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お忍びデート(2)

ロデルナは貧しい街だから市場もひっそりしているかと思ったが、小さいお店でひしめいており、地元の人で賑わっていた。


「屋台で何か食うか?」


「え。でも……」


「どうした?」


「衛生面が気になりますわ」


「口調」


「っ!衛生面が……気になるわ」


「大丈夫だ。俺が浄化魔法で無害にしてやるから問題ない」


「え、あ、魔法?…おれ?…え、あ。あ。ありがと………ございます?」

ディアナ嬢はしどろもどろになりながらも返事した。


「どうした?変な声だして。俺に緊張してるのか?」

と顔を近づけて聞いてみた。


ディアナ嬢は、ボンッと音がなるのではないかと思うくらい真っ赤になり俯いてしまった。


「なんか食うぞ」

俺はそう言い、手をひっぱり美味しそうな匂いがしている串海老の屋台に行った。


「串海老2つくれ」


「お、兄ちゃん、デートかい?そんなきれーなねぇちゃんに串海老は食べにくいんじゃないか?いーのかい?」


「俺が食いたいんだ」


「そんなんじゃフラれるぞ」


「そりゃ困るな。ディア振るかい?」

俺は振り返り、まだ俯いているディアの顔を覗き込んだ。


ディアナ嬢はバッと顔をあげ、

「や、止めてくださいっ!」

と後ずさられた。


「兄ちゃん。無理強いはよくねぇぞ。いくら顔が良くても嫌われる」

と可笑しそうに冷やかしてきた。


俺は頭をガシガシかきながら、

「どうしたんだ?そんなに串海老が嫌か?」


「そういうことではありません!」


俺は目を細めながら声を出さず口だけ動かし、「口調」と言った。


「っ!」

プシューと音が出ているかのような顔でディアナ嬢は話さなくなってしまった。


「親父、俺が2本とも食うからくれよ」


「はいよー!仲良くやりなー!」と言いながら、おまけに1本入れてくれた。


俺は素早くお金を払い、食べれそうなスペースを見つけた。


「食うか?」

俺は一応差し出したが、ディアナ嬢はフルフルと顔をふるだけだった。


仕方がないのでディアナ嬢の耳の側に顔を寄せ、いつもの口調に戻し小声で話しかけた。

「ディアナ嬢、本当に嫌なのか?」


「い、いえ。そういうわけでは」

小声でディアナ嬢が返したきた。

 

また、小声で

「嫌でも少し付き合ってくれ。ロデルナの名物になりそうな屋台を見つけたいと思っていてね」

俺はそういうと、顔を離し、串海老を殻ごとバリバリ食べた。


「うん、うまい。これは手を出すまでが躊躇われるが、食べてしまえば10本はいけるな」


そう言いながら3本あっという間に食べてしまい、また歩こうとしたとき、


「い、嫌ではないわ!今度こそ私も食べるわよ!」


なんとなく怒った感じで、俺の手をむんずと掴みながら屋台の方向へ連れていかれた。


俺は苦笑しながらも抵抗せずついていった。


それから彼女は甘く焼かれたりんご飴を見つけ、頬張って食べた。


「美味しそうだな。一口くれ」


「ほぉえ?ま、待って。甘いの嫌いって言ったじゃない!だから1つしか買わなかったのにっ」


「ディアが食べてるの見たら食べたくなった」


「何よそれ!あげないんだから!」


焦った彼女はりんご飴の飴を頬につけてしまった。


「ついてるぞ」

俺は頬の飴を手で拭ってやり、それを舐めた。


「甘いな」

俺はそう言いながらも、ニヤッと笑った。


ボンッ!彼女は予想通りまた赤くなった。


"なんか癖になるな、このやりとり"

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