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【警告】青井青空は天才すぎるんです!!!!【警告】

初めて連載小説を書くことにしました。ご評価、ご感想の程、よろしくお願いします!!!

 

 向月高校。




 愛知県は名古屋市に二百年前に設立されたその学校は、ある程度近所では知名度のある学校である。




 いわゆる進学校というやつで、その高校に通うということは同意義で、まあそこそこの偏差値を保有していることを示しているからである。




 しかし、向月高校の特徴といえば逆にそのくらいなものだった。




 なんなら全国を見渡せばそれくらいの学力を誇る学校というのはごまんとあるものだし、つまりありていに言ってしまえば、その学校はまあよくある平凡な学校であった。




 しかし、そんな向月高校には代々昔から、綿々と語り継がれる一つの噂話があった。




 いわく、この学校には「Z団」といわれる秘密の組織があり、その組織がこの学校、いやここら一体の土地を支配している、とか。




 曰く、そのZ団の団員は、この学校の中から選ばれたえりすぐりのエージェントたちであり、その正体を知ったものは秘密裏に始末される、とか。




 曰く、そのZ団の名が示すところの「Z」には、隠された意味があるのだ、とか。




 そんな類の噂話である。




 もちろん、この噂話を疑うものは多数いたが、この噂の恐ろしい点は、そういった噂話を疑う者たちがある時期から不意に姿を消すようになるというものだった。




 それも、姿を消すものは二、三日すると不意に姿を現して、みな一様に「Z団はある」と口にするのだった。




 そんな訳で、向月高校の中では、「Z団」の名を口に出すことは半ば、タブーのようになっていた。




 勿論、そんな学校の中にも年に数人、その名を口に出してしまう馬鹿者はいた。




 しかし、そんな彼らも例外に漏れず、数日後に「Z団はある」と口に出すのである。




 その度に学校の生徒たちは改めて「Z団」の恐ろしさに震えるのであった。










 ==================================








「先輩、先輩。僕ずっと聞きたかったことがあるんですけど。」




「なんだい、百彩くん。虹原百彩くん。君も見てわかるだろう、私は生憎、今本を読むことに忙しくてね。始めはどうかとも思っていたんだが、これが面白くてね。恋愛小説というのは読んだことはなかったが、人間の理解不能な機微を学ぶいい材料だね。いやはや、もっと早く読むべきだったな。」




「はあ、それは結構なことですけれど。しかし恋愛小説というもので人の機微を学ぶことは、あまりお勧めはしませんよ。恋愛小説というものは、行き過ぎな部分がありますからね。」




「行き過ぎ?例えば、どんな部分がだい?私は、本当にこういった事柄の知識に疎くてね。ぜひ、ご教授願いたいんだが。」




「いろいろありますよ?ほら、例えばヒロインが主人公に頭を撫でられただけで好きになってしまったりとか、例えば、主人公と昔、結婚を約束した幼馴染がもう十年もたつのに主人公のことを思い続けている、とか。前者に関しては、主人公の手からどんな快楽物資が出ているんだって感じですし、後者に関しては幼馴染、よくそんな小さい頃のこと鮮明に覚えているなって感じじゃないですか。」




「どうなんだろうな。私はそれがあり得ることなのか、ありえないことなのかもあまり判断はつかないけれど。」




「ほら、先輩その本貸してくださいよ。この本を題材にじゃあご説明します。ええっと、なになに...『武夫の熱く煮えたぎる、肉棒がジェシーの熱くたぎった秘所を』って、先輩、これ官能小説じゃないですか!!!!!!!!」




「うん、この本は官能小説というものだよ。ほら、表紙に書いてあるじゃないか。『日本人、極太――――




「そんなもの、ここで読まないでくださいよ!!!!」




「いや、何を恥ずかしがることがあるんだい。恋愛小説と官能小説なんて同じようなものだろう?人間が心で性行為を行うか、実際に性行為を行うかなんて大した違いじゃないよ。」




「全国の恋愛小説ファンに殺されますよ!!!壁ドンされちゃいますよ、それも腹にドンってされちゃいますよ!!!もはや、腹パンですよ!!それこそニッチな官能小説みたいにされちゃいますよ!!!!」




「ふうん、そんなものなのかな。まあ、私はまだまだ人の機微については若輩者だからな、君がそういうのならそういうものなのだろう。」




「というか、先輩、どこでそんなものを拾ったんですか...先輩が官能小説を書店で買っているところなんて想像できませんよ。」




「ああ、これは父さんの部屋に以前忍び込んだ時に発見したものでね。なんとなく気になったものだから、持ち帰って来たんだよ。」




「はあ...なんとなく気になったから持って帰って来たって、お父さんが聞いたらきっと真っ青になっちゃいますよ。大事な大事な娘さんに性癖がばれたなんてことになったら、僕だったらきっと死にたくなります...」




「まあ、あと数日すれば部屋に返しておくさ。ペンで考察を書きこんでしまったが、きっと大丈夫だろう。逆に喜んでくれるかもしれないな、父さんも好きな本を私と共有出来てうれしいだろうから。」




「もう、何も言いません。先輩のお父様が絶望から発狂してしまわないことをただ、祈るだけです。それより青井先輩。なんだか話がそれてしまいましたが、僕、質問があるんです。」




 僕は気を取り直して、目前でまた本を広げ始めた先輩を見つめた。青井青空、僕より一つ上の二年生で、この学校の有名人。僕の聞いたことのある限りだと、なんといったか有名な数学の大会で、あまりの聡明さから並みいる天才たちが普通ならば一問解くのがやっとという問題達を片っ端から解いていって、結果時間を残して全問正解という偉業を成し遂げ、以降殿堂入りになったあるらしい。実際、僕は彼女がその大会のトロフィーを雑に押し入れに押し込む姿を目撃したことがあった。加えて彼女の容姿は非常に整っていて、その憂いに満ちた青い瞳や、その特徴的な澄んだ海のような色の髪から、彼女は「向月高校の天才マーメイド」とまことしやかに呼ばれていた。




「うん?質問?ああ、さっきもそんなことを言っていたね。まあ、君はさっき私の質問に答えてくれたばかりだからね。いいよ、ギブアンドテイクというやつだ。私に答えられることならばなんでも聞くがいい。」




「はい、じゃあお言葉に甘えて。あの、僕ってもう一か月、ここで先輩方のいう『部活動』をしているわけじゃあないですか。」




「ああ、そうだね。確かに君はもうこの部に入って一か月になる。早いものだね。」




「はい、色々な、本当に色々な事がありましたね。僕は一か月前、ここに半ば強制的につれてこられた形ですが、しかしそのお陰で高校生活は今、とても充実しているように感じられます。」




「ああ、それは素晴らしいことだね。私は勿論、今はどこかに出かけている他のやつらもきっと嬉しがっているはずさ。なんたって、君は当初、本当に死人のような顔をしていたからね。」




「はい、本当に皆さんのお陰です。でも、少し、本当に少しですよ?心に引っかかるものがあるのです。」




「ふうん、で、その引っかかるものを私に尋ねたいのだと。いいさ、聞かせてもらおうじゃないか。どんと来いというものだ。」




「はい、先輩は本当に話が早くて助かります。では、単刀直入に聞かせていただきます。」




「先輩、この部活ってなにをする部活なんですか?」




「色々とこの一か月間しましたけれど、たいていはこの部室でだらだらとお茶を食べたり、みんなでゲームで遊んだり、駄弁ったりしてばかりじゃないですか。それに、それにですよ。一番の疑問点は部の名前です。『Z部』ってなんですか、『Z部』って。僕らの活動のどこらへんがZなんですか、そもそもZって何ですか!!!」




 僕は息を荒げながらひと息でそう言い切った。なにか、心のそこに溜まっていたモヤモヤがあふれ出したようだった。先輩はそんな僕を見てにやりと笑った。それは、何処か怪しげな笑みで、この瞬間の写真を切り取れば先輩はまるで美しい森の奥に住まう魔女のようであった。




「ふふふ、そうか、そうならば仕方がない。申し訳ないね。私はその疑問に答えることはできない。」




「えぇ!!でも、先輩さっき私に答えられることなら。なんでも答えるって言ったじゃないですかぁ」




 僕はガックリと肩を落とした。




「まあ、そう落ち込むなものではないよ。別に私だって鬼じゃない。何一つ答えないというわけではないよ。ヒントは出すよ、ヒントは。ただ、直接こうだというのは教えられないというだけでね。それが、この部の面々と受け継がれてきた伝統なのだ。」




「伝統ですか?」




「ああ、伝統だ。すまないが、ここだけは曲げられないよ。私はこの世の偏見という偏見を嫌い、伝統という伝統を正すべき科学者の立場にあるけれど、しかし案外、この伝統を私は気に入っているんだ。」




「はあ、先輩がそこまでおっしゃるなら仕方がありませんね。僕も先輩に強引に迫ってまで聞き出そうというわけではありません。興味があるというだけなんです。」




「君、知的好奇心は素晴らしいことだよ。科学はいつだって、ちっぽけな興味から始まるものさ。」




「はあ、ではどうぞ、ヒントを出してください。なんとか、僕も足りない頭を振り絞って考えてみますから。」




「そう落ち込むものでもないさ。そうだな、申し訳なさ代わりに君にご褒美を上げようじゃないか。この本に載ってあったんだ。男は女のスリーサイズを知ることが出来ると喜ぶものなのだろう?」




「せ、先輩のスリーサイズを教えていただけるんですか!!??」




 青井先輩は学校ではスレンダーな美人として通っているが、しかし実際のところ、結構着やせするタイプである。その情報はすこし前にZ部のある人物から、購買の肉まんと交換で手に入れた。




 僕はごくりとつばを飲み込んだ。




「ええと、こんなことでスリーサイズなんて大事なものを披露しても大丈夫なんですか?!」




「ああ、別に自分の体のサイズに恥ずかしさを感じるようなことはないからね。君も足のサイズを人に教えることになんの抵抗も感じないだろう?私にしてみれば、この条件で君が納得してくれるなら、願ったりかなったりといったところだ。」




 それはそれで潔すぎるだろうとも思ったけれど、そんなことよりも僕は自分の脳がウォーミングアップを始めたのを感じた。負けられない戦いがここにある!!!!






「では、先輩、よろしくお願いします!!僕はもう準備満タンです、ばっちこいです!!!!」






「あぁ、なぜ君がそこまで息を荒げているのかは、あまり追求しないことにするよ...じゃあ、ヒントを出していこうか。ヒントは三つだ。」




「一つ目にZ部のZは日本語の以外の言葉を表しているわけではない。つまり、例えばZEBRAやZENITHといった言葉は入らないということだ。」




「二つ目に、その言葉は決して正確であるというわけではない」




「三つ目、それは私たちの活動内容でもある」




「さあ、それでは考えてみてよ。ちなみに制限時間は他の連中が遊びから帰ってくるまでだね。さっき電話で、連絡があって今、出発したらしい。まあ、憶測で大体あと十五分というところだろうね」




 先輩はそれきり口を閉ざした。これ以上、ヒントを出してはくれないようである。


 僕は限られた制限時間の中で、ああでもないこうでもないと考えを巡らせた。




 少しの時間がそれから経ち、部室の窓からは騒がしい人目を引く集団が見受けられた。部の他のメンバーが帰ってきたのだ。




「さあ、答え合わせの時間だ。君の結論を聞かせてくれよ」




「もちろんです、先輩。答えを聞いた後にやっぱり恥ずかしくなって、スリーサイズを教えないというのはやめてくださいよ?」




「ああ、心配しなくても大丈夫さ。とは言え、そこまで自信があるということは、会心の答えが出たということなんだね」




「はい、では言いますよ。Z部のZは、つまり『ぞうきんのZ』を意味しているのです!!!!!この部はぞうきん部なのです!!!!」




 そう僕が言いのけた瞬間、先輩の顔が下を向いた。きっと、僕の頭脳のあまりの聡明さに恐れ入ったのだろう。




「な、なぜ、ぞうきんなのかな。理由を聞かせてもらいたいな。」




「はい、では答え合わせの時間です!!!まず一つ目のヒントですが、もちろん『ぞうきん』は日本語です。そして二つ目ですが、自分は何度か雑巾を使ったことがあるのですが、あれは正確に床の誇りをとれるというわけではないのです!!!」




「じゃ、じゃあ、三つ目のヒントは?」




「はい、三つ目のヒントですが、これは正直あまりよく最初はわかりませんでした。しかし、ここで逆に雑に、おおざっぱに考えてみたのです。そうすると、雑巾という答えの全体像が見えていました。そう、僕たちがお菓子を食べたり、遊んだりする行為は最終的に掃除を必要とする、つまり雑巾を必要とする行為だったのです!!!!」




 僕は、そう言って胸を張った。先輩の顔は前髪に隠れていたけれど、やはりスリーサイズを人にさらすことを恐ろしく感じられた来たのだろう。しかし、僕も男である。ここで、変な優しさを見せたりはできないのだ!




「先輩、ということでほら、先輩のスリーサイズを教えてくださいよ!披露しちゃってくださいよ!」




「ああ、もちろん披露するとも。しかし、それもこれも君が正解していたらだ。」




「はあ、そんなにもったいぶらなくてもいいじゃないですか。正解なんでしょう?」




「いや、当然不正解だよ。」




「へ?不正解?」




「ああ、不正解だ。一ミクロンだって、かすってすらいない。」




 先輩はそういって、顔を上げた。僕を見つめてぷるぷると震えながら、笑いをこらえとうとして、しかし如何ともこらえきれていないというような表情だった。




「というか、何故本当に君はその論理が正しいと思えるのだ。そんな答えを出してきた馬鹿者は歴代、見たことがないぞ」




「なんでだよぉ...これしかないと思ったんだけどなぁ」




「いや、逆にそれ以外しかない代物だろう。私たちがこれまで本当に学校の清掃のために、この部活動を行っていたと思っていたのかね?」




「まあ、ちょっと自分でもおかしいなとは思っていましたが...」




 そう落ち込む僕を先輩はまた、笑った。ひどい先輩だった。




「で、結局Z部って何をする部活なんですか?」




「教えられるわけないじゃないか。まあ、いつか、そうだね、あと一年もすれば君も分かるさ。」




「はあ、そういうものですか」




「ああ、そういうものさ」




 先輩はそこで本を置いて立ち上がって「ほら、他のやつを迎えに行こう」といった。廊下がなんだか騒がしい。僕は肩を落としながらもそれに続いた。そして、僕が部室のドアを開けようとしたときに、先輩がつぶやいた。




「六十センチだよ」




 僕は「はい?」と聞き返した。




「だから、僕のウエストは六十センチだよ」




「え?なんで、教えてくださったんですか?」




「まあ、確かに答えは間違っていたけどね。途中ででできた考えかたは、ニアピンだったということさ。」




「ニアピン?ということは、そこから辿っていけば、答えにはたどり着けるということですか!」




「ああ、まあ遠くはないだろうが、きっとね。」




「やったぁ!先輩、どこが近かったんですか?」




「いいや、そこは言えないね。そこは君が考えるべきところさ。」




 そういって先輩は、向こうから手を振るうちの部活の赤髪ちびっこの所へ駆け出して行ってしまった。僕は、自分


 の思考を思い出しながらも、頭の中に急上昇した情報を思い返していた。








 ウエスト、六十センチかぁ。流石、向月高校のマーメイドだな!!!!


 

ご評価、ご感想よろしくお願い奉り申し上げます!!!!


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