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リーン君の大冒険?  作者: 白雲
第1章 幼児期
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この家では朝食と夕食は家族皆で揃って食べる。

ドランは仕事で夕食時に居ないこともあるが、朝食時は大体揃っている。



いつもは起きて支度をした後リーンとキャシーで一緒に食堂に向かうのだが、今日は何故だか起きたらキャシーが居なかった。

寝坊してしまったのかと思ったがそんな事もない。

リーンは不思議に思いながら傾きつつ支度をして、一人で食堂に向かった。


キャシーは既に食堂に来ていてクレアにお説教をされている。朝イチのお説教。なぜ。



食堂の入口で瞳をパチクリさせているとお説教の内容が聞こえてきた。

「フレディが朝早くから馬の世話をしているのは、それがフレディの仕事だからです。お嬢様のお仕事は馬の世話ではありません。フレディの邪魔を………」



「え」

朝イチで行ったのか。ちょっとそれは予想していなかった。慌ててクレアの元に向かう。

「あの!……やくそく!やくそくしてたの!」

焦って助けに来た新米お兄ちゃんを内心微笑ましく思いながら厳しい顔を向ける。

「坊っちゃま、ご挨拶がまだですよ。おはようございます」

「あ。はい。おはようございます」


ちゃんと挨拶したのに、眉を顰められた。なぜ。

「坊っちゃま。坊っちゃまはターナー家のご子息です」

(たーなーけ?)

「貴族の一員なのですから、我々平民に丁寧な言葉を使ってはいけません」

(…………きぞく)



クレアは厳しい表情を保ったまま、リーンの向こう側で苦笑している主家の夫妻をチラリと見た。

やはり伝えていなかったらしい。

パチクリと瞬き、こちらを見上げながら徐々に徐々に横に傾いていく小さな体を無言でスッと真っ直ぐに直した。不思議そうな顔をされた。





「ははっ貴族と言ってもほとんど平民と変わらないのだけど。……そうか。リーンは知らなかったのか。悪かったね」

疑問だらけの顔で食卓についたリーンに、食前のお祈りが終わって直ぐにドランが説明してくれた。



この国では高位貴族として公爵、侯爵、伯爵の三つ、下位貴族として子爵、男爵の二つ。そして更にその下に準男爵と士爵の位がある。現在公爵位は空位になっているが。

リーンの家、初めて知ったがターナー家という家はこの士爵に当たる。



高位貴族や下位貴族と呼ばれる家はそれぞれいくつかの街や村を含んだ領地を持ち、領主として管理する権限がある。権限があるというだけで領地を持たない貴族も居る。

そして準男爵は街、士爵は村を単体で管理する権限がある。場合によっては準男爵は街に付随する村も含めて管理する。


これらが居ない場合も多々あり、そういった場合は街だと領主が直接管理するか領主が定めた代官が管理する。村は特に代わりの者は置かれずに近くの街の代官や準男爵が管理するらしい。一応まとめ役のような平民は居るものだが。



つまりこの家は正しく "村長さん" だったというだけだ。但しリーンは村のまとめ役の平民だと思っていた(そのパターンしか知らなかった)ので、予想よりちょっと公的な身分が高かった。


実際は村のまとめ役の平民と士爵では出来る事もやらなければならない事も大分違うが、その辺はもう少し大きくなってからお勉強だ。

大きな街道に沿った賑わっている村ならともかくマルツ村のような農村の場合、士爵と言っても収入は平民と差程変わらないのは確かだし。




ウンウンと聞いているリーンの斜め向かいでキャシーもウンウンと頷いている。絶対分かっていない。

キャシーはリーンがお説教を終わらせてくれたのでご機嫌だ。

「リーンが大きくなったら私の仕事を継ぐのもいいし、他にやりたい事があればそれでもいい。子供達のうち誰かは継いでもらうけれどね」

「旦那様、気が早過ぎますよ」

クスクスとミリアが笑い、それもそうだとドランが頭をかく。



本来士爵位は一代限りで世襲制では無い。が、村の管理をしている士爵は特に問題が無ければ親が隠居する際にその子供が新たな士爵に叙爵される。


この国では士爵位に限らず女性も家を継げるのでキャシーが継ぐ事も出来る。また、継ぐのは第一子である場合が多いが特に決まりは無いし、直系の血筋である必要も無い。

条件としては先代の子供(養子含む)であり、先代が指名し主家が承認した人物というだけだ。




一見柔軟で素晴らしい制度に思えるがターナー家のような家はともかく、金も権力もある高位貴族などにとっては骨肉の争いの元である。

そういった家では直系の第一子に問答無用で相続すると定めている場合が多い。

それでも、ドロドロするところはドロドロするが。



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