ライト草、ときどき魔物。
ばばあさんに見せてもらったライト草を思い出しながら、探し始めることしばらく。とりあえず依頼10本のうち、7本が集まった。
「そろそろこの辺りは全部見たかなー、まだいくらか小さいのがあるにはあるが、これはまだ採り頃ではないな。となると、う~ん…もう少し奥の方、森に近づくしかないかね」
デライト平原の奥には、逢魔の森が広がっている。魔物の数が多いため、依然として開拓が進まず、手つかずの原生林が残っているのだ。貴重な資源が多くあるため、ゆくゆくは探索の対象としたいところだが、今のぼくちんだとすぐに魔物のエサになるから無理。モグモグされちゃう。
「まぁでも、今のところ魔物の気配は感じないしな(キリッ)、多少近づいても平気であろう、フハハ」
もちろん気配探知系のスキルなどは持っていない。野生の感というやつだ。どや
警戒しながら進むこと20分、平原と森の境の到着。森に近づくと、空気が変わるのが分かる。重いというか、肌がひりつくというか。なんの生き物だか分からないが、ギャアギャアと遠くで鳴いているのも聞こえる。こわ。
「うーむ、ここが話に聞く逢魔の森かぁ、やっぱりまだ俺には早そうだなぁ。とりあえずさっさと残りを集めて退散しよう」
幸いこの辺には薬草採りの手もあまり入っていないようで、少し探すとすぐに5本ほど見つかった。これで合計12本、余裕の依頼達成だな。
シャベルなどはもちろん無いので、草の根元を剣で掘り返す。こんな使い方してたら、クラリスさんに怒られそ。
そうして4本目を掘り返し、根に付いた土を落としている時、首から右耳にかけて悪寒を感じる。というか風を感じる。何なら直後にこぶし大の石が目の前の地面にドスっとした音とともに勢いよくぶつかるのが見える。
そう、何者かがしゃがんだ俺の背後から、頭目掛けて石を投げたのだ!結果的には狙いは外れ、右耳の真横を通過したわけで、悪寒を感じる(物理的に)だけで済んだのだが。
慌てて後ろを振り向くとそこには、小汚い子どもがいた。俺のことじゃないぞ?背丈は120センチほどで右手にこん棒、左手には石が握られている。
大きく違和感があるのは緑色した肌…ではなく顔だ。肌は人それぞれだからね。たしかに作りは人と似ているのに、どこか大きく違うのだ。んー、目かな?鼻かな?とにかく見るだけで、嫌悪感を抱かずにはいられない、ぶっさいくな顔をしている。服も腰巻一つで、薄汚れているしな、これが同族嫌悪というやつか…いや違わい!
だがここは紳士な俺、冷静を保ちながら声を掛ける。
「や、やぁ。君が噂のゴブリンというやつかい?今石を投げたのは驚いたからだろう?俺は君を害そうとは思っていない、その両手の武器も使うのは今じゃないと思うよ?」そうして左手を前に出し、握手を求めようとする。
「ゲキャキャキャキャ」
ゴブリンはニタニタしながら大きく振りかぶって、今度は(も?)明確な殺意を持って石を投げつけてくる。
とっさに剣で弾くことも考えたが、刃こぼれする事を嫌がり回避を選択。結果、左腕を掠る。
「あいたぁっ!!ぐぎぎ…貴様ぁ!!それが紳士な対応をした人にやることかぁ!せっかく何とか仲良くなって、テイムでもしてやろうかな?あ、ちょっとそれも新しくていいかな、なんて思ってたのに!!!」
「でもそれもナシだ!貴様は差し伸べられた手に唾を吐くどころか石を投げたのだ。許さん、許さんぞ。考えたら貴様のようなブサイク、お断りだ。俺は美男美女かゴリマッチョさんしか仲間にしねぇんだ!」
そして今、勇者と魔王の戦いが、火ぶたを切って落とされた!!!!!