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リーン君の大冒険?  作者: 白雲
第1章 幼児期
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さて、プチ勉強会となった朝食を終え、本日のメインイベント。と、言いたいところだが。

ミリアに、フレディも仕事があるのだから畑の相談は午後になってから。と釘を刺されてしまった。

二人は仕方なく窓辺に並んでフレディの仕事ぶりを眺め、早く終わらないかなとウズウズしながら待つ。


フレディはこの仕事に就いてから一番のプレッシャーを感じてちょっとお腹が痛くなった。




今度こそ。今度こそ、本日のメインイベント。お昼ご飯もちゃんと食べた。

二人は午前中ずっとフレディにプレッシャーを与え続けていたのかというと実は違う。何も無ければそうなった可能性が高いが。



初めての友人に浮かれきったセオが昨日の今日で枝の加工を終わらせ、届けに来てくれたのだ。

家の敷地に入ったところで窓辺にふたつ並んだ亜麻色と焦げ茶色を見つけた。何してんだ?と疑問に思いながらそちらに歩を進める。


「ほら。これ」

浮かれているようには全く見えない眼光の鋭さで窓の向こうから杖を差し出す。キャシーはいつの間にかリーンの背中に引っ付いていた。

「うわぁぁぁ。ありがと!ありがとう!」

瞳をキラキラさせて大喜びで受け取ったリーンが、大人しく家の中に居られる訳が無い。そのまま家の周りの探検(お散歩)に繰り出す事に。

自動的にセオが保護者枠だ。



午前中、草むらをガサゴソしたり木のウロをつついたりして大満足に過ごしたリーンはそのまま午後のお野菜育てよう計画にセオを誘った。

参加者はリーン、セオ、キャシー、見知らぬ子供、見守り役のフレディだ。何か増えてる。


もちろん知らないのはリーンだけでキャシーもセオも知っている。村の農家の息子ケネスだ。リーンの一つ上の六歳。

キャシーは性別と年齢の違いで話をした事は無いが、顔は知っている。セオも理由は聞かないでほしいが同じく話した事は無く、でも顔は知っている。

何故、特に仲良くもない村の子供が交じっているのかというとフレディが呼んだのだ。ケネスは彼の甥に当たり、気の弱いフレディがあまりにも前のめりなキャシーのやる気に危機感を覚え、ストッパー役に呼んだ。ミリアに泣きつき許可も得ている。



「えぇと。野菜作るっていうし。うちは農家で、慣れてるから呼ばれたんだぁ。ケネスだよ。よろしくねぇ?」

フレディとの血縁を思わせるひょろっとした体躯、赤みを帯びたウェーブした茶髪に、常に笑っているように見える細めのグレーの瞳。

セオが居るなら自分は必要無かったんじゃ、とか。農作業免除と言うから来たのに野菜作るって何、とか。キャラクター濃そうな貴族の子達のストッパーとか無茶言うな、つーかほぼ初対面、とか。色々と、色々と渦巻く内心は全く表に出さずに愛想良く笑いかけた。


今日ここに来た事で彼の人生は大きく変わる。

この先数十年、マイペース過ぎる友人その1と、無意識に全方位威嚇マンな友人その2に、とことん振り回される未来が決まった。ただ、彼は自分を常識的な一般人だと思っているがそうでもない。

世の中には類は友を呼ぶという言葉があるのだ。




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場所はあっさりと、家の裏手のそこそこ日当たりのいい場所に決まった。

先ずは範囲を決めて縄を張り土作りだ。



「んんーじゃあ〜。まず俺とセオで、ここからあそこまで土を耕すよぉ」

ほい、とごく普通に小型の鍬を渡してくるケネスをセオは

驚いて凝視した。眉間のシワがすごい。

「ちょっとちょっと。セオ、お姫様が怖がってるでしょ〜」

全くもー。セオはあっちからね。と苦笑して、縄で囲った範囲の向こう端を指さされる。そちらに視線を向けてケネスを振り返ると既に作業に取り掛かろうとしていた。

ついでにリーンとキャシーに自分達もやりたいと主張され、リーンは笑顔で断りキャシーはのらりくらりと躱している。

仕方ないので指定された場所に向かい自分も作業を始めた。やった事は無いがなんとかなるだろう。


ケネスとしてはセオは別に関わりたくない相手ではない。

遠目に見て「うわ、顔こわ」と思ってはいたが、問題を起こす人物じゃないのは知っている。不憫だなという印象。

単純に行動範囲と行動時間が合っていないので関わる機会が無かっただけだ。



リーンは耕すところからやる気だったが、笑顔で無理と一蹴されて大人しく見ている。キャシーはほっぺが風船になるかと思われたがケネスが作業しながらあれこれと話しかけてご機嫌を取り、意外にもニコニコ見ている。


フレディは感動に震えていた。うちの甥っ子有能過ぎじゃないだろうか。朝イチで突撃されて訳が分からず、事情を聞いて青ざめた。きっちり監督して怪我をさせずに終われる気がしない。

想像より遥かに平和な光景に、後で甥っ子に小遣いをやろうと心に決めた。



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