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第十七話 マサムネ

 ふう、何とか手持ちのいらない武器を処分できたな。

 結構な金額になったしまあいいだろう。

 献上品はのんびり返していけばいいだろう。

 別に俺が持ってるなんて知らないんだから遅くなっても問題ないよな。

 あとは俺のメイン武器を決めないと。

 一応ドラゴンキラーもあるけどこれはメイン武器って感じではない気がするしやっぱりカッコいい剣か刀だよな。

 あ、そうだ、その前にこの脇差も見てもらうか。


「この脇差なんかいくらくらいになりますか?」


「お、これは、コテツだな。かなり珍しいし結構な業物だぞ。うちだと買取は白金貨十枚ってとこかな。だがな、ありがたいことにもう買取に使えるお金があんまりないんだよ。刀の専門のとこに持っていけば白金貨十枚以上つけてもらえるかもしれないからそっちに持って行ってみたらどうだ? マサムネって言う刀屋なんだが刀鍛冶もやってるんだ。刀のコレクターでもあるから行って損はないと思うぞ」


 おお、刀専門店!

 しかもマサムネって聞いたことあるな。

 それにコテツもよく聞く刀の名前だ。

 こっちの世界でも有名な感じなのかな。

 とりあえず刀の専門店は興味あるな、そっちに行ってみるか。


「そうですか、じゃあそっちに行ってみます。ありがとうございました」

 

「おう、また来いよー! あと、ちゃんとそれぞれ献上するんだぞー!」


「はい、わかりました」


 店を出て一息ついた。


「ふー。とんでもない目にあったわ。まあいいけど。刀屋のマサムネって場所わかる?」


「何言ってんの? とんでもない目にあったのはこっちよ。あんなにすごい武器次々でてくるなんて、心臓に悪いわ。マサムネならあっちよ」


 モトカの案内で刀屋マサムネについた。

 店と工房が一緒になっているタイプのお店だ。

 金属を一定に叩く音が心地いいな。

 中を覗くと若い男が刀を打っている。

 それを髪を後ろで束ねた白髪混じりの視線の鋭い男が睨むように見ている。

 こっちに気が付く気配がないので此方から声を掛けよう。


「すみませーん、刀を見てもらいたいんですけど」


「おお、お客さんか。すまんな、気が付かなくて。お前はそのまま続けなさい」


 どうやら見た目通り師弟のようだな。

 弟子に指示をして師匠がこちらの相手をしてくれるようだ。

 

「それで、今日はどんな……おおその刀! もしやコテツでは?」


「はい、他の店で見てもらったところコテツだと伺っています。今日はこのコテツの査定をしてもらおうかと思ってきました」


「おお、そうかそうか。やはりコテツだったか。どれ、ちょっと見せてくれ」


「はい、どうぞ」


「おお、まさしくこれはコテツ。鞘と柄はかなりくたびれているがやはり刀身は美しい。地鉄の肌が木の年輪のような筋が丸みを帯びて見える奇麗な杢目肌だ。こいつは是非買い取りたい!」


「それで、おいくらくらいで買い取ってもらえますか?」


「うむ、そうだのう。本来なら白金貨三十枚と言いたいところだが今買い取りに使える額が白金貨十枚ほどしかないのだ。だがコテツを買い取れるチャンスなんて初めてだ。申し訳ないんだがうちの店の刀と白金貨十枚で手を打ってくれないかの。なんなら太刀と脇差のセットと白金貨十枚でもいい!」


 うーん、まあ悪くない条件に思えるな。

 でも、まだ店の刀を見せてもらってないから何とも言えないよね。

 だたおっさんの熱意も分かるし前向きに検討しようじゃないの。


「わかりました。その条件で考えましょう。ただどんな刀があるか見せてもらってからですけどね」


「おおおおお! そいつはありがたい! さっそく見てもらおうかの。こっちに陳列している刀は弟子たちが打った刀で大体、大金貨一枚から十枚ってとこだ」


 どれもかなりいいものに見えるがこれでお弟子さんの打った刀なのか。

 ということはおっさんの打った刀はもっとすごいってことだな。


「いいものばかりに見えますね」


「当たり前だ! うちには鈍らはおいておらんからの! そしてこっちの棚がわしの打った刀で白金貨一枚から十枚ってとこだな」


「おお、やっぱり素人でも凄みが伝わってきますよ!」


 かっこいい刀を沢山みてかなりテンションが上がってしまった。

 剣も考えてたけど今回は刀だな。

 こんだけいい刀を見たら欲しくなっちゃうよね。


「そしてこっちの棚は売りもんじゃないんだが先代たちの最高傑作だ。まあ売るとしても白金貨五十枚は固いな。売らねえがな」


 これはすごい。

 薄っすらオーラが漂ってるように見える。

 まるでトーマの刀のようだな。

 ただこっちはどれも神聖なオーラだけど。


「そしてこれが十二代目マサムネ、わしの最高傑作だ。反りは少なく柾目肌に直刃。肉厚で刀身が長めに作ってある。これは人を斬るために作ったんじゃない。魔物を斬るための刀だ」


 うっすら青白いオーラが見える。

 魔物を斬るための刀。

 反りが少なくてゴツイ、波紋が真っ直ぐな事もあり剣に近い見た目で正直カッコいい。

 さすがに最高傑作は譲ってくれないだろうな。

 先代たちのも白金貨五十って言ってたし釣り合わないよね。


「これは素晴らしい刀です。今まで見た中で一番の刀です。これはほんとに素晴らしい」


「おお、わかるか……。ならばこれを持っていけ」


「え? なんて?」


「だからこの最高傑作の刀を持っていけ!」


「え、そんな、いいんですか? 最高傑作なんですよね?」


 弟子の人もかなり驚いているみたいで刀を打つ手が止まっている。


「いいんだ、このコテツを見て気が変わったんだ。この刀は現時点での最高傑作だが、もっといい刀を打てる気がしてな。だから持って行ってくれ。この刀の切れ味と耐久性はコテツにも勝るとも劣らん。だがこのコテツ、代々受け継がれてきたマサムネとは別の美しさを持っている。だからこそより素晴らしい刀を打てる気がするんだ」


「わかりました。ではありがたく頂戴します」


「脇差も同じく最高傑作のこいつを持っていけ。柄と鞘がお揃いだ。合わせて白金貨八十枚ってとこかな。ハハハハ。最初の約束だ、白金貨十枚もつけてやるよ。持ってけ泥棒!」


「あわわわ、こんなに……」


 押し付けるように二振りの刀とお金を渡してきた。


「さ、気が変わらねえうちに持っていきな! さーて、忙しくなるぞ。あ、そうだ。そいつの名前はムサシ。ムサシマサムネって名前だ。大事にしてやってくれ」


「はい、ありがとうございます」


 そして追い出されるように店を出た。

 結局白金貨八十枚分の刀と白金貨十枚も貰っちゃたな。

 悪い気もしたが、かっこいい刀でついついニヤニヤしてしまう。

 

「あーもう、長かったわね。刀見てニヤつくのやめなさい。だらしない」


「いや、だってかっこいいんだもん」


 俺はその後もしばらく刀を見てはニヤつくを繰り返していた。

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