司教の娘(1)
ほどなくして、サンジュリアンが相談室に入ってきた。
「サンジュリアン、司教に私が来ることを漏らしたな」
サンジュリアンは申し訳なさそうに頭をかきながら
「面目ない。妹が助かると思うと嬉しくてつい」
「………最近、つい、とか、言いたくなって言った、とか言うやつが増えたな。最近の貴族は素直になったのか??」
俺はげんなりしながら小声でぼやいた。
「正攻法にしてよかったよ、まったく。私の計画がとんだ茶番になるところだった」
「レイモンドは何か企んでいるのか?」
「ロデルナの領主にエドモンをつけたいからな。企んでいたが先程正攻法で問題なく司教の推薦を得ることが出来た」
「そうですか」
「それはそうと、サンジュリアン。君はレオンハルトの側近候補だ。今回限りで私に気安く話しかけないでくれるか」
「なぜ。第二王子殿下の側近候補になった理由は、俺の出身を知ってるお前ならもうわかってるんだろう。だから幼少のときからの友として付き合っても」
「何を言ってる。理由など知らん。王太子争いがこれから始まる。どちらにも良い顔していると身の破滅を招くよ」
「そんな!どちらにも言い顔をしてるだなんて」
俺は王妃の怖さを知っていたため警告も兼ねてあえて冷たい口調で言った。
そして優しいサンジュリアンが今回の件で俺に恩義を感じて親しく接してくるのを防ぐためわざと傷つける言い方を続けた。
「私は去った者を追う趣味はない」
"お前、王妃に目をつけられるなよ"
「さぁ、この話は終わりだ。早く妹さんのところに連れていけ」
「………わかりました………殿下」
今まで話したことに対するわかった、なのか、どうなのか、気にもなったがまぁ行くとしよう。
相談室を出て、教会の敷地奥に司教の住まいがあった。妹はどうやら司教と一緒に住んでいるらしい。家の前で司教が待っていた。
「遅かったね」
司教が暗い表情のサンジュリアンにそう話しかけた。
「わるい」
サンジュリアンは軽く謝りつつもそれ以上は話さなかった。
司教はそんな様子を見て呆れつつも、俺たちを娘さんがいる部屋へと案内していった。




