入学式前夜(2)
攻略対象四人目。
宰相の息子のアベール・モンテーニュ。
侯爵家の嫡男で、現王妃マリアンネ様の甥。悪どいことにも必要とあらば手を染める度胸があり、野心旺盛。レオンハルトが優しすぎるきらいがあるため、彼が悪の部分を担当するという役どころだ。
だれ恋では、ヒロインを利用できるのではないかと近づいたが、あまりにも純粋すぎる考えに浄化されるかのように惹かれていく。
俺との仲は良くない。
なぜなら、俺の母上は宰相に殺されたようなものだからだ。
俺の母上は、隣国アルストロメリア帝国の王女で友好関係継続のため、我が国アガパンサスに輿入れした。その当時、我が国の王太子には、婚約者だったマリアンネ様がいたが、魔法大国として繁栄していたアルストロメリア帝国との不均衡差が目立ち始めていたため、我が国の王妃として王女を迎えるから和平協定を継続してほしいと当時の我が国の王が願い出たのだ。
そのため、母上の立場は絶大だった。だが、出産後は体調を崩しがちになり公務も滞っていた。
そんなとき、リハビリにと宰相が勧めてきたのが孤児院への訪問だった。慈善事業の一貫のため、行くだけで領民は喜ぶ。母上も体調が良くなってきていたこともあり快諾したのだが、そこで伝染病にかかってしまったのだ。
マリアンネ様の兄である宰相の推薦、そして、タイミングが良すぎる王妃への伝染。裏があるとしか思えなかった俺は、調査を依頼した。
しかし、たまたま孤児院内に症状の出ていない孤児がいただけという調査結果しか出てこなかったのだ。
そのため、宰相は不問に付されることとなった。本来であれば王妃の命に関わることなので厳しく罰されなければならないが、死亡の起因が伝染病ではなく元々の病による衰弱が大きいと判断されてしまったこと。また、母上が死ぬことにより次期王妃となるマリアンネ様の兄ということも、大きく加味されただろう。
ゲームの知識で補完するならば、やはり宰相が伝染病の孤児をあえて孤児院に受け入れており、そのことをアベールも知っていた。第二王子を王にするためとはいえ、この悪事が必要であったか悔いている、そして、自分が宰相になったときはこんなことを起こさない宰相になりたいとヒロインに打ち明けていた。
攻略対象五人目。
魔法師団長の子爵家嫡男、ヒューリスティ・エマニュ・ドーゲン。
次期魔法師団長と黙されている男で、魔力量が多く力量もある。だが、我が国アガパンサスでの話だ。我が国で最高と言われる力量でも、俺の母上の母国アルストロメリア帝国においては実力にれっきとした差がある。
俺は、母上から受け継いだ魔力量、また、一子相伝による呪文があるため俺に敵う者はいない。そして、それを魔法師団に教授する予定も今のところはない。
だれ恋では、ヒロインが稀有な治癒魔法を使えたため魔法師団で指導していくこととなり、指導役にヒューリスティが選ばれた。指導していく内に、心を通わせていくというありがちな展開だ。
ゲーム内の俺は、魔法を駆使してヒューリスティに濡れ衣をきせていく。俺が稀有な魔法を使えることは秘密にしていたため、稀有な魔法を使えば皆魔法師団の仕業だと思い、勝手にヒューリスティへ濡れ衣を着せていけた。
現状、ゲーム内の俺と同じように俺も稀有な魔法が使えることは開示していないが、濡れ衣を着せるほどヒューリスティに思い入れがあるわけでもないため止めておこう。
最後に攻略対象ではないが、ヒロインについて考えてみる。
ドレスデン男爵の養女となり、サファイア・ドレスデンとなっているが、元平民である。
稀有な治癒魔法が使える者は、平民であってもどこかの貴族の養子となり、国で保護されることになっている。それほど、治癒魔法というのは特別なのだ。
風貌は、美人というよりも可憐で、ピンク色のフワフワの髪、天然の可愛さを備えている。
だれ恋では、誰か一人と恋に落ちるためハーレムエンドはないが、貴族にはあまりいない天然の可愛さなので誰もが恋に落ちそうだ。
第二王子に恋しないようにだけ注意して見張っていよう。