わったら大人達が持ってくる」

なるほど。運のいい日だったようだ。セオは狩人らしく革の胸当てを着けて、腰に小ぶりなナイフと水袋を括っている。リーンからは見えないが背中には以前見せてくれた杖も背負っているのだろう。


兎や鳥を仕留めた時は子供達も解体に加わるが、大物はほぼする事が無いので解散らしい。ウンウン頷き、じゃあと誘って一緒に行く事にした。



左からキャシー、リーン、セオと並んで歩く。後ろに微笑ましげなクマ。キャシーは一応リーンが間に居れば大丈夫らしい。ちょっとだけ慣れたようだ。

真ん中なのでもうガサゴソ出来ない。まあ良いか、とトン、トンと反対側の足を出すのと一緒に杖で地面を突く。これはこれで良い。

セオはその光景を口元をぎゅっと引き結び、眉間にとんでもなくシワを寄せて見ている。多分、喜んでいる。多分。



「セオは、まほう、つかえる?」

足元に視線をやり、枝を突くリズムに引きずられながらリーンが口を開く。彼の今のブームは枝と石と魔法だ。

「知らねえ。多分使えねーと思う」

「そっかぁ」

じゃあ、と今度は後ろのクマを振り返って見上げる。

「イワンはまほう……」「よそ見して歩くな。転ぶぞ」

横から手が伸びてきて即座にグリンと前に向き直された。

パチクリと瞳を瞬く。



良い組み合わせだな、と堪えきれなかった笑いに微かに肩を震わせてイワンが答えた。

「私は、火の魔法だけ」

「え」

今度はしっかり止まって、キャシーの手を離してから振り返った。キャシーの方が素早く振り返っているが。

「まほう!!」キャシーのテンション爆上げの声とキラキラした瞳、リーンのワクワクと期待した瞳とセオの鋭い眼光に晒されてイワンが苦笑する。


「少しだけですよ」

スっと手の平を上にして腕を持ち上げ、その手の平にボッと瞬時に火の玉が生まれた。


「「わぁぁぁぁぁ」」「おぉ」

かっこいい。スっとやってボッ。そのスマートさがとてもかっこいい。今、子供達のヒーロー1位はフレディからイワンに代替わりした。



「若い頃に冒険者をやっていたものですから」

火の玉を消し、昔を懐かしむような声で今はただの爺ですよ。と付け加える。

実はこのクマ、若い頃はその巨体と炎を纏った剣でかなり暴れ回っていた。豪快に魔物を屠り豪快に酒を浴びていた日常は、もう遠い過去だというのに昨日の事のように鮮明に蘇る。

今の穏やかな日々に心底満足しているので、過去の輝かしい記憶に未練は無いが。




大興奮の子供達の希望により、急遽道の脇の草はらで魔法の講習会が始まった。まあ、教わったからと言って出来るものでもないのは子供達も理解している。興味と勢いだ。


「まず、お腹の辺りに何かの力が溜まっていると想像してみてください。それが解れて、胸、肩、腕を通って手の平から外に出るのです。その時に出したい物、そうですね水にしましょう。水を思い浮かべて声に出してください」


おなか。おなかにモヤモヤ。モヤモヤをちぎって、むねと、かたと、うでをとおって…………。

「みず」パシャリ。

目を瞑って言われた通りにしたら突然顔面に水を浴びた。

自身の手のひらは頭上に緩く掲げられている。



リーンは驚いた顔に囲まれ、パチリと一度瞬き、へにょりと眉を下げてセオを見上げる。びしょびしょ。

即座に袖口で顔を拭かれた。セオは明日から洗った布を持ち歩こうと決めた。



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