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ディアナ嬢と親しくなりたい

ふと、物思いから顔を上げるとディアナ嬢は車窓を見ていた。彼女は俺が何か考えていたり何かしたりしているときは邪魔せずそっとしておいてくれる。


"俺にはディアナ嬢がいる"


そう思うと先ほどまで感じていた喪失感は薄れていった。


"ディアナ嬢ともっと親しくなりたい"


俺は久しぶりに自分から何かを望んでいる、と感じた。

母上が亡くなってから、何かを望む度うまくいかなかった。

その度に無意識下ではもう望むまいと自己暗示をかけていたように思う。


前世を思い出してから、冷静に自分のことを客観視できるようになり、また何かを望む余裕ができたようだ。


この気持ちの変化は、乙女ゲーム内の俺には起こらなかった事象だろう。


よし、

ディアナ嬢と仲良くなろう!


この間のお茶会や過去の交流などを思い返してみると、まったく恋人っぽくない。

6歳のときから婚約者だが、1ヶ月ないしは2ヶ月に一度のお茶会でしか会っていなかった。

そのお茶会は、俺にとってもディアナ嬢にとっても義務であり会いたくて会っていたわけではない。


乙女ゲーム内の二人を思い返してみても、あまり親しそうには思えない。ヒロイン視点だったから正直二人がどういう関係だったかわからないが、少なくとも学園での課題である領主代理グループは同じではなかった。それに、二人でいるシーンもほとんど描かれていなかった。



"彼女と同じ領主代理グループになれるよう頑張ろう"


俺が気持ちを新たにしたところで馬車が停まった。学園に到着したようだ。



「到着したようだね、行こう」



俺は先に馬車を降り、ディアナ嬢に手を差し出した。ディアナ嬢は優雅に手を添え馬車から降りた。


学生たちが一気に俺たちに視線を注いだが話しかけてくるそぶりはない。


学園内は身分関係なく接するようにという方針だったが、流石に王族や公爵家令嬢に話しかけてくる者はいないようだ。


「会場に着いたら挨拶などで別行動になるが、またクラスルームへ行く際エスコートしよう」


ディアナ嬢は少しビックリした顔をした後、微かに頬を染め頷いてくれた。


"良かった"


俺は久しぶりに心が軽くなったような気分だった。

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