第十八話 鑑定
さて、武器もそろったしあとは生活雑貨とかを揃えたい。
食器や寝具、大きいタライとか野宿なんかに使う物だな。
お金はかなりあるからいいものを揃えたい。
「ついでと言っちゃなんだけどせっかくお金も入ったし野宿に使う雑貨類なんか売ってる場所も見たいんだけどいい?」
「あ、うん、いいわよ」
ん?
今なんか一瞬、悪い顔しなかった?
気のせいかな。
「じゃあ、こっちから行きましょ」
嫌な予感がしつつもモトカの案内についていく。
途中の巻物が沢山ある店の前でモトカが止まった。
「あ、そうそう、ここで鑑定のスクロールが売ってるのよ。欲しいなら買っていけばいいんじゃないかしら?」
ん?
なんだ?
やけに棒読みなセリフだな。
まあいいか、確か白金貨十枚だっけ。
後々役に立つだろうにこの後買い物するのに騙されたりしたくないから買ってみるか。
やっぱり鑑定は快適に暮らすうえで大事だもんな。
「うん、買ってくよ。お金もあるし必要だと思うから」
「そ、そうね。そのほうがいいわよ」
なんか様子がおかしいな。
とにかくさっさと買ってしまおう。
「すみませーん。鑑定のスクロールください」
「はい、いらっしゃいませ。鑑定のスクロールですね……白金貨十枚ですが……お手持ちはございますか?」
「はい、白金貨十枚。これでいいですか?」
「おお、失礼しました。お若いのにそんな大金をお持ちとは、さてはいいダンジョンでも引き当てましたかな?」
「まあ、そんなとこです」
店主が店の奥から木箱を持ってきた。
「全く、羨ましいですねぇ。はい、こちらが鑑定のスクロールです」
「はい、ありがとうございます」
「ええ、ありがとうございました」
「へ、へーー。それが鑑定のスクロールなのね。めったに見れないからちょっと触ってもいいかしら?」
「ああ、触るだけならいいよ」
モトカに鑑定のスクロールを渡す。
するとモトカは鑑定のスクロールを手に取り、紐を解いてスクロールを開いた。
「ん? スクロールって開いたら使用されちゃうんじゃ……」
スクロールが薄っすら光ってモトカに光が流れ込む。
あ、あれ?
もしかして使っちゃった……?
「あ、ごっめーん。触るだけのつもりがスクロール開いて使っちゃった! テヘペロ☆」
「お、おい……」
「でも、まだお金あるしもう一つ買えばいいわよ。これは服と宿代のお返しってことで受け取っておくわね☆」
や、やられた……
こいつスクロール二つ分のお金を持ってることを知っててワザとやったな……
服と宿って言ってもせいぜい金貨一枚分だろ。
だいたいその鎌鎚も白金貨数十枚はするって武器屋の店主も言ってたじゃんか。
「ウフフ、ありがと☆」
上目遣いでウインク決めてきやがる……
めちゃめちゃ可愛いじゃねえか……
許した!
いや、だめだろう。
あ、まさかコイツ[洗脳]か[魅了]スキル持ちか?
今完全に許してもいいって思っちゃったぞ。
なんて危険な美少女なんだ。
完全に油断してたぞ。
いや、美少女じゃねえ。
こいつは魔女、俺より年上のロリババアなんだ。
油断した俺の負けだ!
「もう、早くしてよ。もう一つ買うの?買わないの?」
「あ、いや買ってもいいんだけどこの後の野宿の道具とかも買わないといけないから予算的に厳しいかもしれないなって思って」
「そういうことならアタシが少しお金出してあげるわよ☆」
「おお、ありがとう。そういうことならもう一つ買っちゃおう。すみません、もう一つください」
待ってましたと言わんばかりに店主が鑑定のスクロールを渡してきた。
はい、これが白金貨十枚。
「毎度ありがとうございます!」
「いえいえ、こちらこそ助かります」
あ?
おい、ちょっと待て。
勢いで買っちまったじゃねえか。
握手会の神対応ばりの笑顔とウインクで完全に騙された。
なんて危険なロリババアなんだ。
迂闊に目も合わせらんねえ。
そしてこの高まった胸のドキドキ、どうしてくれんだよ!
「ほら、さっさと使わないと、またアタシが間違って使っちゃうぞ☆」
ツンツン
「うん! そうだね! さっそく使っちゃおう!」
箱からスクロールを取り出してスクロールを開いた。
スクロールが輝いて俺に光が流れ込む。
おお、これが鑑定のスクロールか。
目に映る物の詳細がわかるようになった。
な!?
ばかな!?
最大限の警戒をしていたのにツンツンだと?
完全に思考をコントロールされていた。
こ、これが魔女の力なのか……?
だが、悪くない。
ツンツンもっとしてほしい!
すべての嫌なことを忘れて暖かい光に包まれたような気分だ。
まるで母親のおなかの中の赤子のような。
そう思える位に幸せな気持ちになれた。
ふっ、そう考えると安い買い物だったのかもしれないな……
!!
まただ、完全に正常な思考を奪われてしまった。
おそらく[魅了]ってスキルなんだろう。
白金貨十枚分のスクロールを勝手に使われたのに全然嫌な気持ちになっていないのだ。
これは忌々しき事態。
今後は最大限の警戒で事に当たらないとな。
「ちょっと、いつまでここにいるのよ。次のお店行くわよ☆」
「うん、今行くよ☆」




