画策
白鷺の城は、今日も美しく月に照らされ静かに佇んでいた。よく手入れされた庭は、華やかさは無いものの、手入れしている者の心のうちが見えるようであった。この城を譲り受けた事で、尊治が他の兄弟よりも帝から寵愛を受けているのは明らかだった。側室の子供が次の帝になる事は普通は有り得ない。だがこの待遇を見た民は、絶対は無いのかもしれないと実しやかに囁いていた。
「ふん……汚れた血が流れる者が、この城の城主などなんとおぞましい」
城の場外から、数人の手練れを引き連れた相良の姿があった。だがその姿は相良と判別するにはいささか難しい。彼自身法力の力は強くなかった。だが、爆発的な力こそ無いものの、特異なその力の存在を一族のだれも把握していなかった。それは相良の神谷や先の帝に無い力であった。秘密主義の彼は、ほんのひと握りの者にしか情報を与えず相手の情報を抜き出し、自分自身でしか行動しなかった。このため、相良の近くにいる者でさえ彼が何を考えているのかわからなかった。
誰も信用しない。
それが、神谷と彼の徹底的な違いであった。
「若様、如何様に」
低く聞き取りずらい声が、相良に話しかけた。
「私のする事をお前たちが知る必要はない。私をあの、カラスの子供に引き合わせるのだ。事が済めば私を迎えに来い」
前置きなく渡された仕事であったが、手練れ達はしばしお待ちをと答え、闇へと消えた。
美しく城を照らしていた月は、今はもう灰色の雲の中に隠れ、城もまたひっそりと息を潜めているようだった。
「神谷……あの女を失ったお前と私がやりあうのは定石だよ」
お面のような顔からは感情は読み取れず、薄気味悪く半円を描くばかりだ。
「お前か、尊治、私の中で誰があの駒を得るか見ものだな」
生温い風が辺りを漂い、これから起こる不吉な物事を案じているようであった。




