プロローグ 初日
「遂にこの日が来たか・・・待ちくたびれたぜぇ」
そうやって、決意新たに鼻息荒くしている、俺の名前はロイ。年は今日で12歳になった、はずだ。住んでいるのはヴィカという街の隅の隅、スラムの一角にあるボロ小屋だ。今日一日を生き延びるのでさえ大変で、虫やネズミを食べたり、時には悪さもして必死に生きてきた。
スラムでは珍しくもない話だが、俺には両親がいない。兄弟も。小さい頃に捨てられたのだ。小さすぎて何も覚えてにゃいけど。覚えてないから悲しくもないし恨みもないが、生きていくのに人一倍苦労したから、会ったらぶっ飛ばすけどね。恨みはないけど。
だから誕生日が本当に今日なのか、俺には分からない。いや2年前まで分からなかった。誰にも教えてもらえなかったから。あぁ、名前はなんでか覚えてたんだけどね。
さて、ではなぜ今日が自分の誕生日だと分かったかと言うと、簡単なことだ。
この世界のほとんどの街にはあるという、ギルドという施設で2年前に調べてもらったからだ。俺が住むヴィカにもきちんとギルドはある。もちろん、スラムの中でなく中心街のほうにだがね。
「よーし、ギルドに行って念願の冒険者デビューと行きますか!」
この世界では12歳になると大人の仲間入りということで、働くことが可能となる。一般的には配達や皿洗いなどの手伝いというか、小遣い稼ぎから始める子供がほとんどだが、極稀に俺のようなそれだけでは生きていけない子、つまり他に道がないやつが冒険者になるのだ。というかそれ以外、雇ってもらえない。
実際、年齢を隠して11歳の頃に配達の仕事の面接に行ったのだが、出会い頭に臭いし汚いからダメとか言われた。は?まずは年確からだろがい。いや挨拶からか。顔は覚えたからな、してんちょーめ。
ま、とにもかくにも、今日でこのどん底人生とおさらばして、いーい人生を歩むんだ!まずはギルドにレッツラゴー!