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「いちごミルク」

作者: 禍鏡 津弥

初めまして、禍鏡と書いて「カケイ」と申します。

普段はこの名前で、YoutubeにてVtuberをしております。


今作品は、配信で「1時間半で短編小説を書く」という罰ゲームによって執筆した作品となります。


私自身執筆経験は浅く、時間制限という点もあり拙い形となっていますがご容赦くださいませ。

楽しんでいただけたなら幸いです。

感想等お待ちしております。

 私の友人であるミサが、学校帰りにカフェへ行こうと言い出した。

正直あまり乗り気ではなかった。けれど、まじめな話だからどうしてもと、その場は押し切られてしまった。しかし、渋々承諾したが、この判断は結果として軽率であった……

 ミサが行きたがっていたカフェは、駅前にあるメイン通りに構えた少し洒落たカフェだ。とても人気だが込み合うことがないといった印象を憶えるだろう。

学生である私たちにとっては、テスト終わりのような、少し奮発する時に行くようなお店だ。

――そして私にとっては苦い思い出のあるお店でもある。


 店に入ると見知った顔が出迎えをする。

なんとなくお辞儀をして案内されたテーブル席で、まず私はメニューを開いた。すると友人は珍しい、と言葉をこぼした。


「アオイは今日は、いつものにしないの?」


そう尋ねられて私は、少し考えてから


「今日はちょっと違うのに挑戦してみたい気分なの」


と答えた。しかし、普段メニューを見ない私にとっては選ぶのが少し難しかった。結局私は無難に紅茶とマフィンのセットを頼むことにした。

 まもなく、いつもの店員さんが来た。頼んだアールグレイの匂いがふわりと香る。私か香りを楽しんでいるとミサが私に尋ねてくる。


「アオイさ、コウくんとなんかあったでしょ」


ピシャリ。ミサは濁すことなく私にそう言い放つ。

 コウとは、私の彼氏の名前だ。……いや、だったと言うべきだろう。数日前にフラれたばかりだ。その時はショックだったが、表には出さないようにしていた。

ミサにはいずれバレるだろうとは考えていたが、まさかこんなにも早くバレるとは思わなかった。ミサに、なぜそう思ったのかを訪ねると

「アオイって、元気がなくてもごまかす時だけ、いつもより元気になるからわかりやすいの」

と返された。自分ではいつもくらいの元気な返事をしていたと思っていただけに、その事実は少しショックだった。

観念して私はフラれた、とだけ口にした。


 改めて口にして実感した私は思わず机に顔を突っ伏した。それからポツリ、ポツリと事の経緯を話した。ミサは何も言わず隣の席に座りなおし、ただ私の頭をなでてくれた。

 やがて、私が話を切るとミサはこう尋ねてきた。


「それで、別れた原因ってなんだったの?」


「それは――――」


答えようとして、言葉に詰まった。口にするのに抵抗があったわけではなかった。ただ――思い出せなかった。

何故? どうして? 私はフラれた理由を忘れてしまえるほど、コウを好いてはいなかったのだろうか?

 焦る私をミサは心配そうに無狸はしないで、と背中撫でて、落ち着かせようとしてくれる。

すると、ふと座っている私の横に人の気配がした。顔を上げてみてみると、そばにいつもの店員さんがいた。

どうやら普段と違い、落ち込んでいるように見えたからと、心配してきてくれたらしい。


「これ、サービスです。いつも頼んでましたよね?」


そう言って店員さんが差し出したのは、いつもこのお店で頼むいちごミルクだった。




 私はそのいちごミルクを見て、涙がこぼれだした。





「もっと大人っぽいイメージだったんだけど、ね。がっかりだ」


コウの声が頭の中で反復する。こぼれた涙に動揺するミサや店員さんの事も気にかけず、私は止まらない涙をシワだらけのの袖で拭い続ける。

いちごミルクが好きで、とても泣き虫な私だからフラれてしまったんだと、そう自覚したのだ。涙を堪えることはもう、できそうにない。


 苦い思い出の、そのいちごミルクはしかし苦み故か、一層甘く感じた。


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