表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
119/146

119. 終演


 オベリスク中層、互いに力を使い切り動けずにいたリインとノエル。

 彼らの脳裏に浮かぶは先程アベルと激しい戦闘を繰り広げていたカルラの姿。

 

 彼らはずっとカルラが空けた天井の穴から戦いの様子を見ていた。

 

 「まったく、君といいカルラといい、今のセントラルクの男は無茶苦茶だな」

 

 「アンタがそれを言うか? どう見たって血筋だろうが」

 

 「ははっ、否定はしないよ。 ……しかし、最後のはものの見事な炎だったね。 光が強くて眩しいくらいだよ」

 

 「ちげえねえ。 ……なあご先祖様」

 

 「どうした?」

 

 「あの炎は、セントラルクの炎か?」

 

 「……ああ、あれこそまさしくセントラルクの炎。人々に希望を与える暖かな炎さ」

 

 「はっ、そうかい…… まったく敵わねえなアイツには」

 

 「君もいずれはそうなるよ。 私はそう願っている」

 

 「へっ、 ……ところでよぉ」

 

 「なんだい?」

 

 「さっきからこの建物揺れてるような気がすんだが気のせいか?」

 

 「……セントラルクの血筋もここまでか」

 

 「うおい!?」

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 

 世界の障気を浄化して間もなく。

 

 何か巨大なものが動き出すかのようなとてつもない轟音が俺の耳に鳴り響いた。

 

 その正体がなんなのか、俺のすぐ側にそびえ立つオベリスクに視線を向けると外壁やら何やらが崩れ落ちはじめていた。

 

 すなわち、オベリスクの崩壊。

 

 

 「まずい!」

 

 

 危機を察した俺は頂上に仲間達を置いていることを思い出し全速力で翔た。

 

 到着してみるとどうやら大精霊達が地上まで運んでくれるようで、ビスタ達は抱えてもらったり上に跨がったりして出発の準備を完了させていた。

 

 それならと動きだそうとしたそのとき、何かを思い出したエミリアが大きな声を出す。

 

 

 「あ!」

 

 「どうしました?」

 

 「リインと、それにマガンタさんも下に置いてきたまんまだよ!」

 

 「大丈夫、マガンタなら先に脱出しているはずです。 ……というか、え? リイン?」

 

 エミリアの口から出てきた人物の名に少し驚く。そういえば、リインとノエルが二人仲良くいちゃついてたような……

 

 「下の階でセルハナに邪魔されたときに助けてくれたんだよっ! 迎えに行かなきゃ!」

 

 「でももう時間が…… とりあえず皆は先に降りておいて下さい! 私が行きますから!」

 

 

 俺は皆を急かして下の階に繋がる大穴に飛び込む。

 

 するとやはりリインともう一人ノエルの姿があって、リインは慌てふためきノエルはコロコロと猫のように面白おかしく笑っていた。

 

 戦闘を行っているようには見えない非常に奇妙な状況。

 

 俺は着地しておそるおそる声をかけた。

 

 

 「あの、大丈夫ですかリイン……」

 

 「ああ!? 見てわかんだろ大丈夫なわけねえだろうが! テメエ飛べんだろさっさと連れてけ!」

 

 なんともまあ粗野な頼み方。いや、もはや命令と言った方が正しいかもしれない。

 

 同じ事をノエルも思ったのだろう。ヤレヤレと首を振っては溜め息をついた。

 

 「おいおいリイン、それが人にものを頼む態度なのかい? 悪いなカルラ、彼は放っておいていいからこのノエルだけは丁重にもてなせ」

 

 「テメエも大概だろッ!」

 

 なぜこんな急いでいる状況で夫婦漫才もどきを見せられないといけないのか。

 ツッコミどころはたくさんあるが、一々言及するのは疲れるので必要なことだけ質問する。

 

 「えっと、確認しておきたいんですけどノエル様は敵ですよね……?」

 

 「もちろん、さっきまでアベルの支配下にあったよ。

 けどもう大丈夫。 彼の死と共に呪縛から解放されたようだ」

 

 「術が解けたならそん平気ではいられないんじゃあ……?」

 

 「テメエはごちゃごちゃうっせーんだよ! 燃やすぞコラ!」

 

 「もやすぞこらー」

 

 「……」

 

 ああだめだ。

 

 こいつら息ピッタリすぎて手に負えない。

 

 とりあえずは大人しく二人とも抱えて降りよう……


 

  

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 

 

 「すごい…… あのオベリスクがみるみる崩れ落ちていくよ……」


 

 

 戦いの衝撃が大きすぎたためか、はたまた神という主人を失ったためか。

 

 オベリスクは壮大な土煙を巻き上げながら崩壊していく。

 

 俺達は少し離れた上空からその様子を眺めていた。

 

 その衝撃は凄まじく、まるで一つの災害かのような錯覚を覚える。

 

 リデリアの被害が気になるところだが、吽壌邏が街を取り囲むようにとぐろを巻いているのでその心配は無さそうだ。

 

 

 「そういえば、ラウディアラの遺体と魂はどうなったんですか?」

 

 思い出して精霊達に質問する。

 

 答えたのは晒葉渧位。

 

 「遺体は脱出の直前我が回収した。油断していると呪詛を撒き散らすから早く封印し直さなければな」

 

 彼の腕にはラウディアラの遺体が抱えられていた。

 

 

 

 その後俺達はポロンロに乗せてもらってセントラルクの街に戻り皆の安否を確認した。

 

 幸いセントラルクからは負傷者はいても死者が出ることはなかった。

 

 多分それは非常に幸運なことだと思う。

 

 街に返る際地上の様子を確認したがその戦火は相当に酷いものだった。

 

 フォルガーナ全土を巻き込んだ今回の事件。いったいどれだけの犠牲が生じたというのか。

 

 正確な情報はまだ明らかにならないが、明日明後日にでも今回の事件の被害が新聞で報じられることだろう。

ご覧頂きありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ