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モチベーションのない人間は結局どんなに能力があってもイベントのない人生になる

「でな、その作者が事あるごとに連載を休んでな!」

酒の入ったグラスを片手にカウンター越しに迷惑そうな店主に元居た世界の娯楽を力説する男が一人。

高級な雰囲気のある酒場でよくわからない話をされ、グラスを布で拭きながら相槌を打つしかない店主が一人。このほかには誰もいない店内で迷惑な客の声だけが響く。


駆け出しの冒険者が多いこの町では明け方になれば人々はクエストをこなすための準備を始める。太陽が出れば一日が始まり、夕暮れとともにその日の成果で一喜一憂する。

苦汁をなめたものは明日の成功のために刀を研ぎ、報酬を得たものは仲間とともに勝利の安酒を飲む。そんな毎日を繰り返すものにとっての憧れる存在がいた。

その男は冒険者にとっての目標、すべてを手に入れた英雄。その力を認められ国家からは叙勲を受け、冒険者組合からは特別なポジションを用意された。

金、権力、人望。冒険者に欲するすべてを己の力だけで手に入れたその姿はまさに英雄と呼べるかもしれない。しかしだ。その男が今何をやっているかと思えば2、3日に一度はこうやって店に足を運んで明け方まで飲み散らかしていく。

普段は何をしているかと思えばうまいものを求めて街をめぐり、たまに街を出たかと思えば港街まで行ってうまい魚を買ってきたから酒のあてにしよう。うまい肉が取れたから酒のあてにしよう。

冒険者というのは確かに品行方正とは程遠い存在ではあるが、この男はあまりにひどい。日が沈んだと共に店に来て二日酔いだから強い酒をくれと言い出した。望み通り強い酒を出したら一気に飲み干して二日酔いが治ったから酒をくれと言い出した。もし息子がこのざまなら殴って目を覚ませと叫んだだろう。


もうそろそろ日が昇ろうという頃か。

揺らめくろうそくの灯りに照らされた高級な酒の入ったグラス。それを手に持った酔っ払いが叫んだ。

「だらら、ノブは特質系だって結論にら!」

店主は呂律が回っていない酔っ払いにそろそろだなと思い酒代を告げる。

中堅の冒険者の10日分くらいの収入に匹敵する金額。酔っ払いは懐から雑に金貨を取り出し足りるかと店主に聞いた。

それに対し店主は「足が出た分は次の足しにしとくよ」と返した。

店主は酔っ払いが帰ろうとするしぐさを見てすぐに店の重厚な扉を開けた。昔この男が店を出るときに蹴り開けて壊したことがあるのだ。その後から店主から扉を開けるようになった。

お気をつけてと店主。それに男がおうと答える。

外に目を向けると薄暗く朝の気配を漂わせていた。店主はその中に男を送り出した。ふらふらと歩く姿を見た後再び店に隠れた。

いつものやり取り。この男が店に通うようになってから長いこと続いている変わらないやり取り。

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