新たな気持ち
俺はアランに相談できたためスッキリしていたが、なかなか夜寝つけなかった。
"庭園でも少し散歩するか"
外に出ると満点の星空に迎えられた。
"あー。夜風が気持ちいいな"
前世の記憶を取り戻してから、なんとなく俺が俺じゃない感覚に陥り、どこか上から自分を眺めている、そんな気分を味わっていた。
だけど、アランに会い他愛なく本音で話しているうちに前世とか今とか関係なく、今感じている気持ちが俺なんだ、と思えるようになった。
"前世の記憶は知識として活用して俺は俺として生きよう。前世の俺も含めて俺なんだ。俺の街がみすぼらしい、と感じたのは、今の俺がそう感じたんだ。だから、今の俺がなんとかすればいいだけの話で、前世の俺が思っている訳じゃない。悪役になる、悪役にならない。そんなことよりも今を大事に生きたい。母上の敵を撃ち、それで迎えるのが断罪だったとしても受け入れよう"
"あー、本当に気持ちいいな"
何故か涙が滲んだ。
「殿下」
護衛騎士のエヴァンが話しかけてきた。
「昔はよく、こうして散歩されていましたね。私の目をかいくぐろうと窓からロープを垂らして行ったり、魔法が使えるようになると2階から飛び降りて行ったり。散歩なんですから堂々と行ってくださいと言ってもいうこと聞かず、ご自分の部屋を飛び出して」
エヴァンはいつになく饒舌だった。
「どうしたんだ?昔語りなどして」
「いえ。殿下が何やら昔みたいなことをされていると懐かしく思いまして」
今日は普通にドアから出たぞ、と言おうかとも思ったが、そういうことではないのだろう。
「そうか」
とだけ言っておいた。
「殿下、私はエンフィーネ様と共にこの地にやってまいりました。そして、今は誠心誠意、殿下にお仕えしております。私をご活用下さい」
「ああ。そうだな。明日は少々街に降りる。準備しておいてくれ」
俺は、前世の俺が融合したことによって感じる感情も大事にすると決めたため、明日は学園の帰りに貧しい街でも見に行くか、と心の中で呟いた。




