デートの帰り
窓の外に公爵邸が見えてきた。
"そろそろ姿を戻さないとな"
俺は髪型を手で直し、肌色を元に戻した。服装はどうしようもない。
「そろそろ公爵家に着く。服装を着替えている時間はないが、公爵にはちゃんと説明しておくから」
「はい」
ディアナ嬢に話しかけたが、どうやら上の空だったようだ。
「どうした?」
「………」
「………。今日は怖い思いをさせてしまった。疲れたか」
「え、ええ。少し」
「そうか」
「殿下は魔法がお上手なのですね。学園入学したてなのに」
俺は、魔法が得意というあまり公にはしたくない話だったのと「殿下」という呼び掛けに心の中が冷えるのを感じた。
"結局一度もレイと呼んでくれなかったな"
「も、申し訳ございません。魔法を使われている姿を今日は何度も拝見したものですからつい」
「あぁ。別に構わないよ。ただあまり上手でもなんでもないから、あまり話さないように」
俺はあまり他言して欲しくないことをそれとなく伝えた。
「承知致しました」
ディアナ嬢は頭を下げ、臣下のような接し方になってしまった。
"ディアとは一歩進んで二歩下がるイメージだな"
「はぁ」
俺はなんか悲しくなり溜め息をついてしまった。
公爵邸に着き、馬車が停まったため、俺は先に降りディアナ嬢に手を差し出した。ディアナ嬢は何やら手を添えるのを躊躇っていたが、支えなしで降りるわけにもいかず、最終的には手を添え降りた。
俺は、ディアナ嬢ともう少し一緒にいた方が良い気がしたが、ディオルゲルが迎えに出ていたため彼女と別れるしかなかった。




